第4話 学歴うんぬん
図書館で働いていたある日のこと。
私は見事に当たりを引いてしまった。
図書館のカウンターではコピーをしたい利用者への案内をしている。
そこで問題になるのが著作権だ!
私自身、勉強はしたけれど実際に著作権でどうこうという問題にぶつかることなく過ごしてきた。図書館で働くまでは、、、
コピーをするという行為は著作権というルールが生じる。
何のためにコピーするのか。本のどこをコピーするのか。何枚コピーするのか。
とても細かいのだ。
普段、コンビニでピーってコピーしてハイ終わり!
という感じで過ごしていると著作権というものに気付かない。
公立の図書館ではより著作権に厳しい。
厳しいも何も法律なので日本どこでも変わらないはずだが、グレーの部分というのが存在する。
私の働いていた図書館ではグレーが許されないので白黒はっきりしていた。
そこで、出てくるのが
「何で出来ないんだよぉぉ!ばかやろうぉぉ!」
というクレームだ。
その日私は見事に大きい当たりを引いて、怒鳴られ続けた。
大人になるまで、親にも先生にもここまで怒鳴られた経験はない。
初めての大声クレーマーに遭遇した。
「著作権があるので、この本全部はコピーできないんです。」
「何でだよぉぉ!」
「著作権の範囲内でしたらコピーできますが。」
「俺は全部コピーしたいんだよぉぉ!」
「お客様、それはですね。ここにも書いてある通り法律でして」
「うるさい。ばかやろぉぉ!館長だせ。お前じゃ話にならん。」
という会話をだいぶだいぶ長く繰り返した。
法律は変えられないので私に言われても困るのだ。
その利用者は50代半ばの男性だった。スーツをピシッと着ていて一見、大声で怒鳴るような感じはないのに。人ってホントに分からない。
突然、自分の思う通りにいかないと大声で怒鳴り出す。
やめてくれぇぇぇ。心の中で私は思いながら懸命に説得した。
しかし状況は良くなるところか、その男性もだんだんに何に怒っているのか分からくなったのか、ただ大声を出していた。
きっと怒りだしてしまったからには引けなくなってしまったのだろう。
私たちは著作権について話し合っていたはずなのに。
そのうちに
「お前はバカだぁぁ!」
「お前大学どこ出たんだ?」「俺は○○大卒なんだぞ!」(某国立大)
「お前大学出てないんだろ!」
と、あらゆる方向へ話は飛んでいき。
何て理不尽なんだ。接客とは・・・
心が折れかけた時、先輩の男性職員がヘルプに来てくれた。
スーパーマンが現れたかのように私はありがたかった。
男性職員が対応しても結局、怒鳴り散らすのは終わらず。
電話で課長を呼び、特別室へとご案内した。
「俺たち大学行ったけどねー。それが何だって言うの。」
休憩室に戻り、スーパーマンのように現れた先輩の優しさに救われた。
今、この時代にも「どこの大学だ」「大卒なのか」なんて言う人たちがまだいたのか!
はじめは私も、抑えていた怒りがふつふつとしていたが。
「ここのカウンターに来てストレス発散のように怒鳴っていく人がいるのよー」
「気にしなくていいからね。」
「おつかれ。」
「大変だったね。」
私を見かけると、一緒に働いている人たちがみんなそうやって声をかけてくれた。
その優しさで、私はまたカウンターへと戦いに行ける。笑
その日の終わりに課長がボソッとつぶやいた。
「あの人、俺は不動産会社の社長だとか言ってたけど。」
パソコン画面を見ながらボソリ。
「ホームページはあるけど、この住所存在しないね。」
例のその人が、図書館の要注意人物リストにのったことは言うまでもない。
終。
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