デイ・ブレイク・オンライン 〜VRゲーム開発者の父が残した宝を手に入れるため、俺が一番にクリアする〜
@1336maeno
第0章 プロローグ
第1話 プロローグ
「じゃあ、ヒナタ。いくぞ。タイミングを合わせてあいつの腹に剣をぶち込むんだ」
「OK! 任せて」
俺はヒナタに合図をかけ、走り出す。同時にヒナタも走り出す。
目の前には自分たちよりも背の高いイノシシ型の怪物、グレートボア。
ボアの体の右上に体力ゲージが見える。全体の長さの半分を切り、オレンジ色になっている。
あと一発大技を決めれば倒せる数値だ。
走っていきながら、スキルを発動するべく、剣を構える。剣が光を放ち、キーンと音が鳴る。スキルが発動する準備が整った。
「ブオオオオオオ!」
グレートボアが顔を振り回し、攻撃態勢に入る。顔についている5メートルもあろうかという巨大な牙を当てに来た。
「カイト、くるよ!」
「おう!」
それをしゃがんで避け、合図をだす。
「今だ!」
俺の掛け声と共に、2人は同時に飛び上がる。
グレートボアの特徴として、攻撃の際、顔を大きく振るため、その後に隙ができる。
そのタイミングを見計らって、ド出っ腹に攻撃をお見舞いするというわけだ。
「うおおおおおおお!」
「はああああああ!」
隙だらけの腹に向けて、大きくジャンプし、剣を前に突き出して
これで攻撃力は通常の1.5倍となる。
グサッ‼︎ という音がし、2人の剣撃がグレートボアのお腹に直撃した。
「ブオオオオオオ……」
と力の抜けた雄叫びをあげ、ボアの体力ゲージが一気にゼロに向かって減る。
すると、オブジェクトの消滅エフェクトが起き、俺の目の前にメッセージ画面が表示された。
”
グレートボアの討伐完了
2,500クロン
1,296EXP獲得
”
クエスト完了だ。
「やった! 2,500クロンだよ! 大金だね! これなら回復薬が5つも買えるよ!」
「いやいや、これはそんな高くないよ。
武器や防具だって買わないといけないとすると、この程度のモンスターだと全然足りない。
ヒナタはまだまだゲームのことがわかってないなあ」
「しょうがないじゃん。私まだ人生で初めてゲームをやって2週間なんだよ。
君はもう10年以上やってる廃人なんでしょ?
私にそんなことわかるわけないじゃん。
女の子に優しくしないと嫌われるぞー?」
「うるさーい! 廃人って言うな!
ゲームを何よりも愛してるゲーム評論家って言って欲しいね。
俺が作ってるゲーム評価サイトは巷では結構有名で名が通ってるんだからな!
俺を敵に回すと、すぐにクエストで死ぬぞ?」
「わかってますよ、オタクさん。でも私、初心者のわりには覚え早いでしょ?
もう剣の立ち回りとか覚えてきたし!
これならランキングでも上位を狙えるんじゃない?」
確かにヒナタは初心者とは思えないほどの動きをしている。
これは現実世界でもテニスで全国大会に出るほどの運動神経があるから、それも影響しているんだろうか。
「最近うまくいってるから調子に乗るなよ?
このゲームは世界100カ国以上のプレイヤーが5万人も集結しているんだぞ?
レベルランキングで上位100位とかに入るためには日本で全国に出るくらいでは全然ダメで、世界トップと戦えないといけない。
それを2週間で越えられたら、たまったもんじゃないよ」
「へえ、でもカイトの今の順位は?」
「俺は49位だけど」
少し自慢げに笑いながら言った。
「うわ、自分の実力を自慢したいがために今の話したわね。どんだけやり込んでるのよ」
呆れ顔でヒナタがため息混じりに返す。
「毎日20時間はやってるかな。今夏休みだし」
えっへん、と胸を張りながら、言う。
ここまで言ったところで、ヒナタが明らかに引き始めているので、このくらいにしておこう。
「にしても、本当にすごいゲームだよね。ここが仮想世界だなんて信じられない」
日本ではこんな土地存在しないだろう、と思えるほど見渡す限りに続く草原を前に、
ヒナタが吹くはずのない風を全身に受けているかのように目を閉じてつぶやく。
周りを眺めていると、いろんな動物の姿を模したモンスターたちが歩いており、たまに他のプレイヤーに剣で倒され、時間がたつとリポップしている姿が見える。
「ああ。そうだな。
ゲームの技術がここまで進化するなんて、10年前は想像もしていなかったよ。
まさに人類の夢を叶えたと言える。
これを作った父さんは本当にすごいよ」
草の一つ一つまで現実と見分けがつかないほど緻密に作り上げられたこの偽物の世界を目にし、
一体どれだけのデータ量を注ぎ込んでいるのだろうか、と想像しながら、
カイトもヒナタと同じように、手を大きく広げて風を感じるかの如く、目を閉じて答えた。
「うん、感謝しないとね。天国から喜んで見てるといいね」
風を感じて満足したヒナタは、目を開けてカイトの方を見て続ける。
「ああ。そうだな」
カイトも今は亡き父がゲームを作ろうとパソコンに向かっている様子を想像しながら、しみじみと答えた。
そう言って、俺はヒナタと手を繋ぎ、拠点の街へ帰っていった。
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