第2話 少年の始まり

今日もまた一人の人。人属に分類される少年が独り立ちをした。

広い世界に一歩を踏み出したのだった。


このあと、どのような人生になるのかは……まだ誰にもわからない。


けれど、この一人の冒険者がとあることをしてしまったから……こんな記録が残ったりしているのだろう。


少年もこの時はまさか自分が……とは思ってもいないだろう。

そもそもあんな少女と自分がコンビを組む。ともに過ごしていくとは……微塵も考えていなかっただろう。


一人の人属という小さな小さな生き物の始まり。そんな記録はほとんど後世には残らない。


『だから一人の少年の始まりが残っていた』


という方がすごいのかもしれない。

これもあの少女が……隣に居たからだろう。


でも始まりとは。始まった。ただそれだけだ。


始まってすぐの事は本人ですら覚えていることは少ない。


記憶というのは曖昧なものだ。


産まれた時の事なんて覚えてもないし。

それからの幼少期というのか――チビの頃の記憶なんてほとんど。いや全くないからな。


さすがに少女もそこまでは把握できていなかったらしい。


とある少年が始まりの一歩を踏み出した。


そこからしばらく……。

少女と出会う少し前までは――空白の時だ。


何も残っていない。

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