第17話 夏休みの宿題はいつもギリギリ

 海水浴に遊びに行ってから、二週間が経ちハ月中旬頃、俺は自室で机に面と向かっていた。

 何故かというと、夏休みの宿題がほとんど終わってないからだ。


 まぁ、ためてしまうのはいつもの事だから別に怖くもなんともないんだけど、今年の夏は去年までとは違い充実している。


 だけど、残りの半月で宿題を終わらせないといけないが、かのんとの約束——二人で出かける予定がまだ決まってないから、なるべく早く終わらせて楽しみたい気持ちがある。


 という事で、集中モードに入り手っ取り早く簡単な宿題から片付けていく…


 気がつくと、お昼を少し過ぎていた。


「九時くらいから始めたからざっと三時間は集中して進められたかな」


 十個あった課題も三時間で五個も消化できた。

 そして、集中していた時は携帯を切っていたので、起動させた。

 数秒待ち、メールのアイコンを見ると一件の通知が来ていた。


 かのんからである。


『奏風先輩、お久しぶりです!二週間連絡なくて寂しかったですか?まぁそれは置いといて、今から家行ってもいいですか?連絡遅いと家凸しますよ』


 確かに、この二週間はメールが一切来なかった。

 だからと言って、寂しいとかはない。

 そんな事よりもこのメールが来てるのが十一時過ぎ。

 今は、十二時を過ぎている。

 メールが来てから一時間経っているからら早急に返信をしないとかのんが家に来る。


『海水浴以来だな。それと、宿題に集中する為に携帯の電源切っていたから気づかなかった。まぁ、家に来るのは構わないが急には来るなよ』


 そう思い、かのんに返信をした。

 僅か数分でメールが返ってきた。


『じゃあ、今言いますね。家に着いたので、ドアを開けて欲しいです!』


 えっ?今ここにいるの!?

 一時間しか猶予くれないのか。

 仕方がなく、俺は玄関に向かいドアを開けた。


「こんにちは!今日も元気なかのんちゃんがやって来ました!」


「おう、元気だな。それで用事は?」


「久しぶりに会って、その素っ気ない態度はかのんは辛いですよ」


 かのんはそう言うと、俺に強めのパンチをしてきた。

 だけど、全然痛くなかった。


「俺が悪かった。とりあえず、暑いから中に入って話そうか」


「はい!」


 一旦謝り、中に入るように促した。

 そして、俺の部屋に案内した。


「奏風先輩の部屋に入るの久しぶりですね」


「前回は無理矢理二人に入られたんだけどね」


「そーいえば、菫お姉ちゃんは?」


「一週間前にいきなり仕事見つけたから、慣れるまでホテルで暮らしてくるって行ったっきり連絡ない」


「自由人ですね」


 二人で微笑しながら、持って来ていた紅茶を飲んだ。

 ほんとに菫姉はどこに行ったんだか。

 まぁ、基本自由人、気まぐれな人だからまたふらっと帰ってくるだろ。


「それで、ここに来た目的は?」


 改めて、かのんがここに来た理由を聞く事にした。


「目的は二つあります。一つは夏休みの宿題を手伝ってもらいたいな…って思いまして。もう一つはこのチラシを見てください!!」


 チラシを机に勢いよくドンと乗せて来た。

 だけど、最初の目的の方が気になるんだよな…

 とりあえず、置かれたチラシを見た。


 第五回 花火大会

 八月二十二日(土) 時間:十九時半〜二十時

 会場:特設会場


「花火大会か〜ここ数年見に行ってないな」


「では、一緒に行きましょう!」


「花火大会、楽しそうだし行くか」


 目を輝かせながら、顔を近づけて聞いてきた。

 俺は久しぶりの花火大会なので、拒否する事はなく二つ返事で承諾した。


「それじゃあ、花火大会行く為に夏休みの宿題を早く終わらせないとだな」


「うぅ…助けてください」


 かのんに笑顔で問い掛けると、涙目になりながら擦り寄ってきた。


 仕方がないので、俺は自分の課題をこなしながら、かのんの宿題を見てあげた。

 基本的に一年の課題は去年やってる範囲なので、覚えてる限りは教える事はできる。


 解答付きの物は、思い切って解答を見るのも一つの手だと教えると渋々見ていた。


 そんな風にこなしていると、あっという間に時間も経ち宿題も残り二つになっていた。

 残り二つはまぁ、すぐ終わるのでここで一旦終わりにして、かのんと予定を立てる事になった。


「花火大会の会場近くの駅に十九時に待ち合わせでどうでしょうか?」


「俺はいつでも大丈夫だから、それでいいよ」


「一つ大事な事を言い忘れてました」


 時間を承諾して、忘れないように手帳に予定を書いていると真剣な眼差しで俺を見てきた。


「当日は浴衣でお願いしますね!」


「浴衣ですか…はい」


 浴衣着るの苦手なんだよな…

 まぁ、かのんの為なら我慢して着るけど…どこにしまってあるかな。探さないと。


「私も着ますので、お揃いです!あと、これは私と奏風先輩だけの二人だけのお出かけなので、誰も呼ばないでください」


「わかったよ」


 また真剣な眼差しを向けつつ、俺の鼻にかのんの人差し指が乗せられる。


「では、今日はこれで失礼します。宿題もかなり進みましたし、予定も立てれたので今からワクワクです」


「夏休みがもうすぐ終わるから、楽しもうな」


「はい!」


 満面の笑みをして、かのんは家へと帰っていった。

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