11.刷り込みで母親に?⑦
「な、なんだか、本当に母親みたいに見えるわね……」
「え?」
「うん、確かに、そんな風に見えるよ」
「あれ?」
「ふふ、もうすっかりお母さんなのね」
「ええ?」
私達のやり取りを見ていた三人は、各々感想を口にしていた。私が、本当にお母さんのようである。そう言われるのは、結構複雑な気分だ。
だが、実際に私はこの子の母親代わりにならなければならない。この子の命を預かるのだから、そういう心持ちであるべきなのだろう。
「お母さんか……」
「ピィ?」
「あ、なんでもないよ」
母親になるということに、私は少しだけ不安を感じていた。私なんかに、それが務まるのだろうかと思ってしまったのだ。
しかし、直後にその考えは捨てることにした。やる前から不安になっていても仕方ないからである。
この子を育てると決めたのだから、覚悟を決めるべきなのだ。やれるかどうかではなくやる。そういう風に考えるべきだろう。
「そういえば、この子の名前とか決めなくていいの?」
「名前? あ、そうだね」
そこで、ミルーシャが大切なことを思い出させてくれた。
いつまでも、この子やあの子ではいけない。きちんと、名前をつけてあげるべきだろう。
「当然、フェリナが決めるのよね? どんな名前にするの?」
「名前……どうしよう」
ミルーシャの言う通り、名前は私が決めるべきだ。母親なのだから、それは私の役割である。
しかし、いざ決めるとなると悩んでしまう。素敵な名前をつけてあげたい。そういう気持ちがあるから、すぐに決められないのだ。
「というか、この子は男の子なの? それとも、女の子?」
「え? それは……どうなんだろう? わからないや……」
ミルーシャの質問に、私は答えられなかった。この子が、男の子なのか、女の子なのか、それは謎である。
見た目からでは、性別はわからない。というか、性別を何によって判別するべきか、わからないのだ。
「メルラム、あなたわからないの?」
「え? それは、よくわからないな……あ、でも、何かの文献で、竜は雌雄同体だといわれていた気がする」
「雌雄同体? 男の子でも、女の子でもないということなの?」
「男の子であり、女の子でもあると言った方が正しいかな?」
どうやら、この子は雌雄同体であるかもしれないようだ。
男の子でも女の子でもある。ということは、どちらでもいいような名前をつけるべきなのだろう。
なんだか、益々難しくなってきた。一体、この子にはどういう名前をつければいいのだろうか。
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