第8話 姉、帰還
「な、なんでここにいるんだよ!?」
なぜ驚いたかと言うと、この人は俺の姉で名前は
実際、俺も菫姉と会うのは数年ぶりだからな。
「なんでって、ここ私の家でもあるじゃん?」
「いや、そうだけど…自分の家もあるでしょ?」
「あの家は社宅でさ、会社辞めたから追い出されたんだよね」
えっ、会社辞めた!?社宅だから追い出されたって事は…
「もしかして、またここに住むって事…?」
「そうだね。てか、それしか選択肢が今はない!」
まじか…菫姉のいない生活は扱き使われないから快適だったのに、ここにきて帰ってくるとは最悪だと思っていたら
「そんな顔するなって、昔みたいに頼み事は多分しないから」
と顔に出てたらしく、菫姉から補足の様な事を言われたが”多分”って言葉に引っかかった。
「多分って言ってるから、絶対何かしら頼むやろ」
「まぁ、それは今は置いといて…」
置いとくな。あと、話をはぐらかさないで欲しいんですけど!!!
「今日、デパートで一緒にいた女の子2人のどっちかは彼女なの?あっ、男の子もいたわね〜」
なっ!?何故、菫姉は俺がデパートに行った事を知ってるんだ!?!?!?
「答えてあげようか?」
また、顔に出てたらしい。
「正解は、私がここに戻る前にデパートでお買い物してたからです!その時に見かけました」
なるほど、それなら辻褄が合うが…
彼女…
「さあ、白状してもらおうか!」
「一つだけ言っておく、彼女はいません」
「奏風、まだ彼女の1人もできてなかったのか」
「出来てないだけだよ!!それに、もう1人の女子は俺の親友の彼女だし!!」
嘘はついてない。だが、俺の言葉に対して姉がニヤリとしてきた
「まだね〜って事はもう1人の女の子の事好きなんだ〜」
「な、何言ってるの!?それに後輩だし」
「ふーん、後輩なんだ。それって好きって事でしょ?」
「な、まだ違うって言ってるでしょ!!」
「顔を赤くしてるのに?」
菫姉はまたニヤリとそう言ってからかってきた
「だから!違うよ!!」
と俺は反応した後に、小さく「好きだけどさ、ほんとにまだその時ではない」と呟いた。
「まぁ、いいや。じゃあ、その女の子に明日、会わせてよ!名前なんて言うの?」
「は!?なんで会わせないといけないんだよ?」
「まぁ、名前は教えてもいいけど…」
「えっ?奏風の姉だから挨拶しようと思って。ほら、早く名前!!」
「わかったよ。明日、学校で伝えとく。名前はかのんだ」
もう何言っても引く気がないと思ったので、俺は諦めた。
「かのんちゃん!可愛い名前だね!」
「可愛いよ、かのんは」
その言葉に菫姉はまたまたニヤリとして
「やっぱり、好きじゃん!!」
と言ってきたが俺はもう反論するのもやめた。
「じゃあ、かのんちゃんに楽しみにしてるって伝えといてね〜」
「わかったよ」
そう言って、姉は自分の部屋へ戻っていた。
嵐が来たかと思いきや、去ったらこの静かさだ。
少し、寂しさを感じる…
◇◆◇◆◇◆
翌日、学校で大雅と話をしていた。
「えっ!?奏風って姉がいたのか!」
「まぁな。別に言うことではないし」
「そうだな。とりあえず、昼休みにかのんちゃんにちゃんと伝えなよ?」
「もちろん伝えるよ。伝えないと姉が怖いし…」
「姉に負けるなよ」
「まぁ、頑張るよ」
そして、昼休みになりかのんがやってきた。
「奏風先輩!かのんがやってきましたよー!」
「かのん、待ってたよ。ちょっと話したいことがあってさ」
「それってもしかして、こ…」
またもや、大勢の教室の中で今度は告白とか言いそうになったので即座に口を塞いで———
「俺の姉がさ、かのんに会いたいから今日家来れる?」
「なんですと!?そんなビッグイベント逃すわけありませんよ!!!!!」
「じゃあ、放課後待ってるよ」
「わかりました!てか、奏風先輩って姉いたんですね」
かのんにまで言われた。
俺ってそんなに一人っ子に見えるのかな?
「一人っ子に見えるの?」
「見えますね。なんでって言われたら答えるのは難しいんですが、雰囲気かな?」
「なるほど」
「さぁ!お昼ご飯食べちゃいましょう!」
確かに話してたら時間がなくなってきてた。
「あっ、奏風の姉って運転できる?」
突然の大雅の言葉にびっくりした俺は「なんで?」って聞き返した。
「今度の海行く時さ、電車賃代浮かしたいから」
「なるほど。まあダメ元で聞いてみるよ」
「よろしくー!」
さぁ、放課後はかのんを連れて家に帰らないとだな。大雅の要求も聞かないとだし。
あっ…部屋汚くないかな…
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