22.お昼寝の後に⑩

「さて、まあ、難しい話は置いておいて、早くいただくとしましょうか?」

「あ、そうですね。いつまでも話していても仕方ありませんし……何より、お腹も空きまし」

「ええ、そういうことよ」


 色々と話していたが、そろそろ食事を始めるべきだろう。昼寝をして、リルムと話して、色々とあったため結構時間が経っている。これ以上話していると、流石に食事の時間が遅くなり過ぎてしまう。

 昼寝をする時は感じていなかったが、今は結構お腹も空いている。早い所、このサンドウィッチでお腹を満たしたい所だ。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」

「い、いただきます」


 手を合わせて、私とエルッサさんは食事前の挨拶をした。すると、リルフが少し焦ったように私達の真似をした。

 どうやら、リルフは完全に常識を知っているという訳でもないようだ。考えてみれば、サンドウィッチという言葉も知らなかったので、知っていることは限られているのかもしれない。


「うん、いつも通り、フェリナの作る料理はおいしいね」

「そうですか? そう言ってもらえると、ありがたいんですけど……」

「まだまだ精進しないといけないとか、思っているの?」

「師匠には、まだ追いつけていませんから」

「熱心ね……まあ、いいことだとは思うけれど」


 エルッサさんは、私の料理をいつもおいしいと言ってくれる。しかし、私はその言葉に満足する訳には行かないのだ。

 私の目標は、料理を教えてくれた師匠である。その師匠にはまだ到底敵わないことがわかっているので、もっと腕を上げないといけないと思っているのだ。


「えっと……リルフは、どうかな?」

「……うん。おいしいと思う。もっと食べたいって、そう思うから」

「そっか……それなら、よかった」


 そこで、私はリルフに聞いてみた。何か違和感を覚えていないかを聞いたつもりだったのだが、返って来たのは味に関する感想だった。

 そんな言葉が返ってくるということは、今の所は大丈夫ということだろう。もちろん、まだ完全に安心できるという訳ではない。この先も注意を払うべきだろう。


「あ、リルフ、少しじっとしていて」

「え?」

「口の下にマヨネーズがついているから、拭いてあげる」


 リルフの様子を窺っていたため、私はその口の下にマヨネーズがついていることを発見した。

 結構、豪快に食べていたので、その際ついてしまったようだ。なんだか、少し微笑ましい光景である。


「だ、大丈夫、それくらい自分でできるよ」

「あっ……」

「あらあら」


 リルフは、私が手を伸ばすよりも先にそれを拭いてしまった。やはり、この子には既にそういうことを恥ずかしく思うようになっているようだ。

 そういう成長は、喜ぶべきなのだろうか。本来なら、きっとそうなのだろう。子供が成長したのだから、そうするべきであるはずだ。

 しかし、あまりにも成長が早すぎて、こちらの気持ちが追いつかない。なんというか、少し寂しい気持ちになってしまう。もう少し、私に甘えてくれてもいいのに。

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