第18話 花火大会①
八月二十二日 午後十八時五十分
俺は駅前にいる。
なぜなら、今日は花火大会の当日で、かのんと待ち合わせをしているからだ。
「それにしても、早く着きすぎたな」
かのんとの待ち合わせまで、あと十分もある。
早く着いたのには理由がある。
一つ目の理由が、浴衣である。
俺は普段は制服か私服。
去年の夏祭りだって、私服で行ってた。
だから、浴衣を着るのは何年振りっていう感じだし、歩くのに手こずると思ったから。
そして、今回の浴衣はレンタルだ。
あれから家の中を探したのだが見つからず、近場のレンタル出来る所を探して着付けてもらった。
二つ目が、男が女性より先に来るのは当たり前。
こーゆう所で、世の中の男たちはポイントを稼いでいるんだ。
っと、どっかのサイトに書いてあった。
まぁ、かのんは前から同じ事言ってたんだけどね。
てことで、時間まで携帯を見て時間を潰そうと思っていたら——
「奏風先輩早いですね〜!?私が先に来て遅れてきた人に罰ゲームで奢ってもらおうと思ってたのに」
かのんが後ろから声を掛けてきた。
「よく、後ろ姿だけで俺だって分かったな」
「奏風先輩の事なら、もうどこでも見つけられますよ!」
「逸れても心配ないな」
「私がちゃーんと見つけますから」
かのんは自信満々に胸を張って言ってきた。
「その時はよろしくな!それじゃあ、会場に向かおうか」
「はい!…!?!?」
その姿を見ながら、俺は少し微笑みながらかのんの手を握った。
握った瞬間、かのんの顔が驚きと照れで赤くなっていく。
「あ、あの奏風先輩…急にどうしたんですか…いつもならこんな事しないのに…」
「お祭りだし、いくら探せるからと言っても逸れたら探す時間が勿体ないだろ?だから、最初から手を繋いで行動しようと思ってな!今日だけの特別だからな」
かのんは照れながら話しているのに対して、俺は説明をして会場へ手を繋ぎながら向かった。
最初は、照れで顔が赤くなっていたかのんだったが、少しだけ落ち着いたらしく今は余裕が出てきたみたいだ。
まぁ、俺もいきなり手を握ったのは悪かったかなとは思っているけど、偶には男らしい所を見せないと考えてしまったからな…
そんな事を考えながら歩いていたら、段々と人混みが増えて屋台も見えてきた。
「あっ!屋台が見えてきましたよ!!」
「今からワクワクするな!ってちょっと引っ張るなよ」
屋台が見えてきた途端に、かのんは俺の手を引っ張り小走りした。
それに連れられて俺も小走りになり、あっという間に会場入り口まで着いた。
「奏風先輩は花火見ながら何を食べますか?」
「そうだな…」
俺は見える範囲で見渡して、一つ気になるお店を見つけた。
「おっ、あれなんてどうだ?えーっと、名前はシャーピンって言うらしい」
「何ですかそれは?確かに気になりますね」
二人して頭に疑問を持ちながら、シャーピンと言う看板があるお店に向かった。
「すみません〜。二枚欲しいんですが、このシャーピンって何ですか?」
俺が店の店主に枚数を言い、それとシャーピンという食べ物について聞いた。
「シャーピンとは、肉や野菜で作った餡を、生地で包んで焼いた中国発祥のおやきのような料理だよ。それじゃあ、二枚今焼くから少し待っててね」
店の店主は丁寧に説明をしてくれて、その後に二枚焼いてくれている。
「とても美味しそうですね!今から楽しみです!」
「俺も楽しみだ!」
俺とかのんは説明を聞いてから、涎が少し垂れるほど食べるのが楽しみになっていた。
焼いている段階で、目の前からいい匂いが漂ってきて生唾を飲み込むと同時にお腹が鳴る。
「奏風先輩いま、お腹鳴りましたね〜」
「なりました…とても恥ずかしい」
かのんにニヤニヤしながら言われて、俺はとても恥ずかしくなった。
「お二人さんお待ち!二枚で800円だよ」
「ありがとうございます!」
俺はシャーピンを受け取り、お金は丁度渡してその場を後にした。
「さて、これは今すぐに食べたいものですが、他にも買わないといけないものがあるのと時間がやばいのでどんどん行きましょう!」
「確かに時間がやばいな。あとは何を買う?」
時間を見るといつの間にか七時を少し過ぎていた。
まだ、三十分あるように見えるが席とか考えると十五分がタイムリミットだろう。
「焼きそば、チキンステーキ、わたあめ、りんご飴…全部行きましょう!」
「席とか考えると十五分が限界だが、頑張って回ろう!」
俺とかのんは目当ての食べ物達を求めて動きだした。
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