第10話 夏休みまであと少し!

 菫姉とかのんが出会ってから一日経った。


 あれから、家に帰った俺は菫姉からうるさいほど「かのんちゃん可愛かったね〜」「かのんちゃん早く来ないかな」「かのんちゃんと結婚しなさい」と言われ続けた。

 流石に聞き飽きたし、疲れるので用もないのに理由を付けて部屋に戻って寝てた。


「奏風、昨日はありがとうな!あと、杏奈が今日は大丈夫だって!」


 大雅が来て早々、昨日メールで送った事について俺に話しかけてきた。


「楠山さん、予定あったらどうしようかと思ってたけど、今日空いててよかったよ」


「あー、杏奈はほぼ暇だからいつでも大丈夫だよ。てか、杏奈いつも暇だしな」


 大雅は笑いながらそう言ってきた。 


「それにしても、奏風の姉には感謝だな」


「なんで?」


「車だよ!車!これで電車賃が浮いたからお土産とか少し余裕ができるやろ?」


「あー、それは言えてるな。」


 確かに、電車で行くと往復でかなりお金がかかるから、車で行く事で余裕はできるな。


「あー、一つ忠告しとく」


「?」


 大雅は俺が忠告と言った時、徐に首を傾けたので昨日あったかのんと菫姉の事を話した。


「実は、姉がかのんの事をかなり気に入ったみたいでさ」


「かのんちゃんはお姉さんにまで人気なのか」


「まぁ、最後まで聞け。それで、意気投合したらさかのんが菫お姉ちゃんって呼び出したんだよ」


「菫?」


 あー、大雅には菫姉の名前教えてなかったな。


「姉の名前。それで嫁に来てとか、義妹になりますって言ってきたの」


「それは、会わせてはいけない2人だな」


 大雅は言葉を選んで答えようとしてたが、それが精一杯の言葉だったらしく俺はそれに対して頷いた。


「で!ここからが本題。もしかしたら、楠山さんも菫姉に狙われるかも」


「狙われてるってどんな感じに?」


 いや、そう聞かれても言葉で表すのは難しいんだよな〜。


「まぁ、簡単に言ったら可愛い子はみんな私の虜的な?」


「ほんと簡単にまとめたな!!まぁ、杏奈は大丈夫やろ」


「油断大敵って言葉があるやろ!だから、気をつけてな」


「わかった、わかった」


 大雅はそう言いながら、席へ戻っていった。


 あの返事の時は分かってない時だから少し不安は残るが、自分で何とかしてもらおう思った。


***


 予定がある時は、学校の授業が早く終わる気がするな。

 いつもなら、「まだお昼前なのか〜」とか思ってるのに今日は放課後になっている。


 さて、大雅は先に楠山さんの所に行ったからかのんでも待つか。


「かーなた先輩!わっ!!」


 後ろから急にかのんが現れた。


「びっくりした!?不覚にも背後を取られるなんて…」


「私の方が気配消すの上手かったみたいですね!」


 俺だって気配消すのは得意な方だけど、ここまで綺麗に背後を取られると少し落ち込む。


「そうだな」


「では、杏奈ちゃんに会いに行きましょーう!」


 今回はかのんが先に走り出して、俺が後ろから追いかける形になった。


「杏奈ちゃーん!!会いたかったよ!!」


 楠山さんが見えた途端、かのんは走り出して、それと同時に楠山さんもかのんに向かって走ってきた。


「かのんちゃーん!!私も会いたかったよ!!」


「そう言っても前回からそうな経ってないやろ?なぁ、奏風」


「まぁ、そうだけど。2人にとっては運命の再会レベルになるんだろう」


「そうなのかなー」


 大雅に取ってはそんなもんでも、この2人はそう思わないとついていけないと思った。


 このやり取りをしているだけで、5分は経過していた。そして、やっと本題を話せるタイミングになった。


「楠山さん、海行く交通手段がうちの姉の車運転になりました」


「あっ!うん、大雅から聞いてるよ!お姉さんに感謝しないとだね」


「いや、感謝はしなくていいぞ」


 感謝したら調子に乗って何しでかすか分からないし。


「菫お姉ちゃんが可哀想でしょ!!」


 まさかのかのんが姉を守るとは予想もしなかった。完全に姉に取り込まれてるな…


「かのんちゃん、奏風くんのお姉さんにあったの?」


「会ったよ!いい人だったよ〜!」


「いいな〜私も会いたい!!」


 はい、アウト!!かのんが菫姉の事をめちゃいい風に語ってる。

 それに反応して、楠山さんも会いたくなる。

 あの時は何も言ってなかったけど、家で「私は常に先の未来を見てるのさ」って感じで不敵な笑みをしてそう。


「楠山さん、菫姉に近づきすぎないようにね」


「なんで??」


「かのんみたいに菫姉の信者になってしまうから」


「なるほど…かのんちゃんと一緒に信者になろうかな〜」


 大雅、言った通りあなたの彼女が信者になりたいと言い出しましたぞ。


「杏奈、俺だけを見てくれ!!」


「仕方がないな〜」


 たったその一言で解決するのか。さすが幼馴染な所だな。てか、また脱線してるから話戻さないと。


「それで、夏休みのいつくらいに海に行く?」


 と俺が聞いたら、楠山さんがすぐに日程を示してくれた。


「夏休み入ってすぐの月曜日!!!」


「土日ではないんだな」


「家族連れとかいると更に混むからちゃんと考えてるのさ!」


「杏奈ちゃん、流石!!」


「流石、俺の彼女だ!!」


 なんでたったそれだけのことで、ここまで盛り上がれるのか謎だな。


「月曜日ね、菫姉は暇してるから余裕で大丈夫だよ」


「それじゃあ、夏休みまであと少し頑張っていこうー!!」


 楠山さんの掛け声と共に俺とかのんと大雅で「おー!」と後に続いた。


 いよいよ、夏休みの始まりである。

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