第二話 違和感 続
「ありがとう、紗季、心配させてしまったね」
俺は、らしくない程、弱弱しい声でそう言う。
紗季には、こんなに、何かに怯えていることは、本当は悟られたくないのに、きっと、声だけでなく、表情にも、出ていたのだろう、紗季は、直ぐに、抱き着いてきた、俺より10センチほど低い彼女は少し背伸びをしていて、足は頼りなくプルプル震えていたが、抱きしめている腕はいつもより力ずよく、安心した。
「一真さん、本当にらしくないです、どんな時だって、笑ってくれたじゃないですか、何があったか教えてください、楽しい楽しいお祭りはそれからです」
楽しい楽しいお祭りか。
今日は何かとついてない。
なんだか、疲れてきた、紗季に抱きしめられて心が安らいだのか。
体に、力が、入らない。ダメだ、
倒れる。
「紗季、ごめん……」
——―――――――——――――――――――——―――――――――――
10月3日
目が覚める。視界に入ったのは、見たこともない景色、知らない天井。次に匂い、知らない匂い。だんだん五感が正常に機能しだす。
「ここは……」
「あ!一真さん!やっと起きたー!」
最後に聴覚に、鋭い大きな声が響く、目が覚めてから初めての、知っているもの、知っている声、聴き慣れた声、大好きな声だ。
「紗季……」
「う”う”う”う”」
紗季は、俺が喋るやいなや、涙ぐみながら、横に座る。
そこで気付く。ここは、病院か。あの日、きっとあのまま倒れたのだろう。
ベットの横のカレンダーを見ると、1日と2日にバツ印が書いてある。
今日は3日、そんなに寝てしまったのか。
「ねぇ、一真さん、大丈夫?体どこか痛いとか、心臓とか」
「うん、大丈夫、なんで倒れたのかも分かんないくらい、元気だよ」
「良かった、それじゃあすぐ退院出来るかもね!」
ん?待て、何かおかしい、さっき、心臓ってなんで強調していったんだ、それじゃまるで、俺が心臓の病気でもあるみたいじゃないか。まさか、そんな訳無いだろう。
「なぁ、紗季、俺ってなんで倒れたとか、お医者さんに、言われてないのか?」
「ギクッ、そ、それはですねぇ~」
いつも、紗季は分かりやすく反応する。気遣ってくれているのだろう。
それがいいとこでもあるのだが。今回ばっかしは俺自身も知らないといけないことだ。強く聞こう
「紗季、教えてほしい、なんで俺は倒れたんだ」
『一真、そんなに、奥さんを責めるもんじゃないよ』
病室に一人の老人が入って来る。白髪で身長が低いが、背筋はしっかりと伸び、若々しく見えた、そんなこの老人は、ここの病院の医院長で、自分の祖父だ。
「爺さん、別に責めてたんじゃないよ、自分の容態が知りたくて」
「そう焦るな、起きたのなら、私が話そう」
爺ちゃんは、紗季と向かい合うように、ベット横に座った。
少し溜めてから話し始めた。空気が重くなった。
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