第4話 喜んで
渥盛拓哉、大学生。今日は大学の講義が午前で授業は終わった。今日も一日何事もなく大学が終わる。俺は自分のバイクにまたがると住んでいるアパートにバイクを走らせ、帰った。
俺はバイクを降り、自分の部屋205号室へと向かう。自分の部屋205号室に着くと部屋着に着替えた。
「今日も疲れたぁー」
俺はベットに倒れ込む。
『何をしておる。寝るでないぞ。まだ居酒屋のバイトが残っているだろ』
俺の息子。基、俺の息子に寄生した宇宙人の銀が俺に言ってくる。
「分かってるよ」
『おぉ、そうだ。今、テレビで御津黄門やっておるからつけてくれ』
銀に言われ、俺はテレビをつけた。銀は俺の息子を大きくして、御津黄門を楽しんでいた。俺は疑心暗鬼になる。
「なぁ、ホントに見えてるのか?」
『当たり前であろう。見えていなければ、前の爆弾魔を倒せなかったぞ』
「まぁ、そうだけどさ」
俺は天井を見上げ、銀と話していた。
『世の中には、得てして不思議な事はあるのだ』
「何か宇宙人がそれ言うと説得力あるわ」
俺は銀の言葉に納得しているとスマホが鳴る。
「誰だ?」
俺には話す奴は適当にいるが友達はいない。どうもこの同級生とは俺は合わない。まぁ、大学でクラスの女子や後輩に告白し、フラれているからそれがトラウマになっている。
「あ、阿澄さんからメールだ」
【阿澄:もうすぐ仕事終わるんだけど、夜って暇?】
【拓哉:今日、夜は居酒屋でバイトです。だから、暇じゃないですよ】
と俺が送ったら、スマホの着信すぐ鳴った。俺はビビる。
「どこの居酒屋?」
「早すぎないっすか。駅前の〈喜んで〉っていう名前の居酒屋です」
「・・・解った」
その言葉で会話は切れた。何が分かったんだと俺は相手のいないでスマホにツッコむ。
それからうだうだしているとバイトの時間に近づいていた。
『そろそろ行くのか?』
銀が俺に聞いてきた。
「そうだな、もうそろそろ出ないとまずいな」
俺がそう言うと銀はテレビの電源を切り、小さくなって社会の窓に入っていった。
『そういえばさっきの阿澄殿の電話は何だったんだ?』
「えー、何か夜暇か?って言われて暇じゃないって言っただけ」
『馬鹿者、そこは暇と言っておくものだ』
銀は俺の態度に怒り出す。
「いやいや、俺バイトしないと生活困るんだよ。てか前から思ってたんだけど、何でお前は俺の人付き合いに厳しいんだ?」
『お前は人付き合いが非常に下手だ。私がこの星に来る前に地球人のハウツー本を読んでいたから、お前に人付き合いの何たるかをレクチャーしようと思ってな』
「はぁ、それでその本の名前は?」
『確か、チリドックと書いてあったか』
俺はその名前を聞き驚く。その雑誌は大体中高生が読むティーンズ雑誌だ。宇宙人の情報源がそこってどうなのよと俺は思った。
「あー、そうか。参考にさせてもらうよ」
俺は銀に適当に答え、バイトに行く準備をし、バイクでバイト先に向かった。
俺がバイトをしている所は駅外の長屋外の中にある居酒屋〈喜んで〉という名の店でバイトをしている。店は店主と女将さんの二人で切り盛りしている店だ。席数もカウンター席、テーブル席含めて16席ぐらいの小さな店。客層は仕事帰りのサラリーマン俺はここでバイトをしている。
俺は店に入ると店主と女将さんの二人が開店準備をしていた。
「お疲れ様です」
「おお、来たな。着替えてきな」
「準備手伝っておくれ」
俺は「はい」と返事を返すと店用のTシャツ着替え、前掛けをつけて二人の開店準備を手伝った。
俺は店の開店の為に暖簾をかけた。
午後6時。会社の帰宅時間になり、サラリーマンがぽつぽつと店に入ってくる。
「いらっしゃいませ」
俺は客を席に案内し、注文を取る。ビールジョッキを運び、料理を運ぶ、注文を取り、皿を片付けを繰り返していた。
