23.変身の謎①

 私とリルフは、部屋に戻って来ていた。昼食も終わって、後はまったりとするだけだ。

 今日は一応、お休みである。お客さんが来れば話は別だが、とりあえず今はやることがないのだ。


「ふう……」

「お、お母さん、その……」

「うん? リルフ? どうかしたの?」

「え、えっと……」

 部屋に入って、ベッドに腰掛けると、リルフが少しもじもじしていた。一体、どうしたのだろうか。


「その……膝の上に乗っていい?」

「膝の上に?」

「うん……」


 リルフの提案に、私は少し驚いた。まさか、そんな提案されるなんて、まったく思っていなかった。

 提案の内容自体にも驚いたが、それはなんとなく理解できる。小さな姿の時は、私の胸に抱かれていたので、それと同じことだと考えれば、違和感はない。

 問題は、その提案をしたということそのものにある。

 先程まで、リルフは私に甘えるのを恥ずかしく思っていたはずだ。それなのに、急にこんなことを言い出すとは、どういうことなのだろうか。


「……いいよ。おいで」

「……うん!」


 疑問に思ったが、私はリルフを受け入れることにした。元々、甘えてもらいたい気持ちもあったので、提案の内容は断る必要がないからだ。

 私の了承を受けて、リルフは対面する形で私の膝の上に乗ってきた。かなり喜んでおり、その表情に私まで嬉しくなってくる。

 小さな頃と比べると、リルフの体は少し重くなっている。だが、それでも軽い。このくらいの重さなら、しばらく乗ってもらっても大丈夫だろう。


「抱きしめてもらっても、いい?」

「いいよ」


 私は、ゆっくりとリルフを抱きしめる。本当に、先程までと比べて、すごく素直に甘えてくる。一体、どうしたのだろうか。

 そう思いながら、私はリルフの頭を撫でていた。それは、ほぼ無意識の行動である。リルフの頭を見て、思わずそうしてしまったようだ。


「お母さん……」

「……」


 リルフは、とても気持ち良さそうにしていた。小さな姿だった時も、今の姿の時も、この子のこの表情は変わらない。

 その表情を見ていると、私も癒された。この子が喜んでくれるなら、なんでもできる。そんなことを思う程に、私にとってこの表情はたまらないものなのだ。


「すう……すう……」

「あ、寝ちゃったんだ……」


 撫で始めてからすぐに、リルフの寝息が聞こえてきた。どうやら、眠ってしまったようである。

 それだけ、安心できたということだろうか。リルフにそう思ってもらえたなら、私としても嬉しい所である。


「……え?」


 そんなことを思っている私の目の前で、リルフの体が光り輝いた。その光には見覚えがある。この子の卵が放っていた光と、同じ光だ。

 光の眩しさに、私は思わず目を瞑る。その直後、私は膝に感じる重さが、軽くなったのを感じた。

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