第2話 アイの秘密
次の日の朝、激しくアパートのドアが叩かれる音で目を覚ました。少女、アイはまだ僕のベッドで寝ている。もちろん僕は一緒に寝てはいない。
朝早くからうるさいな。
僕はイライラしながら玄関に向かい、外を覗こうとしたが……。
そのとき! 突然ドアが開き、黒いスーツを着た男が3人入ってきた。突然のことに驚いた僕を突き飛ばした男たちはアイに向かっていった。
「見つけたぞコードI! 大人しく同行しろ!」
ベッドから上半身だけ起こしたアイはさめた目で男たちを見ていた。
「おまえたちいったい……!」
立ち上がった僕が男の1人に詰め寄ろうとすると……。
「うるさい!」
男は容赦なく僕の腹部を殴ってきた。あまりの痛みに僕は腹部を押さえてうずくまる。
「……! ムサシにひどいことしないで」
アイがそうつぶやいた瞬間、3人の男の身体が浮き上がった。
「ま、待て!」
男たちの情けない声もむなしく、浮き上がったその身体は開けっ放しのドアから放り出された。
「いこ」
アイは僕の手をつかむと引っ張って走り出した。何が何だかわからない僕は彼女に手を引かれるまま、走る羽目になった。
◆◆◆
走って走って、いや途中からはお腹を押さえながら歩いていると、いつの間にか井の頭恩賜公園についていた。僕たちは井の頭池の見えるベンチに座ってようやく一息ついた。しばらくは息を落ち着けるのに必死で気づかなかったが、歩いている間中アイに手を握られていた。そして今もだ。
「な、なあ、手を……」
「やだ」
即答だった。だから僕は仕方なく話題を変えた。
「なあ、さっきのやつらなんなの?」
「……」
アイはうつむき、僕の手を強く握りながらしばらく黙っていた。だがやがてポツリポツリと話し出した。
「わたしね。研究所から逃げ出してきたの……」
少女の語った話はつまりこうだった。彼女は武蔵野にある研究所で秘密裏に研究されていた超能力だった。しかし実験が嫌になり研究所から脱走をはかった。
超能力なんて嘘くさいと言いたいところだが、吉祥寺には元超能力者の大物が住んでいるという噂も聞いたことがあったし、何より朝の男たちの様子を見たら信じるしかなかった。
「……戻りたくない」
アイの手は震えていた。その手を僕は強く握り返した。
「逃げよう! あいつらのこないところまで!」
僕は少女の手を引っ張って立ち上がらせながら立ち上がった。そして瞬時に考えたこの辺りから早く逃げるにはどうすればよいか。思いついたのはあずさだった。
今度は僕が少女の手を引っ張って公園を出ると、丁度よくタクシーが来た。僕はタクシーを止めると叫んだ。
「立川に向かってください!」
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