第5話 待ち合わせ
まるで白昼夢を見ている気分だった。
今日は日曜日。彼女のいるキャバクラはお休みだ。だけどこれから彼女と会うことになっている。
なぜこうなった?
僕も不思議で仕方がない。
それは2回目のキャバクラでの出来事だった。
彼女は僕の事を覚えていてくれた。そして、指名したことと僕が会いに来てくれたことをとても喜んでくれた。いろいろ話せた。趣味の事、料理の事、仕事の事、ワンセットだけでは語りきれずに延長を2回した。もちろんその間、彼女は勝手にドリンクを頼んで飲んでいた。そんな中、なんの前触れもなく彼女に唐突に言われた。
「今度、ご飯に連れて行って!!あたしはどっちかというと、魚より肉のほうが好き。だから肉系の居酒屋がいい!!」
行こうとも誘ってないし、行くとも答えてないのに半ば強引にお店に行くことになったのである。しかも居酒屋指定。平日の彼女が働いているときに同伴のお誘いなのかな。僕もついに同伴に誘われるような大人になれたのかなと思っていたら彼女は違った。
「平日はあたしが仕事しててゆっくりご飯を食べれないから、うちのお店が休みの時がいい。あたしは日曜しか休みがないけど、たしか俺君も日曜休みだったよね?どこで食べる?」
さすがに聞き返した。
「キャバクラで働いたことはないけど、そこそこいろいろなキャバクラには行って遊んでいるほうだと思う。その中で、2回以上行ったことのあるお店もあったし、場内指名をしてたこともあった。だけど、2回目で急にご飯に連れて行けって言われることはなかったし、ましてやお店が休みの日に会おうなんて言われたことはなかった。
更にいうなら漫画で見た知識だけど、休みの日に外でお客さんと会うことはいけないことじゃないの?」
と、彼女に説明してみた。
そうしたら彼女は平然と答えた。
「あたしと行くのは嫌なの??」
「行きます。行きたいです。日曜日の予定は全部は全部空けておきます。」
「そう!!楽しみ!!お店選びは任して!!あんまり高くないところがいいんだよね。サクッと行きたいし。休みだし家から近いほうがさらにいいから。ここなんかどう?」
と、もうすでに行きたいお店のピックアップが始まっていた。
僕はもう唖然とするばかり。自由奔放といかなんというか、気ままな感じがすごいなぁと。
そのあと酔いが回ってきたのでお店を後にしました。
そして今に至るわけです。
待ち合わせの時刻よりちょっと前についた。そわそわする。まさか彼女のほうから誘われるとは思ってもないことだし、さらに彼女の休みの日に外で会ってご飯に行くなんて。なんだろう。これはなんと表現すればいいんだろう。今日はちゃんと会って話せるだろうか。
僕の胸のどきどきとセミのけたたましい鳴き声が頭の中で混ざり合ってかなり騒騒しい。夏だからなにも考えるなと僕に向かってセミが言っている気がする。
彼女が遠くから手を振っている。
いったん、僕はセミの言うことを信じてみようと思う。
なにも考えず彼女のところに向かう。
夕陽を背にまぶしく輝く彼女のもとへ。
夏の本番はこれからだ。
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