第五話 不審な目覚め
あの瞬間からどれほど時間がたっただろうか、一瞬だっただろうか、それとも永遠とも言えるほど長い時間が経過しただろうか、もっとも、この空間には時間なんて概念はないのだろう、ただただ無が広がる。
これが死という事なのだろう。
声も出ない、そもそも体の実体が無いのだ。思考ができるのみで、それ以外は何もできない、脳みそが宇宙を浮遊しているようなものだ。次第に記憶も消えていく。
そうやっていると、その裸のままの脳みそに誰かが語り掛けてくる。正確には情報を直接脳に書き込まれていくような感覚だった。気味が悪かった。
『
一真、一真、あぁ、俺の名前か、今の今まで忘れていた。
『チャンスをやろうか?』
チャンス?なんだ、そんなものがあるのか、まさか、こうやって転生というものをしていくのだろうか。てことは、今語り掛けてきているのは神様というやつなのだろう。
『返事が無いなぁー、え、要らないって事?』
おいおい、返事をしないんじゃなくて、出来ないんだよ。
『ん?あ、そうだ、話せないんだそのままじゃ!』
神様は、そう言うと、俺に触れてきた、先ほどまで実体が無かった身体が急に認識できるようになる、まるで、最初からあったかのように。
『おぉ。いい感じに戻った!』
視覚が完全に復活した目で語り掛けてくる神様をやっと確認する。
神様は、見た目は小学生ほど若く顔がとても整っている、美少年というやつか、背丈は小さく、130cmぐらいしか無さそうだ、しかし、その小さい体にはあまりに大きい着物のような服を着ている。
『おい、お前、今俺の容姿を見るや否や、ガキっぽいとか思ったろ!』
「いや、別にそこまでは思ってないすけど」
『別に、容姿なんて、俺にかかればどんなにだってなれるんだぜ、ただこの姿の方が楽だし、可愛い女の子に人気なんだよねー』
「そうなんですか、確かに少し可愛いかも」
『おいおい、やめろよ、男に興味ねぇんだよ』
神様はうぇー、という顔をすると、途端に姿が変わった、先ほどまでの子供っぽさはすっかり無くなる、童顔でかわいらしかった顔立ちは、すっかり大人びて、また違ったイケメンが現れた、身長も俺より大きくなる、190は軽く超えてそうだ、こうなると着物もぴったりになった。しかし、着物のから肩を抜き、腰元まで下ろし上半身は裸になる、胸元が開き色気すら感じるほどだ。
その光景に唖然していると、神様は少しかがんで覗き込んできた。
『おい、そんなぼーっとすんなよ、分かりやすいのなお前』
話しかけられて、我に返る。
『あのさ、落ち着いたならもっかい話すけど、チャンス欲しい?』
神様は、呆れた様子でそう話す。
そうだ、チャンス、でも具体的に何をするとは言っていない、リスクがでかい気がする。
「あ、あの、チャンスって何ですか」
『あー、知りたい?』
「知りたいです」
『現世、戻りたい?戻してあげよっかって提案なんだけど』
なに、そんな事が出来るのか。
天国にて君を待つ。 しのののめ @Rainn_
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