第15話 海水浴⑤
スイカ割りは俺がかのんと大雅は楠山さんとチームで行う事になった。
そして、俺と大雅は何故か目隠しを付けられていた。
「あの〜、何故俺たちは急に目隠しをされたのでしょうか?」
女子三人にその理由を聞く事にした。
「私達がやりたいのは山々なんですが、男同士の真剣勝負の方が面白そうじゃないですか!なので、私と杏奈ちゃんで先輩たちを指示します」
要するに、かのん達はやりたい気持ちはあるものの、無駄な動力を使うとこの後の遊びに支障が出ると思ったから指示する側に回ったのか。
「なるほど…理由は分かった。だけど、菫姉はやってもいいだろ!!」
「私?私はさ、帰りの運転する体力を残しておかないといけないからさ」
確かに、ここで疲れて帰れないってなったら困るな…
あれ?そもそも、菫姉は海で遊んでないよな?
「海で遊んでないから菫姉は体力有り余ってるんじゃないのか?」
そう聞くと菫姉は…
「ここにいるだけでも、体力は無くなるんだよ!私も泳いできていいかい?」
と言ってきた。
「いやいや、今からスイカ割りやるんだよ!!菫姉だって食べたそうな目をしてたじゃん」
「腹ごなしに運動したくて〜」
「いやいや、そんなの皆んな許すはずが…」
そう言いながら目隠しを一旦取って、他の三人の方に目をやった。
三人ではなくて二人だな、大雅は目隠しをしているから。
「私は奏風先輩がいるので大丈夫です!菫お姉ちゃんと楽しく食べたいので待ってます!!」
「私も平気です。こいつのお世話があるので」
「二人ともありがとう〜!」
かのんと楠山さんから許しが出たので、菫姉は小走りに海へと向かった。
てか、大雅の呼び方が段々と酷くなってる気がする。
頑張れ大雅…とそう思いながら、また目隠しを付け直した。
「それでは、先行は奏風先輩です!」
「えっ?あっ…おう!」
かのんの掛け声でいきなり始まった。
戸惑いながらも、何とか返事をした。
「奏風先輩は私の手を掴んでください。スタートの位置まで連れて行きますよ〜」
「わかった」
目隠しをしているので、いきなり手に触れられて驚いたがかのんの声が聞こえたのですぐに掴んだ。
「ここがスタート地点です!」
そう言われて、俺はその場で立ち止まる。
「それでは、かのんちゃん&奏風くんの挑戦です!」
楠山さんが改めて審判になり、本当の意味でスイカ割りが始まった。
「奏風先輩!!真っ直ぐです。あっ、右…今度は左!!!」
「えっ!?右なの?今度は左??どっちなんだ!!」
目隠しをしていて、方向感覚が失われているのでかのんの声を聞いても迷ってしまった。
「そこです!力強く叩きつけてください!!」
「了解!任せろ!!」
そして、スイカの位置についたらしく叩きつける合図をもらったので、俺は勢いよく叩きつけた。
だが、叩いた感触は無かった…
「あれ?スイカの感触がないぞ?」
「奏風先輩、惜しい!!下に振り下ろした瞬間に微妙にズレました」
「マジかー!これは辛いな」
真っ直ぐ叩きつけた気持ちだったのに、ほんの数ミリズレた事によりスイカに一つも傷を付けられなかった。
「よし!大雅、私達は勝つぞ!」
「杏奈の指示に期待だな」
「任せなさい!」
俺が少しだけ落ち込んでいる間に、次のターンにくる大雅たちが決起を挙げていた。
「それでは、杏奈ちゃん達どうぞ」
かのんの合図で二人は動き出しが、なんか声に覇気があまりない気がした。
「大雅!右だー。そのまま真っ直ぐ!!ちがーう、左だよ!!そのまま真っ直ぐ!そこだーいけー!」
楠山さん、なんだかキャラ変わってないか…?
いや、俺の気のせいかな。それより、大雅のやつスゲーなスイカのど真ん中を叩いているぜ。
「きゃー!!大雅かっこいいよー!!」
「杏奈の指示が良かったんだよ」
うわー、なんかイチャイチャしてきたし。
二人を見ていたら、かのんが腕にツンツンしてきた。
「奏風先輩…私、悔しいです。なので、とりあえず抱きつきます」
「はっ?えっ…か、かのん!?!?」
理由が曖昧ながらも、いきなり抱きついてきたかのんに驚いてしまい、両腕を上に上げて震えた。
「次は…勝負勝ちましょうね。それと、残りの夏休みのどこかで二人だけでデートしましょうね」
背伸びをして俺の耳元付近に口を近づけて、そっと囁いてきた。
「あっ、うん…そうだな」
緊張しすぎて、言葉が簡易的になってしまった。
「かのんちゃん、見せつけてくれますね〜とりあえず、この勝負は私達のチームが勝ちでいいよね?」
「…もう杏奈ちゃん達の勝ちでいいですよ!!」
両頬を膨らませながら、楠山さんに言った。
「おっ!スイカの真ん中に綺麗にヒビが入ってるね〜」
スイカ割りが終わったタイミングで、菫姉が帰ってきた。
「菫姉!?まだ戻って来ないと思ってた」
「そろそろ私の出番が来そうな予感がして、戻ってきた。腹ごなしの運動も終わった所だったし」
「予感って…なんだよそれ。しかも、運動終わらせるのも早すぎ」
呆れながらそう話したら、菫姉は笑って肩を叩いてきた。
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