番外編 猫の日
「奏風先輩、おきてくださいにゃ〜」
「ん〜今、起きるから…」
日差しが差し込む部屋の中、俺はその声と共に起き上がる。
目が覚めると横にいたのはかのんで、何故か耳としっぽが生えていた。
……ん?耳としっぽが生えているだと…?
俺は見間違いではないのかと思い、目をかいてもう一度かのんの方を見た。
やっぱり、耳としっぽがある。
てか、今更ながらかのんはなんで俺の部屋にいるんだ?
「かのん、おはよう。いくつか聞くけど、一つ目はなんで俺の部屋にいるんだ?二つ目はその耳としっぽはどうなってるの?」
「奏風先輩忘れちゃったのかにゃ?私はここで飼われてるかのんにゃんよ!!耳としっぽは生まれつきにゃ〜」
「いやちょっと待って、全然頭が追いつかないんだけど」
かのんの顔をしてるのに、全くの別人だと?
そんな馬鹿なことが起きるのか!?
きっと夢に違いない、もう一度寝よう。
「ちょっと、それで話終わらせて寝ようとするなにゃ〜」
そう思って、もう一度寝る為に布団を掛けたらかのんが乗っかって来た。
俺は諦めて、かのんが何をしたいのか聞くことにした。
「分かったから、それで俺はどうすればいいんだ?」
「流石、奏風先輩にゃ!私とお散歩して欲しいにゃ」
「お散歩?どこに?」
「近くの公園に行きましょう」
「いいぞ。ちょっと準備するから待っててくれ」
「んにゃあ〜」
俺はベッドから立ち上がり、着替えの準備をした。
そして準備が出来たので、かのんを呼んだ。
「かのん準備出来たから行こうか」
「行くにゃ〜」
近くの公園までは歩いて十五分くらい歩く。
その公園にはスポーツが出来る広場があったり、遊具や釣りなんかも出来たりする。
「さて、まずは何しようか?」
「とりあえず、歩くにゃ」
俺とかのんは池の近くに移動して、その外周を歩き回ることにした。
「なぁ、ねこかのんの苦手なものって何?」
「お化け屋敷が嫌いにゃん。あんなのに襲われたら最後、食べられちゃうにゃ」
「いやいや、食べられることはないと思うぞ?」
「油断大敵にゃん!!」
まぁ、本当に食べられることはないと思うけど、油断大敵なところは少し同感できるな。
ていうか、このかのんもお化け屋敷苦手なのか…
俺の知っているかのんも、お化け屋敷が苦手なんだよな。
それで最初見栄張ってたけど、中に入ったら化けの皮が剥がれて泣き出しそうだったし。
それに比べて、ねこかのんは見栄を張るより素直な一面があるような気がする。
「それにしても、いい天気だな。偶には散歩して、体にお日様取り込むのも悪くない」
「奏風先輩が喜んでくれてよかったにゃん!提案した甲斐がありますにゃん」
「まぁ、俺はインドア派だから誘われなかったらあまり外には行かないしな」
「これからはちゃんと外に出る事をオススメするにゃん」
「気が向いたら、外に出掛けるようにするよ」
「それじゃダメにゃん!私が誘いに行きますにゃん」
「そうか」
そんな話をしていたら、あっという間に一周をしてしまった。
次は何しようかと端に寄り、話し合いをした。
「次は決めてますにゃん。釣りに行くぞにゃん」
「釣りね。ここの釣り堀は中位の魚が取れるから、どっちが大きいのが取れるか勝負だな」
「それはいい考えにゃん!」
目的が決まったので、少し小走りに釣り堀まで向かった。
「はい、これがかのんの釣り竿ね」
「ありがとうにゃん〜」
「で、釣りはあそこの池だから向かおう」
「にゃん!」
釣り堀に着いた俺たちは、横並びに座り二人同時に釣竿を振って釣り糸を池に投げ込んだ。
そして糸は絡むことなく、綺麗に池の中へと着水した。
「あとは、待つのみだな」
「ですにゃん。長そうで暇になりそうにゃん」
「まぁ、これも釣りの醍醐味だから仕方がないよ」
「奏風先輩がそう言うなら、待つことも容易くなったにゃん」
なんだか単純なやつだな〜 と思いながら、俺は自分の糸を揺らしながら大物が釣れるのを待った。
三十分が経過しても未だにヒットが来ない俺。
その横で小ぶりながらも、地道に魚をヒットしているかのん。
なんでこんなにも差が生まれてるんだと思った時、一つの結論が浮かんだ。
あー、今のかのんはねこだから、本能的に魚がいる所に投げ込んでいるのかと。
そんなくだらない事を考えていたら、ついに俺の方に糸を引っ張る感覚がきた。
「おっ、やっとヒットして来たぞ!って、なんだこの引き」
「私もお手伝いするにゃん!!」
「助かる!俺の腰を掴んで、後ろに引っ張ってくれ」
「分かったにゃん」
俺とかのんは息を合わせて後ろに下がりながら、糸を巻いていった。
段々と糸は俺の方に引き寄せられていき、あと一息の所でかのんが急にバランスを崩した。
「にゃぁぁぁん、奏風先輩すみませんにゃん」
「う、嘘だろー!!??」
そのまま俺は反動で池の中へと飛び込んでしまった。
「ん〜まさか、池に飛び込むとは思わなかった」
「なんの話をしているのですかー?」
あれ…?何かおかしくないか。
かのんの話し方が元に戻っているし、俺の体が濡れてる感覚もない。
そして俺はガバッと顔をあげて、周囲を見渡した。
「あれ?ここは…学校か。てか、俺さっきまで釣りしてたはずなのに」
「奏風先輩は寝ぼけているのですか〜?」
呆然としている俺の前に、手をヒラヒラして反応を確認してくるかのん。
それで気を取り直した俺は、かのんに先程まで何していたのか聞くことにした。
「なぁ、かのん。俺ってさっきまで何してたんだっけ?」
「え〜聞いてなかったのですか?猫の日に付ける猫耳としっぽの好みを聞いてたじゃないですか」
「あー、そうだったな。うん、この猫耳と尻尾のセットがとても似合っていると思うよ」
「分かりました!帰りに買って帰りますね」
俺は夢の中で見た、ねこかのんと同じ猫耳としっぽをかのんに提案した。
あれは夢だったのか分からないけど、一言いうなれ猫耳としっぽが付いたかのんはとても可愛かったと。
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