第2話 世界最先端のVRMMORPG発売

 2030年。人類はついに完全なる仮想世界を実現した。



2030年5月3日。


現実世界から隔絶された仮想世界を実現するVRMMORPGゲーム、


「デイ・ブレイク・オンライン(Day Break Online)」が世界同時発売となった。




 見渡す限り広がる大草原。小高い丘の上から見下ろすと地平線の先までその緑が続いており、本当にゲームの世界なのかと疑いたくなる。



 所々に湖があり、定期感覚に風車が立っていて、一定時間が経つとクルクルと回る。


まるで本当に風が吹いていてそれに靡いているかのようだ。



このゲームに風というエフェクトはないはずだが、それを信じさせないほど、この現実と見分けがつかないほど精巧な世界観、グラフィックの細かさがある。



 しかもこの草原がゲームの中にあるエリアのごくごくわずか一部であるという事実もにわかには信じがたい。


一体どれだけのデータ量を使っているのだろうと思うが、想像すらつかない。



 広大な草原が広がるエリアの中には、いくつかの都市と多くの小さな村や町が存在し、ランドマークとしてどの村にも風車がよく立っている。


それはオランダをイメージしてこのエリア周辺が作られたからだそうだ。




 このゲームは、全6つの大陸とその間を流れる海で構成されている。


それぞれの大陸に複数の町や自然、ダンジョンや遺跡などが配置されていて、町や村の外に出るとそこはモンスターと魔物たちがウロウロとしている。




 その魔物たちを倒してレベルを上げるために、プレイヤーは冒険者としてこのゲームに入り、


拠点となる街で武器や防具、回復薬などのアイテムを揃えて、外に出て、魔物を倒し、レベルを上げることでどんどん強くなっていくのだ。




 それぞれの大陸を支配しているボスがおり、そいつを倒さなければ次の大陸へは進めない仕組みだ。



そのボスを倒すことでドロップアイテムとして、宝石が手に入る。それが次の大陸に入る通行証となるわけだ。




 それぞれの大陸はゲーム内で使われる魔法の5つの基本元素を象徴している。



1、風の大陸(ゲイル・アイランド)

2、水の大陸(アクア・アイランド)

3、雷の大陸(サンダー・アイランド)

4、土の大陸(アース・アイランド)

5、火の大陸(フレア・アイランド)


 この5つの大陸だ。



 最後の6つ目はこの5つの大陸を制覇したのちにやっと踏み込むことができる最後の土地。



 そこは「魔王」と呼ばれる、いわゆるラスボスが陣取る「闇の大陸(ダーク・アイランド)」だ。



 今までの大陸で出てきたモンスターとは桁違いの強さを誇り、攻略するのはゲーム熟練者でもなかなか難しいだろう、とゲーム開発会社が公式情報として出している。



1つ目の風の大陸から5つ目の火の大陸に進むにつれて、魔物の強さももちろんどんどん上がっていく。


その中で最強なのはもちろん火の大陸のボス。


その強さと同じくらいの魔物が、闇の大陸に住む魔物の最低レベルだとのことなのだ。



 開発責任者は宣伝でメディアに出た際、「このゲームは並のゲーマーが攻略するにもかなり頭を悩ませるギミックや謎解き要素を搭載し、


難易度も他に発売されているどのゲームよりも難しく設定してある」と明言しているので、本当にクリアできる人間が出るのかすら甚だ疑問だ。



 しかし、その心配をよそに、世界では熱狂的なゲームファンがこのゲームの発売を今か今かと待ち望み、ようやく発売の日を迎えることができたのだ。




 剣と魔法を駆使する戦闘が醍醐味のこのゲーム「デイ・ブレイク・オンライン」は、世界最先端の技術を駆使し、


現実から完全に隔離された空間にVRの仮想世界を実現させたことにより、世界中で快挙だと話題になっている。



 大物の政治家や各国の大統領も興味を示し、メディアでは毎日その話題で朝から夜まで報道されている。



 そんなこのゲームの開発最高責任者の名は、井ノ口拓人(いのくちたくと)。



日本が世界に誇るゲーム制作会社「GameBank(ゲームバンク)」の社長だ。



彼は口数が少なく、人とコミュニケーションを図るのが苦手だが、その発想力と行動力で仲間をかき集め、この功績を成し遂げたのだ。


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