第24話 楠山杏奈の学校へ 前編
楠山さんの学校で文化祭が行われる当日、俺は駅前でかのんと待ち合わせをしていた。
昨日の夜に大雅から、行き方を教えてもらったのでそれに従って行くのみ。
だけど、楠山さんの学校が思ったより近くて驚いたな…
まあ、電車通学は大変だと思うけど乗り換えが一回なだけで辛さは変わるよな。
そんな事を考えながら、かのんの到着を待つ。
数分後———
「奏風せんぱい〜、遅れてすみません」
「俺もさっき着いたから大丈夫だよ」
「それなら…良かったです」
急いで走ってきたのであろう、かのんは息を切らしながらゆっくりと話している。
「かのん大丈夫か?ちょっと、休憩してから向かおうか」
「お気遣いありがとうございます。ちょっと寝坊してしまい、結構ギリギリで焦ってしまい」
「かのんが寝坊するなんて珍しいな」
かのんは普段時間に厳しい一面がある。
だけど、今日は楠山さんの文化祭だから楽しみすぎて寝れなかったのだろう。
「実は…楽しみすぎて、夜遅くまで起きてたので」
案の定、大正解だった。
それにしても、楽しみすぎて寝れないとか可愛いな。
「奏風先輩、何ニヤニヤしてるんですか?あっ!もしかして、幼稚だなと思ったんでしょ!!」
「そんな事は思ってないから。ただ、楠山さんも喜んでくれるかもな〜って考えてた」
と、考えながらかのんの事を見てたら頬を膨らませて〝ぷんぷん〟してきた。
俺は全力で誤魔化したけど、これが正解だったかは分からない。
「と、とりあえず、休憩は終わりました。早速杏奈ちゃんの学校に向かいましょう!」
「そうだな。待たせると悪いもんな」
俺とかのんは駅のホームへと向かっていった。
待ち合わせ場所から約三十分の所にある、楠山さんの学校に着いた。
そんな俺とかのんだが、未だに中には入っていない。理由としては大雅が中を案内してくれるらしいんだが…その大雅が未だに来ない。楠山さんは仕事があるから午前は無理らしい。
「遅いですね。大雅先輩」
「さっきから、連絡してるんだけどずっと不在着信になんだが。あいつほんとに案内する気あるのかよ」
「大雅先輩はマイペースぽそうなので、もう少し待ちましょうか。それに、私は奏風先輩と待ってる時間はご褒美みたいなものですし…」
かのんは照れながら、俺の方をチラチラしながら伝えてきた。
上目遣いの破壊力は最強すぎる…
「ごめんごめん。ちょっと、杏奈の所で話してたら遅れたわ」
そんな事を思っていると後ろから大雅が声を掛けてきた。
かのんの言う通り、大雅はマイペースに行動してたらしくヘラヘラしながら謝っている。
「案内するって言ったのは大雅なんだから、先に着てないとダメだろ?何分待ったと思ってるんだ?」
「えっ、五分だろ?それくらいは大目に見てくれよ〜」
「まぁ、今日だけだぞ。次はないと思え」
「なんか、奏風が俺の彼女みたいな言い方をしている」
「なに馬鹿な事を言ってるんだ?頭大丈夫か?」
「最近、奏風の俺に対する言い方が酷い気がする…」
それはそうだろう。だって、大雅の言葉を一つ一つ聞いているとボケ担当みたいな人になってるんだし。
と、思いながら首を縦に振っていると流石にかのんが待ちくたびれたみたく声を掛けてきた。
「あの〜、そろそろ案内してくれませんか?私、杏奈ちゃんに早く会いたいので」
「あっ、ごめん。じゃあ、二人ともこっちに来て」
それに気づいた大雅は俺との会話を切り上げて、楠山さんの元へと案内してくれた。
「ここが杏———」
「かのんちゃん!!来てくれてありがとう!」
「私も杏奈ちゃんに会いたかったよー!!」
大雅が楠山さんの場所に着いて話しかけようとした瞬間、楠山さんがかのんに話しかけてきた。
話に横入りされて大雅は何だか切ない表情になっていたが、俺は大雅の方を向かずにほんわかした二人の方を眺めていた。
「楠山さん、今日はいきなり文化祭に来てごめんね。でも、他校の文化祭を巡るのは好きだから今日は楽しませてもらうよ」
「ううん。こちらこそ、遊びに来てくれてありがとう!是非、私達の学校の文化祭を楽しんでいってね!私はまだ仕事があるから無理だけど、かのんちゃんも楽しんでいってね!」
「うん!ありがとう!!」
お互いに挨拶を終えると、楠山さんは大雅と話をして教室に戻って行った。
その後、大雅も一人で回ると言い出したので俺とかのんは二人で校内を回る事にした。
