第3話 逃避行

 タクシーの中で南小谷(おたり)までのあずさを予約した僕は、アイを連れて立川からあずさに乗り込んだ。これで武蔵野から一気に離れることができる。僕はそう考えていた。しかし電車は八王子で緊急停車してしまった。


 こんな時に……。


 僕がそう思っていると、誰かがあずさに乗り込んできた。あの3人組の男たちだった。僕は急いでアイの手を引いて逃げようとした。でも……。


 ぱぁん!


 犬の鳴き声のような炸裂音が響き、続いて乗客の悲鳴が木霊した。そして僕は左肩に激痛を感じて膝から崩れ落ちた。左肩を見ると今まで見たことのない丸い傷から出血していた。銃で撃たれたと気づいたのはずいぶんあとになってからだ。


「I。いい加減にしろ。これ以上逆らうならその少年を殺す。たとえ私たちを殺しても無駄だぞ。エージェントはいくらでもいる」


 アイは脂汗と血を流す僕をちらりと見てから男たちを見た。


「わかった。戻る」


「それでいい。さあ、こっちにこい」


 アイは男たちについていく前に僕の耳元でささやいた。


〝ありがとう〟


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