第13話 海水浴③
ビーチに着いた俺たちは、砂浜にテントとパラソルを設置した。
「ここは私が荷物を見ててあげるから、若者たちよ遊んできなさい!」
「菫お姉ちゃんありがとうございます!」
「菫さん、お言葉に甘えさせてもらいます」
かのんと楠山さんは菫姉に一言伝えて、二人で海に走って行った。
それを見ていた俺と大雅も後に続いて向かって行った。
「おぉ、冷たいな」
「奏風先輩!隙あり!」
海に入り、冷たさを感じていたら、後ろからかのんに海水をかけられた。
「うっ、しょっぱいな。それじゃあ、かのん覚悟は出来てるな?」
「えっ!?奏風先輩…?な…」
かのんがまだ話してる途中で、俺は海水を思いっきりかけてやり返した。
「うわー!しょっぱい〜。奏風先輩ひどいですよ〜」
「いやいや、最初にやって来たのはかのんだろ?」
「うふふ、二人とも楽しそうだね!」
後ろから楠山さんが声をかけてきた。
その横には、大雅は全身びしょ濡れになって立っていた。
「杏奈ちゃんもやってる事やってますね〜」
「まぁ、海に来たらやりたくなるもん」
二人は仲良く笑いながら、今度は二人同時に俺と大雅に交互に海水をかけられ、目の前が一瞬見えなくなった。
「そうだ!ビーチボール持って来たから遊ぼ!」
「楽しそう!!私もやるー!」
「仕方がないな、俺のカッコいい所を見せてあげる!そんで、奏風もやるよな?」
「あー、やるよ」
皆んなの賛同を得て、楠山さんは菫姉の所に行きビーチボールを取りに行った。
「お待たせー!で、どこでやろうか?」
「最初は浅瀬らへんでやろ!」
楠山さんが聞いてきて、かのんはすぐに返答した。
「大雅と奏風くんもそれでいいかな?」
「俺は杏奈がそこでいいなら、それに着いて行くまでだ」
「俺も大丈夫だよ」
「うん!それじゃあ、行こう!」
そう言って、楠山さんは大雅と話しながら向かい、俺はかのんと一緒に向かった。
「奏風先輩って最近、私の事よく見てますよね?」
「そうか?気のせいだと思うけど」
「そんなはずはないと思います。奏風先輩の視線を感じるのです!」
いや、俺の視線ってどんな視線なんだよ。
「かのんの気のせいじゃないか?それか、他人の視線とか?」
「他人の視線…」
あれ?急にかのんの様子が変になったな。
「他人の視線」って言葉に何かあるとか…?
「どうしたんだ?何か気になったのか?」
どうしても気になった俺は、かのんに聞いてみた。
「気になったっていうか、奏風先輩以外に見られるのが嫌なだけで…あっ、杏奈ちゃんと菫お姉ちゃんは別ですよ!奏風先輩以外の男性で許されるならギリ大雅先輩ですかね」
あー、かのんって確かほぼ全て男子を興味ないんだったな。
大雅は俺からの頼みで仲良くなったから、他から見れば珍しいって感じだけど、近くにいる俺からしたら渋々なんだよな。
「そうだな。俺も…かのんの水着とか素肌を…他人に見られるのは少し嫌だな…」
俺はこの言葉を言うのに顔を真っ赤にしながらも、かのんの目を見てちゃんと伝えた。
かのんは顔を赤くして…
「奏風先輩にそう言われると、少し恥ずかしいですね」
と言い、いきなり俺に抱きついて来た。
「か、かのん!?他の人も見てるし、楠山さん達も待ってるから早く行こ」
俺は慌てふためきながら、楠山さん達の方に指を指した。
「奏風先輩はもっと耐性を付けてください。それじゃあ、杏奈ちゃん達の所に行きますか」
不貞腐れながら俺の手を引っ張り二人の所へ向かう。
うん…耐性を付けるにしても、かのんの側にいれば耐性MAXになると思うな…
「ヒューヒュー、お二人さん熱いね〜」
「かのんちゃん大胆〜!」
さっきの光景を見ていた二人は、さっそく俺たちをからかってきた。
いや、俺たちではなく、俺だけだな。横でかのんは喜んでるから。
「もう〜杏奈ちゃんたら何言ってるの!」
「抱きつくシーンを見たら言いたくなっちゃって」
二人は俺たちの方(主に俺の方)を見ながら、ニヤけながら話をしていた。
「奏風は幸せ者だな」
「幸せと不幸の間にいるな。周りからの視線が痛いから」
「あれだけの可愛い子がいたら、それは目立つよ。しかも、そんな可愛い子から抱きつかれたら殺気も必然。ナンパとかされない様に守らないとだな」
「楠山さんも可愛いから大雅も気をつけろよ」
贔屓になるかもしれないが、かのんがこのビーチで一番可愛いと思っている。
これに恋愛感情があるかと言われたら、またそれは別になるとは思うけど。
「かのん、楠山さん、話が逸れてるからそろそろビーチボールやろうか」
「そうだね!それじゃあ、かのんちゃん行くよー!」
と言った瞬間に楠山さんはビーチボールを高く上げて、落ちて来た瞬間にかのんに向けて叩いた。
「えっ、、ちょ…待って、、うわー」
いきなりすぎて対処が出来なかったらしく、かのんの体に強く当たり後ろへ倒れた。
「あー、かのんちゃん大丈夫!?」
「大丈夫です。ちょっと、受け止めきれなくて」
「杏奈は手加減を知らないからな」
「ほら、かのん大丈夫か?立てるか?」
皆んなでかのんの所へ駆け寄って、心配した。
俺はかのんが立てなさそうと思い、手を差し伸べる。
「奏風先輩が私の為に手を差し伸べてくれてる」
手を差し伸べるだけでそんなに感動するのか?
かのんは実はチョロい…?
「奏風先輩、今、私の事チョロいとか単純って思ってましたか?」
「えっ!?」
ピンポイントで当てて来たので、俺はかなり焦った返事をしてしまう。
「ふ〜ん。私の事そんな風に思ってたんですね」
「いや、思ってないよ!かのんは可愛い女の子だなっていつも思ってるから!!」
勢いに任せて「可愛い」と口走った事に気づいたが、時既に遅くかのんは照れていた。
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