他の男子には興味がない後輩は、俺にだけ甘えてくる

夕霧葵

第1話 後輩は突然やってくる

 俺は今、困っていることがある。

 それは…俺の通う学校にいる後輩が他の男子には素っ気ない態度をとっているんだが、なぜか俺にだけは甘えてくるのだ。


 後輩の名前は大園おおぞのかのんといい、出会いは単なる偶然だった———


 その日は朝早くから出かけていて、道に迷っていた彼女と出会った。そこで俺は声をかけて道案内をしてあげたんだけどまさか後輩になるとは…


 あの時の大園さんはもう少し大人しめな雰囲気だったと思うんだけどなって考えてたら……


「せんぱーいー!会いにきたよ!!」


「また来たのかよ。ここ2年の教室だぞ!」


「知ってますよー!先輩に会いに来てるんだから」


「あと、教室ではあまり会いたくないんだけど…」


「えー、なんでですかー?私は会いたいですよ!」


「周りの目があるからさ…」


 実は彼女は入学してきた時からかわいくて目立っていた。2年の男子の間ではかなり話題になっていた、もちろん同学年の男子にもだ。俺にとってはあの時の大人しめな雰囲気はどこいったって感じ。


「そんなの気にしてたら何もできないじゃないですか〜」


 彼女がどんどん俺の方に体を近づけてくる。


「いや、だから一旦離れよ?」


  さっきから周りの殺気がどんどん強くなってる気がする。これ以上何かしでかしたら俺は生きてないかもしれない…


「あー、そうだ!先輩、放課後デー…」


 俺は咄嗟に彼女の口に手をかざして「大園さんは、放課後電子レンジでも見に行くの?」と誤魔化した。

 大園さんは不満そうな顔でほっぺを膨らませたあと、「先輩、今日の放課後デートしてくれたら今した事を許しますよ。校門で待ってますね!」と耳打ちしてきた。


 これには俺も首を縦に振るしかなかった。そして、大園さんは自分のクラスに戻っていった。


かなでも大変だな〜可愛い後輩に迫られて」


 彼の名前は桜内大雅さくらうちたいがと言い、親友だ。そして、俺の事を月舘奏風つきだてかなただから奏と呼んでくる。


「他人事の様にいうな。少しは助けてくれよ〜」


「だって、助けようとするとかのんちゃん睨んでくるんだもん」


「えっ?そんなに睨んでは来ないやろ?気は強そうだけど」


「奏だけだよ、あんなに甘えてるかのんちゃんと話せるのは」


「それに、かのんちゃんは奏にも名前呼んで欲しいと思ってるよ!」


「いやいや、それがほんとだったとして大園さんにはメリットないやろ」


「奏はほんとに鈍感なんだから」


「おい、聞こえてるぞ!」

 

 それと同時にチャイムが鳴り、「聞こえる声で言ったからな!じゃあ、俺は戻るわ」と言って逃げていった。


***


 放課後になり大園さんの約束の時間になっていた。俺はホームルームが終わり次第、速攻で校門に向かっていった。校門が一つしかないから早めに出れば会わないと思っていたんだが…


「先輩の考えてる事はお見通しですよ!」


 おいおい、いくらなんでも早すぎないか?一年のホームルームってそんなに早かった??


「は、早いですね…そしてなぜ待ち伏せを…」


 大園さんはそれに対して笑顔で「それは、先輩が1番わかってますよね?」と言ったが目が笑ってなかった。


「はい。逃げようとしました。デートしますので許してください」


「そしたら〜鞄がいま教室なので着いてきてください」


「えっ?ここで待つのはダメなんですか…」


「そしたら先輩逃げますよね?」


「………行きます」


「あ!あと、連絡先交換してくださいよ!!」


 確かに会ってから随分と経つが未だに連絡先を交換してなかったな。


「先輩に拒否権はないんですからね?」


「わかったよ。あとでな」


「い!ま!す!ぐ!してください!!」


 俺は諦めて連絡先を交換してあげた。まぁ、喜んでくれたならよかったよ。

 交換したら教室に行き、鞄を取りに行ってまた校門の前に戻ってきた。


「どこ行きましょうか?」


「決めてなかったのか、今日は駅前で食べ歩きでもするか?」


「それはデートとは言わない気がしますが…先輩の案なのでそれでいいでしょう」


「その代わり、休日はちゃんとしたデートしてくれるならですけどね!」


「付き合ってもないんだからデートって言葉はちょっと…今日は仕方がないけど」


「わかりました。先輩!休日は私とお出かけしてください!」


 言葉変えてもあまり意味が変わってない気がするけど「わかったよ」と言い返し、駅前へと歩いて行った。


 駅前に向かってる時に大園さんと同じクラスの男子が「かのんちゃんだ!また月曜日学校でねー!」と挨拶してたが「うん。学校で。それじゃあ。」と返答していた。ほんとに俺以外には無関心だなと思い知った。

 

 目的地着いたら大園さんはさっきの態度とは打って変わって明るく「さて、先輩最初はどこに行きますか?」と話してきた。


「あそこにクレープあるから食べるか」


「最初にクレープですか。先輩にしてはよく考えましたね」


 大園さんはたまに上から目線になるんだよな


「大園さんはどのクレープ食べるの?」


「私は、いちごダブルクリームにします」


「それなら、俺はチョコバナナクリームだな」

 

 注文してベンチに座っていると———


「せうあい!わあいのおとなあえでよんてください」


「えっ?ちゃんと食べてから話しなさい!」


  急いで食べ切る大園さん。


「先輩!私のこと名前で呼んでください!」


「呼ぶ理由がないから大園さんじゃダメなのか?」


「ダメです!」


 強く否定されたので俺は「かのん…ちゃん?」と呼んでみた。


「何故疑問系なんですか!あと、ちゃん付けでいいですよ!」


「かのんちゃんは何故、俺に名前で呼ばれたいの?」


「それは私のお気に入りだからですよ〜」


 うん、何となく気づいてたけどやっぱりか。俺の事好きだろうな。だが、かのんちゃんが告白とかはっきりとした言葉が出てくるまで俺は今まで通りの態度で行く事にした。


「私は先輩のこと奏風先輩って呼びますね」


「もう好きにしてくれ…」


 こうして俺たちは名前で呼ぶことになった。


「あと、夜メールしますからちゃんと見てくださいよー?」


「21時くらいなら見れるよ」


「わかりました、その時間にメールします」


 会話をしながらあっという間にクレープを食べ終えた俺たちはゲームセンターやデパートに見てから解散になった。


 帰り道に俺はかのんちゃんが直接ではなく、メールをしてまで言いたい事は何だろうと思いながら帰宅した。

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