「それで、最初どこに回ろうか?」
「そうですね〜。少し待っててください」
かのんは入り口で貰ったパンフレットを広げた。
パンフレットには各クラスの出し物と、PTAによる食事があると書いてあった。
その中で最初に選んだのが
「奏風先輩、この『犯人を探せ』って出し物の場所に行きませんか?名前からして楽しそうなんですけど」
「確かに面白そうな出し物だな。よし、そのクラスに行こうか」
『犯人を探せ』名前の通り、教室で写真を見て校内に潜伏か逃走をしている犯人を見つけたら話しかけてスタンプを貰う仕様の出し物だ。
そして、かのんはこの内容を見て楽しそうだと思い一瞬で最初に回る候補が決まった。
そんなこんなで、さっきの大雅の様子をかのんに話していたら目的の三階の教室が見えてきた。
「そこのお似合いのカップルさ〜ん。私達のクラスの犯人探しなんてどうですかー?」
教室まで目と鼻の先の距離まで近づいた所、担当クラスの宣伝してる生徒に話しかけられた。
普通だったらカップルって言葉に反論もするし、「行きません」って伝えるんだが丁度向かっていた教室だったのでここは素直に「やります」とだけ伝えた。
因みに、カップルの言葉にかのんは目をキラキラしていたので、とりあえずスルーした。
「ではでは、二名様ご案内しま〜す。こちらで説明をしますので中へどうぞ」
係の人に促されて、俺とかのんは中へと入って行った。
中に入ると六枚の写真が貼ってあり、名前と懸賞金が書いてあった。
「では、説明させていただきます。まずこちらの写真の人達を見つけてもらいます。その後、話しかけてもらいます。そしたら、スタンプを貰い、六人中三人のスタンプをゲットできたらここへ戻ってきてください。そうすればクリアーになります」
説明を終えると、スタンプを押す為の用紙が配られた。
そして、用紙の裏には写真があり教室から出ても顔が分かるようになっていた。
「よし!それじゃあ、どの人から探していこうか?」
「私は、この吸血鬼みたいな格好をした人を探したいですね!」
「なるほど…コスプレして誰でも分かりやすくしているのか。それじゃあ、探そうか」
吸血鬼のコスプレした犯人を探して二階へと降りて行き、探す事にした。
その中で、まさか他の犯人を一気に二人も見つけることになるとは思わなかった。
「まさか、二人が一緒に行動していたとは」
「そうですね。あれじゃ、三人見つけるのも簡単になってしまいますね。まぁ、私としてはラッキーと思いましたけどね!」
「あはは…とりあえず、後一人だ。この調子でいけばすぐ見つかりそうだな」
「ですね!時間的にもお昼に近くなってきているので、早めに終わらせてお昼にしましょう!」
時間的にもお昼に近くなっていた。
俺とかのんは少しお腹空いていたので、探し終えたらお昼にする事にした。
「奏風先輩!!あそこ見てください!!」
かのんに言われるまま、指差された方を見ると例の人がいた。
そう、俺達が探していた吸血鬼のコスプレをした犯人だ。
「やっと見つけたな。吸血鬼の人見つけるのに時間が掛かりすぎたよ」
「あはは…まさか、ここまで見つからないとは思いませんでしたね。校内を何周したか…」
「さて、逃げられる前にスタンプを貰いに行こうか」
「ですね!もう逃しませんよ〜!!:
やっとの思いで見つけた吸血鬼の人に声を掛けた。
どうやら色んなところに行ったり、他クラスの教室に入ったりしてたらしい。
どうりで見つからない訳だわ…
「はい。これで三人のスタンプを見つけましたね。貴方達は優秀だな。その紙を持って、最初に戻ると良い。では、さらばだ」
そう言って、吸血鬼の人はまたどこかへと消えていった。
正確には、他の階に移動してたんだけどね。
「かのん、早速だがゴールしに行こうか」
「はい!行きましょう!」
そして、俺とかのんでスタート地点に戻り係の人に紙を提出した。
「お疲れ様です。では、確認させていただきますね。…………おめでとうございます。貴方達は見事犯人を探しだし、スタンプを得られました。こちらが景品になります」
そう言ってお菓子と認定証を貰い、入ってきたドアへと踵を返した。
そして、お昼を食べる為に食事を見に行く。
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