中編
その日は変な天気でした。
降っては乾き、乾いては降るといった天気で生徒たちが帰る時間にはたまたま雨が降っていました。
待ちきれず、せっかちな生徒たちが玄関から飛び出してゆきます。
わたしはドキドキしながらその光景を見ていました。天気のせいか、不安がわたしの胸を過ります。
時々、他人の傘を持って行ってしまう人がいるからです。人権ならぬ傘権を無視して。
幸い、わたしの体は赤色で、盗人はだいたい男でしたから、大丈夫だと思い込んでいました。
ところが。
「ちょっと借りるぜ」
傘立てからわたしはあっさり引き抜かれてしまったのです。
驚いて、助けを求めることも抵抗することもできませんでした。
盗人は乱暴にわたしの足を開き、わたしを校外へ連れ去りました。
わたしは〝死〟を覚悟しました。殺人犯が凶器を川に捨てるようにわたしもまた、雨が上がればどこかへ捨てられてしまうに違いありません。しかし。
「あっ!」
わたしは気づきました。柄を持つその人物を知っていたのです。
わたしは戸惑いました。
なぜなら彼こそが、彼女の片思いの相手だったからです。
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