第4話 突撃
気が付くと僕は仁和会総合病院のベッドの上にいた。銃で撃たれて気絶したあと、僕はここに緊急搬送されたらしい。肩の傷は手当されていたけれど、ズキズキと痛んだ。でもそれ以上に心が痛かった。アイを守ってあげたかった。もう少しだけでも一緒にいたかった。そんなことを考えていると僕はいてもたってもいられず、衝動的に病院を抜け出していた。
◆◆◆
武蔵野にある研究所。確証はなかったが、1つ大きな研究所があることを僕は知っていた。中央線快速電車で三鷹に戻った僕はその研究所に向かった。着く頃には夜になっており、研究所に向かう僕は研究所から帰る人たちと何度もすれ違った。その中の1人が何かを落とした。IDカードだった。僕は拾いあげ、落とし主に返そうとしたが、落とし主は気づかずに行ってしまった。僕は何気なくIDカードを見た。それは研究所のIDカードだった。
僕は研究所に向かって走り出した。
◆◆◆
IDカードのおかげで僕は研究所に潜入することに成功した。だがアイの居場所がわからない。そもそも本当にここにいるのかもわからない。僕があてもなく研究所をさまよっていると、頭の中に声が響いてきた。アイの声だ。
〝来ちゃダメ〟
「アイ! どこにいるんだ!」
僕は叫んだ。その瞬間、僕は背中に固い何かを押し付けられた。
「よく来たな坊主。たしかムサシだったか。歓迎するよ。だが妙な気は起こすな。いつでも殺せるんだ」
背後から話しかけてきた男は、背中により強く固いものを押し付けた。おそらく銃だろう。そう思った。
「……歓迎?」
「そうだ。アイが言うことを聞かないものでね。こちらも君を招待する予定だったんだ。自分から来てくれて助かったよ。さあ、アイに会わせてやろう。
◆◆◆
男に銃を突き付けられたまま、僕はある研究室に連れて来られた。そこにはガラスケースのようなものに入れられ、虚ろな目をしたアイがいた。
「おっと動くと……」
男が言うより先に僕はガラスケースに向かって駆け出していた。それがいけなかった。僕は右脚を撃たれ、その場にうつぶせに倒れた。
「アイ……!」
必死にガラスケースに手を伸ばすが届かなかった。
「さあI。君の力を使うんだ。さもないと」
男はさらに僕の左脚を撃った。僕はもう叫ぶことすらできなかった。
そのときだ。アイが突然大きく目を見開いた。
「ムサシにひどいことしないで!」
少女が叫ぶとガラスケースが砕け散り、あたりにあるパソコンやよくわからない研究機器が爆発していき、部屋中火の海になった。爆発は他の部屋でも起きているらしく、研究所全体が揺れていた。
研究員たちが逃げ惑う中、男はアイに銃口を向けた。
「この化け物が!」
しかし放った弾丸は男自身に跳ね返り、銃を破壊されてしまった。
「くそ!」
男は毒づくと、研究室から逃走した。アイは追いかけなかった。
「ムサシ、だいじょうぶ?」
アイが僕の上半身を持ち上げ、抱きしめながら尋ねた。
「アイ……」
僕も力なくアイを抱きしめた。
アイは僕を抱きしめたまま光始めた。その光が収まると僕の肩と脚の傷が癒えていた。
「……痛くない。アイがやってくれたの? アイ?」
さっきまで温かったアイの身体が急速に冷えていくのがわかった。
「アイ? アイーーーー!」
僕は燃え盛る研究室で冷たくなった彼女を抱いたまま、泣いた。
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