「注文いいですか?」
「はい、喜んで」
俺は席に向かい、注文を取る。今日は忙しい。俺は一人で調理以外を頑張ってこなしていた。
ガラガラガラ
「いらっしゃいませ」
扉が開く音に俺は条件反射で声を出す。
「渥盛君」
俺はその言葉に声の主の方に振り向いた。そこにはスーツ姿でビシッと決めた阿澄が俺に手を振って立っていた。
「何で、阿澄さんが」
「仕事終わったから、来ちゃった」
「いや、来ちゃったって」
「どこに座ればいい?」
「こちらへどうぞ」
阿澄さんを開いているカウンター席に俺は通した。外見やり手のキャリアウーマンだから、周りのサラリーマンの眼の阿澄さんに集まる。
「何、頼もかっなー」
阿澄さんはメニューをざっと見た。俺は阿澄さんの注文を取るため近くで待機した。
「とりあえず、生と枝豆」
「はい、生一つと枝豆一つですね」
俺は復唱すると大将に注文票を渡す。その後、すぐに俺は阿澄さんの注文の品を席においた。
「あんまり飲み過ぎないで下さいよ」
「わかってるよー。おー、きたきた。とりあえず大将にカンパーイ」
阿澄さんは中ジョッキを一人乾杯の音頭を取った。大将もその音頭に乗って「あいよ」と返してくれた。大丈夫かなと思ったが俺の一抹の不安は的中する。
約三十分後
「課長、私にバッカし、仕事回して若くかわいい子にはデレデレしちゃって⤵ムカつく⤴」
阿澄さんは案の定酔っぱらっていた。
『阿澄殿はまた出来上がってしまったな』
銀がぼそりと俺に言った。やっぱりこうなった。
俺は今がピークで店内を競歩並みのスピードで業務をこなしていた。
「ちょっと、聞いてよ。渥盛君」
阿澄さんは食器を運んでいる俺の服を掴んで、絡んできた。
「ちょっと。今、俺、仕事中ですよ」
「私、仕事終わったしー」
いやいやいや、何その謎理論。俺は仕事がしたいんだけど。
「わ、解りました。この仕事が終わったら付き合いますから、ね。離して」
「ほんとに、ホントぉ。分かったーー」
阿澄さんはその言葉を聞くと手を放し一人で飲みだした。俺はほっとして実務に戻り、客の対応に追われた。
午後10時を過ぎた頃、店もようやく落ち着き俺はテーブルの片付けをしていた時だった。客数も阿澄さんと若い二人のサラリーマンだけだった。
カウンター席の方から声が聞こえた。
「綺麗なおねーさん、この後、暇?」
「一緒にもう一軒梯子しない?」
一人で飲んでいる阿澄さんに若いサラリーマン二人がほろ酔いで絡んでいた。
「え、何?私に言ってるの?」
「そうそう」
「えー、やだぁ」
阿澄さん駄々をこねる。
「えー、何でよ。俺たちが出すからよ」
若いサラリーマン二人は食い下がってくる。
「だって、子供と飲むなんておねーさん、嫌。楽しく無いもん」
「はぁ、舐めてんの、おばさん」
何かヤな雰囲気になった若いサラリーマン二人。雲行きが怪しくなってきた。
「すいません。お客さん、店内での荒事はちょっと」
大将もその現場を調理しながら見ていて、くぎを刺す。
「えー、なんだよ。こっちの話だろ。口出しすんなよ」
大将に睨みを利かすが効果がない模様。俺は流石にこれは不味いと思い中に割って入ろうとしたした瞬間。
「なら、勝負をしましょう。私とお酒の飲み比べてあなたたちが勝ったら付き合ってあげる。負けたら私の支払いよろしく~」
「お、いいの?それで、いいけどおねーさん俺、強いよ」
阿澄さんの提案に乗る若いサラリーマン二人。
「じゃあ、大将。この獺祭(だっさい) ってやつ2つで」
「ほんとにそれでいいのかい?拓、注文取ってやれ」
「よ、喜んで」
俺はいきなり始まった飲み比べの注文を取る。この獺祭(だっさい)は純米大吟醸50は冷酒で飲めば、キレのよさやまろやかな口当たりらしい。新鮮な味と繊細な香りのバランスがよく、さまざまな料理と合わせやすいって大将が言ってたけど、俺は飲んだことは無い。俺みたいな大学生は安い酒でいい。いいお酒はもっと働き出して
