第31話 文化祭 No.5

「もう、お化け屋敷は一生行きたくありません!」


 三年の出し物であるお化け屋敷を出た後、空腹が限界に達したので食事処に向かっていた。

 向かっている間、かのんはずっと同じ事を呟いていた。


「かのんって、他に苦手な物とかあるの?」


「えっーと…お化け屋敷でしょ、ジェットコースターでしょ、あとはミラーハウス?とかですかね」


「要するに絶叫系とホラー系が苦手なのね。それより、ミラーハウスだけなんで疑問系なんだ?」


 それを聞いて、入る前の威勢の良さはどこから来たのかと思いながら、俺は一つだけ微妙な言い方をしていた事を聞いた。


「あれって、楽しい時は楽しいんですけど段々と目がおかしくなって勢いよくぶつかるんですよ」


「経験談か」


「そうです。私、小さい頃ゴールだと思って勢いよく走ったら、鏡に映ってた偽物でおでこを強打しました」


「それはかなり痛かったな」


「痛かったですよ〜ほんと、びっくり」


 かのんは当時の事を思い出し、おでこに手を押さえていた。

 その横で俺は微笑みながら、かのんが他の人とぶつからない様に気をつけた。



 目的地の食事処に着くと、先程よりお客の列が少なくなっていた。

 それと同時に、メニューには売り切れの文字がいくつかあった。


「まぁ、何となく予想はしてたけど売り切れすぎだろ」


「当たり前ですよ!いま、二時前なんですから」


「だよな。そうと決まれば、早めに決めないとだな」


「ですね」


 俺達は残されたメニューからすぐに決めて、中へと入っていった。

 

「奏風先輩はうどんですか〜私のカレーをあげたらカレーうどんになりますね」


「なるけど、わざわざ面倒くさい事しなくていいやろ」


「冗談ですよ〜それとも、ほんとに欲しかったですか?」


「いまは、カレーうどんの気分ではないな」


「仕方がないですねー」


 俺とかのんは楽しく昼食を取り、残り一時間を楽しむ事にした。


「最後行くとしたら、どこに回りたい?」


「点字体験ですかね?日常では体験できないので、興味ありますね」


「確かに日常でよく見るけど、どうやるのかは見た事ないな」


「決まりですね!」


 一日目最後の行く所を決め、すぐに一階の自習室に向かった。

 点字体験は外部の先生を呼び、教えてもらいながら出来た点字を先生に読んでもらえる体験だった。


「では、この点字器で紙を挟んで付属しているピンで押していきます。点字一覧表を見ながら、打ってみましょう」


 先生の説明を聞きながら、俺は点字器を使い文字を打っていった。


 点字は縦三点、横二点の六つの点の組み合わせからなる表音文字で、左上から下へ順に一の点、二の点、三の点、右上から下へ順に四の点、五の点、六の点と言うらしい。


「うぅ…難しい。また間違えてしまいました」


「俺も間違えた…難しいな」


「もう一回やり直しです!」


「最後まで俺もやり切るぞ」


 そう言って、俺は集中して点字と向き合う。

 一つ一つ丁寧に押していき、最後まで失敗せずに打てたのに安堵したものの、テストでは無理だなと思っていた。


 それからかのんも出来上がり、先生に提出したのだが、皆んなの前で読まれたのでとても恥ずかしかった。





 

「奏風先輩明日の文化祭も楽しみましょうね!」


「最高の文化祭の思い出を作ろうな!」


「はい!」


 一日目の文化祭が終わり、かのんと明日の約束をして帰宅した。

 家に帰り「いよいよ、明日か…」と呟き、緊張しながら翌日に向けて就寝した。

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