第3話 本の虫

字が読めない頃から本を持ち歩いていたと母は言った。


記憶にあるのは幼稚園の時だ。毎月2冊の絵本じゃたりなくて、追加で買ってもらっていた記憶がある。


「本には(お金を)惜しむな。」

これは私の母の名言だ。


子どもの時から、今に至るまで、

ありがたいことに時間さえあれば本を読んで生きてきた。


出かける時には必ずカバンに本が入っていて友達に驚かれたこともある。


ちなみに、カブトムシおじさんである父は全くと言っていいほど本は読まない。

1ページめくると眠くなるらしい・・。


そんな私は、月に6冊くらい読むときもある。小説、エッセイ、詩集、絵本、歴史小説、外国文学、ジャンルはいろいろ。



本が好きすぎて、私は突然、図書館司書の資格をとった。

勢いだ。


大学を出て、働きながら通信大学で勉強し、夏の休暇で1週間大阪のビジネスホテルに泊まり、一気に実習、テストを受けてとった。


今思うとよくエネルギーがあったと思う。

若いって素晴らしい。笑



そして、ダブルワークをしていた当時、こともあろうか突然思いたって図書館の求人に応募した。

大きい図書館だったので、ダメもとで受けてみたが。

自分でもびっくり、とんとん拍子に話が進み、面接に行くことになった。


よく考えるとトリプルワークになるぞ、私。大丈夫か?


緊張しながら面接が始まった。

「えーと、図書館司書の勉強をしたそうですが。」

私の履歴書を見ながら面接官が言った。


「たぶんイメージしている図書館の仕事とだいぶ違いますけどいいですか。」

それが最初の問いだった。


とっさに返事ができずにいると


「あっ、クレームとか対応できますか。」

続けての問い。


私は図書館のカウンターの仕事をするのかと思っていたのだが、違うのか。

何か勘違いしているのか。クレーム?


「役者もやってたんですね、演技が出来るなら大丈夫か。」

履歴書を見ながら、どんどんと面接官3人で話が進んでいる。


たしかに役者もやってきた。でも出来るのだろうか。

「はい。大丈夫だと思います・・・」自信は無かった。


図書館ってみんな静かに本を読んでいて、声を出すと怒られて。

ゆっくりと時間が動いているような、そんな図書館のイメージではないのか。



不安が残るまま面接は終わり、私は帰宅した。

そしてその日のうちに電話があった。


「採用です。」


嬉しい!のは嬉しい。

大好きな本に関わる仕事に一度はついてみたかったから。


これで、私のトリプルワークが決定した。頑張る私。


図書館でのクレームとは、さて。

謎は深まるが、まずは働くことにした。



「ふざけるなぁぁ!上を呼んで来い。お前じゃ話にならん!」


ここはどこですか。

初出勤から数日。


これか!クレーム対応の必要な図書館とは!


ははは。

詳しくはまた続く。



終。


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