お金を稼ぎ飲みたい。まぁ、阿澄さんみたいな豪快な飲み方は出来ないけど。
大将はその酒を桝の中にグラスを入れなみなみに注いで、二つ用意して、阿澄さんがいるカウンター席に出した。
阿澄さん、大丈夫なのか?俺は不安になる。
「じゃぁ、始めるわよ、坊や」
「望むところだ、おばさん。吠え面かかせてやるからな」
サラリーマンの一人はやる気満々だ。
二人はグラスを掴み、飲み始めた。
数分後
「もう、駄目だ・・・」
サラリーマンの一人が音を上げて、その場で倒れ込む。その横では「これ、美味しい。大将もう一杯」と阿澄さんはのうのうとしていた。お互い一斉に飲み始め三杯目でサラリーマンはギブアップ。そりゃ、この前に中ジョッキ7杯飲んでるからなこのサラリーマン。よくやったよ。
しかし、どんだけ阿澄さんは笊なんだ。サラリーマンの倍は呑んでるんだすよ。あんた、飲みすぎだよ。
「もう、降参です。た、大将、お代ここに置いておくよ」
さっきまで粋がっていたサラリーマンの一人が阿澄さんの呑みにビビり、酔いつぶれた方を背負って、帰っていった。
『これは、お見事。いい飲みっぷり』
銀は阿澄さんに感心していた。
「ほんとだよ。もう止めた方がいいですよ、阿澄さん」
「いいじゃねか。飲みたいんだ飲ませてやりな、拓。なぁ、母さん」
「女の方で凄いわね」
大将も女将さんも阿澄さんの飲みっぷり感心していた。
その時だった。
「あっ」
阿澄さんの顔はみるみるうちに顔が青ざめていくのが俺にはわかった。
「不味いです。大将、バケツ下さい」
阿澄さんのこの顔前見て、散々な目に合ったことは新しい。
「もう、無理」
『おー、天晴だな』
銀はその光景に何故か絶賛の言葉を出していた。いや、天晴じゃねーよ。
阿澄さんの口は開き、ダムの決壊の様に今まで飲食したものが放水していた。
俺の用意したバケツは間に合わず座席周辺は前のごとく見るも無残な風景だった。
流石にその瞬間を見た俺を含め、大将、女将さんの顔はさっきまで笑顔とは違い、引いていた。
「お、おう、拓。席キレイにしてやんな」
「そ、そうね」
大将、女将さんは俺に言ってきた。俺はここのアルバイトこの言葉しか言い返せなかった。
「よ、喜んで」
俺は泣きながら、阿澄さんのモノを処理したのであった。
その後、結局のところ阿澄さんは閉店までその場で寝てしまっていた。阿澄さんのバスの最終もないとのことだったので大将が送ってやりなと言われた。俺は前と同じようにバイクに阿澄さんを乗せ、送ることにした。
「もう、無茶な飲み方辞めて下さいよ、阿澄さん」
「えー⤴。渥盛君のお願いなら聞いちゃう」
阿澄さんは抱き着く力を強める。俺の背中に当たる胸の感触が恥ずかしい。俺のサイドミラーに映っていた顔は少し赤くなっていた。
『何だ。照れておるのか、拓哉』
「違うよ」
銀が俺を揶揄う。
『この阿澄殿とお付き合いしたいなら、わしのチリドックで得た知識で手を貸してやるぞ』
「いいよ」
「誰と喋ってるの?」
俺と銀が喋っている所に入ってきた。やばい。
『この星もきれいですけどあなたも綺麗ですねと言っただけですよ』
銀が俺が言ったように返事を返した。
「もう、上手い事言っちゃって」
阿澄さんは俺のヘルメットの上からバシバシ嬉しそうに叩いてきた。
「い、痛いです、阿澄さん」
「飛ばすのよー。ゴーゴーゴー」
阿澄さんは酔っぱらっていてノリノリだ。
「法定速度で帰ります」
俺はバイクのグリップを握りしめると安全運転で夜空の星が輝く道をバイクで走るのであった。
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