第9話 会わせてはいけない2人

 放課後になり、俺はかのんを待っていた。

 菫姉に会わせるのはやはり抵抗があるものだ。

 常に俺が考えてる事を見透かしてる様に見えるし、何考えてるか分からない…はぁ…


「お待たせしました!かのん到着です!」


 うぉ!?何その挨拶ちょー可愛いんですけど。


「俺も今来た所だから。じゃあ、行こうっか」


「奏風先輩、成長しましたね!」


 かのんはそう言ったあと首を縦に振った。


「そうだな。ほら、早く来ないと置いていくぞ」


 かのんが頷いている間に俺は先に歩いていたので、後ろを振り向き伝えたら


「あっ、待ってくださーい!!」


 と叫んで走って追いかけてきた。


 ………

    ………

       ……… 


 家に到着したら、玄関の前で姉が待ち構えていた。


「奏風、帰ってくるの遅くない?」


「遅くないよ!いつもと同じです!!」


「まぁ、いいや。それで後ろの子がもしかして」


 自分から喧嘩腰に聞いてきて、急に飽きたら話変えるのやめて欲しい…


「そうだよ、菫姉が会いたがっていたかのんだよ」


「は、初めまして。奏風先輩とお付き合いさせてもらってる大園かのんと言います」


「はい、ストップ!!お付き合いはしてませんからね?」


 かのんはいきなりぶっ込んだ台詞言ってくるから油断も隙もない。


「あら!お付き合いしてるの!奏風の姉の菫です。よろしくね、かのんちゃん」


「菫姉もそこは乗らなくていいから!」


 何なんだこの2人は…似たもの同士が集まるとこんなにも面倒くさいのかよ…


「奏風、そんなに疲れた顔しないでよ〜!」


「奏風先輩!もっと笑顔になりましょ!!」

 

「なれません…」


 誰のせいでここまで消費してるんだよ…


「さぁ、かのんちゃん玄関じゃあれだから中に入って!」


「お邪魔します〜!」


 俺はもう自分の部屋に篭っていた気持ちになっていた。


 中に入って、前に菫姉が座り、俺とかのんは隣同士に座っていた。


「かのんちゃん、ほんと可愛い〜!!私の妹になって欲しいー!!」


「えへへ〜お姉さんにそう言ってもらえて嬉しいです!!」


「奏風!かのんちゃんと結婚しなさい!!」


「そうです!奏風先輩!!私と結婚しましょう!」


 おいおい、この圧は何なんだ!!!

 しかも、付き合ってないのにいきなり結婚!?


 菫姉もかのんもぶっ飛んでるわ…


「結婚の話はまだ無理やな。そもそも付き合ってもないからな」


「奏風先輩、いつになったら私と付き合ってくれるんですかー?」


「それは…時が来たらな」


「奏風、それはないよ。かのんちゃんが可哀想だよ」


 俺だって、別に悪気があるわけじゃない。

 でも、タイミング的にまだなんだよ。


「まぁ、こんなダメな弟だけどかのんちゃん、これからも奏風のことよろしくね」


「任されました!そして、お姉さんの義妹になってみせます!!」


「かのんちゃん、可愛すぎる!!!!」


 菫姉とかのんの2人は意気投合してその後も盛り上がっていた。

 そして、俺は大雅に頼まれてた事を思い出した。


「菫姉って運転できる?」


「もちろん!免許あるよ!」


「今度さ、俺とかのんと高校の友達とその彼女で海行くんだけど、車で連れて行って欲しいんだけど…」


「なるほど…」


 と呟いた後、数分間考え込んだ。


「お姉さん、お願いします」


 なかなか答えてくれないから、かのんに頼んで『必殺』泣き落としをしてもらった。


「かのんちゃんにそんな目をされたらお姉さん断れない〜。…わかった、私が運転してあげよう」


「菫姉、まじ助かるわ」


「えっ?奏風の為ではないからね?かのんちゃんの為に私が動いてあげるの!」


「お姉様と呼んでもいいですか?」


「お姉様より菫お姉ちゃんって呼んで欲しいな〜」


「菫お姉ちゃん!!」


 あー…やっぱり、会わせてはいけない2人だった…


「さて、かのんちゃんとまだ話したいから奏風は部屋の掃除でもしてくれば〜?」


「部屋の掃除?なんで?」


「じゃあ、今からかのんちゃんを連れて部屋に突撃してもいいのかなー?」


 そう言われると少し猶予がほしいな…

 部屋はさっき見た時は綺麗だったけど、もう少し片付けるか。


「わかったよ。15分待ってくれ」


「10分」


「10分じゃ、無理があるでしょ!!」


「10分」


「………もう10分でいいよ!!!」


 俺は菫姉の圧力に負けて、速攻で部屋を片付けしに行った。


「ほんと菫姉の圧力は強すぎる。さて、時間がないからさっさと片付けるか」



 10分後———


「奏風!お姉ちゃんとかのんちゃんが来てやったぞ〜」


「奏風先輩の部屋楽しみです!」


 ほんとに10分後に来やがった。2人が待ってる間の俺の苦労を知ってほしいわと思いつつ、2人を部屋に入れた。


「奏風先輩の部屋綺麗ですね!!」


「10分でよくここまで綺麗にできたな」


「頑張りました」


 ほんと疲れた。かのんには悪いけど、見たなら早く出て行ってほしいくらいに…


「さて、部屋に来たと言う事は〜。let's お宝探し!」


 待て待て待て!!!!!何勝手に物色してるんだよ!!!


「かのん、それはやめてくれ!!」


「えー、ダメですかー?」


「だ…」


 俺がダメと言いかけたら、後ろから「どんどん探しちゃおう」と菫姉が言ってきた。


 それに対して、


「ダメに決まってるやろ!!!」


 と言い、俺は無理矢理2人をリビングまで追い返し、俺はかのんに「時間は大丈夫か?」と聞いた。


「あっ!もう18時近くじゃないですか!!私そろそろ帰らないと…」


「えー、かのんちゃんもう帰るの〜?泊まりなよー!」


「菫姉!それは流石に無理だよ」


 だって、学校からそのまま来てるんだから何も準備できてないし、かのんの親も心配するやろ。


「仕方がない。今日は我慢しよう。またね!かのんちゃん!」


「菫お姉ちゃんもまた!」


「ほら奏風、かのんちゃんを送ってきな」


「言われなくても最初からそのつもりだったし」


「奏風先輩…優しいですね」


「そんな事言ってないで、ほら行くぞ」


「はーい!」


 俺はかのんを家の近くまで送っていった。


「奏風先輩、ここで大丈夫です!」


「そうか、今日は姉に付き合ってくれてありがとな」


「いえ!菫お姉ちゃんは尊敬できます!」


「それならよかったよ」


 かのんは満面の笑顔で「はい!」と頷いた。


「あっ、楠山さんにも会わないとだから、大雅に頼んで明日にでも会うか」


「そうですね!杏奈ちゃんに会いたいし、菫お姉ちゃんの事も伝えないと!」


「姉のことは伝えたくないな〜。楠山さんまで狙われそうだし」


 かのんはうふふと小さく笑い、「まぁ、その時はその時で何とかなりますよ!」と言ってきたので


「そうだな」と返答して、大雅に「明日4人で夏休みの話しよ」ってメールした。

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