第二話 違和感 続
『単刀直入に言わせてもらうと、一真、お前は、癌だ』
なに、俺が、癌だと。
おかしい、そんなわけがない、爺ちゃんの口から告げられた言葉を受け止められない。きっと、聞き間違いだろう。
「爺さん、俺が、癌だって、冗談はやめてくれよ」
「一真、本当だ、嘘なんかじゃない、わしだって、信じたくはないさ、それに、追い詰めるようだが、そう、長くもない」
何を言っているんだ、そんな馬鹿な話があるだろうか。俺は、祭りの日まで、何ら不自由なく生きてきて。なにも身体におかしいとこもなく、健康に生きていたはずなんだ。
信じられないというか、信じたくないのだ、急に訪れた自分の不幸に。
気分が悪い、視界が淀む。
「なぁ、爺ちゃん、俺はもう助からないのか」
「もちろん全力は、尽くすが、可能性は低い」
そう言うと、爺ちゃんは、申し訳なさそうに、病室から出ていく、その背中は、まるで俺の今の心情を映し出すように悲しそうだった。
完全に、希望は打ち砕かれ、生きる希望を失う。
なんだ、ついてないな、結局こんなもんか、人生。
「一真さん、手術をすれば、まだ、助かるかもしれないって…」
助かるかもしれないだって、どうせ無理だ、助かるわけないんだ、俺の爺ちゃんは、優秀な医者だ、分かってる、本当に助かる可能性は低いんだ。あの爺ちゃんがあそこまで言ったんだ。
「紗季、悪い、少し一人にしてくれないか」
「うん、分かった、一真さんが来てほしい時に呼んでね、じゃ、ばいばい」
俺は、この日結婚して初めて、紗季と離れたいと思った。
紗季が悪いんじゃなく、本当に、誰ともいたくないと思った。
それから、紗季は、三日ほど病室に来なかった、そこからは自分でも数えるのを辞めた。そんな中でも、手術については話が進んでいた。
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