第2話 お出かけデート

 その日の夜、夕飯を食べ終えた俺は身支度を終え自分の部屋で時間までゆっくりしていた。

 

 予定していた時間より30分遅れてかのんちゃんからメールが来た。


「奏風先輩!お風呂に入ってて、遅くなりました!」


「お風呂報告はしなくていいから。で、俺に何か言いたい事あるからメールするって言ったんだろ?」


「そうでした!明後日の日曜日に私とお出かけですからね!」


「えっ!?急すぎないか?確かに休日にお出かけはするって言ったけど明後日!?」


「奏風先輩の驚く顔が見れなかったのは残念ですが現地で言ってたらはぐらかしましたよね絶対?」


「なので、メールをして逃げられないようにしました。あっ!既読・未読無視したら家突き止めて押しかけますからね?」


「どっちもしないから家に押しかけるのだけはやめてほしい」


 かのんちゃんの行動力は計り知れないからな…


「よろしい!では、お出かけする場所を発表したいと思います!!」


「お出かけの場所は…」


「水族館です!!!!!」


 メール越しなのに何故か溜めてきて発表してきた。


「溜める理由でもあったのか?」


「雰囲気ですよ!!こっちの方が先輩も楽しめるでしょ?」


「まぁ、どこ行くのかドキドキしたけど」


「それならよかったです!てことで、水族館に行きますよ!!!」


「まぁ、いいよ。俺も久しぶりに水族館行きたいと思ってた所だし」


「OKしてもらえて嬉しいです!」


 メールの文面に珍しく絵文字が使われてた。喜んでもらえてる事が一眼でわかる。


「待ち合わせ時間とかどうする?」


「そーですねー、水族館の最寄り駅の集いの広場に10時半に待ち合わせはどうですか?」


「俺もその時間で大丈夫だよ」


「それじゃあ、楽しみにしてますよー!!」


***


 日曜日の午前9時、俺はまだ家にいた。

 なぜなら、10時半に着けばいいから家から目的地までは40分くらいで行けるのでかなりギリギリに出る予定をしていた。


 時刻は10時28分予定より少し遅れて着いたので目的地まで走った。

 10時半ジャストに目的地に着いた。かのんちゃんは俺が見えた途端にほっぺを膨らませてそして俺に向かって———


「奏風先輩、私より遅れてくるなんてダメじゃないですかー!」


「こんなに可愛い私に何かあったらどうするんですか?」


「そーゆう訳で奏風先輩には罰として私のお願いを2つ叶えて貰います。」


「一つ目が今日一日手を繋いで歩いてもらいます」


「二つ目がお揃いのキーホルダーを買って鞄につけてください!!」


 圧力により俺は反論することはできなかった。


「では、水族館に行きましょう!」


「そうだな」


 俺とかのんちゃんは水族館へと向かった。

 

 会話しながら向かっている時に「服かわいいね」と言ったらかのんちゃんが「奏風先輩!嬉しいです!」と言って抱きついてきた。


 俺は恥ずかしくなりかのんちゃんの手を引っ張って、さっさと目的地へと向かった。


 水族館の入り口に着いた俺たちはチケットを買っていた。ここのチケットは飼育されている動物の写真が使われていてどんな動物が印刷されてくるのか楽しみの一つになっている。


「奏風先輩のチケットは何の動物でした?私はペンギンでしたよ!」


「俺はアザラシだったよ」


「なんかテンション低くなってません?」


「目当ての動物が出なかったからな」


「奏風先輩って好きな動物いたんですね」


「いやいや、そりゃいるでしょ?」


「好き好きオーラが見えなかったので。なら、好きな動物を教えてください!」


「あとでな!目の前に連れて行ってやるよ」


「奏風先輩のケチー!!」


 かのんちゃんのその言葉に俺はクスッと笑って中に入場した。


「先輩!奏風先輩!!ペンギンいましたよ!!」


 まさか魚には目もくれずペンギンエリアまで一直線に行くとは


「かのんちゃん、一応聞くけど魚は見ないのかな?」


「魚ですかー?最初に見るとしたらペンギンでしょ!」


「そーゆう感じなのか…?」


「そーゆうものなのです!!!」


「さぁ、私のオススメは教えましたよ。先輩のオススメのブースに連れて行ってください」


「わかったよ。よし、かのん・・・俺についてきな!」


 俺はかのんちゃんの手を引っ張ってとあるブースに連れていった。


「俺のオススメのブースはここカワウソエリアだ!」


「奏風先輩ってカワウソ好きだったんですね」


「あのつぶらな瞳に食べる時のギャップ可愛いだろ」


「まぁ、奏風先輩が言うならそうなんでしょうね」


「それよりも奏風先輩さっき私のこと″かのん″って呼びましたよね?」


 かのんちゃんは顔を赤らめながら聞いてきた。


「た…確かに呼んだかも…」


「できれば…これからも呼び捨てで呼んでほしいです…」


「わ…わかった…えっと…かのん」


 さっきは勢いで呼んでたけど、いざ意識して呼んだら少し恥ずかしくなってきた。


「なんですか、奏風せーんぱい」


 小悪魔だ…この子、小悪魔で間違いない。

 

 さっきまであんなに恥ずかしがってたのに今は満面の意味で返答してきてる。


「さぁ、そろそろ別のエリアに移動しようか」


「はい!行きましょう!!」


 俺たちは他のブースに行き飼育員さんによる魚の説明を聞いたり、輪っかの水槽一面にクラゲがいてその中を通って進んだりして楽しんでいた。


「そろそろ、お昼の時間だな。水族館の中にカフェがあるらしいけどそこにするか?」


「私は奏風先輩と一緒ならどこでも大丈夫です!」


「そうか。じゃあ、カフェに向かおうか」


「はい!いっぱい食べますよ〜」


 施設内に常設されているカフェへと向かった。

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