第六話「水龍の神躰」

 虹色のバネは最初のカタツムリのような歩みが嘘のように、小さな体を目一杯に伸ばして、大きく跳ねながら虹を描いてどんどん先へ進む。蒼空そら琴葉ことはは全力で走り追いかけたがバネとの差はなかなかちぢまらなかった。バネは追いかける二人を待たずに、分かれ道を右へ左へと曲がりながら進んでいった。


「待ってー!」


 二人は高速で走るバネを分かれ道で何度か見失いそうになりながらも、何とか見つけて追いかけて行くと、大きな講堂前の広場に出た。

 

 バネは蒼空そらのウタの効果が切れたのか、カタツムリの歩みに戻って一歩ずつゆっくりと講堂へ向かっていた。講堂の入り口の横には「入学式々場」の立て看板が立っている。


「あそこが式場だ!」


 二人は講堂前の大階段を二段飛ばしでけあがった。大扉の横に立っていた男性職員は階段を駆けあがってくる二人を見つけると急かすように手招きをした。


「こらっ、遅いぞ君達! もうとっくに式が始まっているぞ! 早く中に入って席に着きなさい!」


 男性は声を抑えて二人を叱ると、大扉を人が一人通れる分だけ開けた。蒼空と琴葉が身を滑らすように中に入ると、三千人は入りそうな広い堂内は照明が落とされて薄暗く、ずっと奥にある舞台だけが明るく照らされていた。

 壇上だんじょうの真ん中には演台が置かれ、正装をした高齢の女性が、今まさに式辞しきじを述べている最中であった。堂内は静まりかえり、女性の張りのある声だけが響いていた。


 蒼空達はかろうじて足元が見えるほどの明かりしかない式場を職員に先導されてそろそろと歩いた。闇の中でつまずいてしまわないよう慎重に移動していると、ふと堂内に響いていた式辞の言葉が不自然に途切れた。

 違和感を感じた蒼空が壇上へ目を向けると、壇上の女性がこちらに目を向けていた。人の顔の判別もつかない明るさで、だいぶ距離があったはずなのに、なぜか目が合った気がした。

 言葉が途切れたのは一瞬で、女性は何事もなかったかのように式辞を続けた。 気のせいか、と蒼空が思ったところで、先導していた職員が抑えた声で二人に空き席を示して座るように促した。


「何とか間に合ったね」


 席についた琴葉が周りを気にして小さな声で囁く。蒼空は小さく笑ってうなずきかえした。

 壇上では女性の式辞が続いていた。老婆とも言えるほどの年齢に見えるが、背筋がしゃんと伸び、品のあるりんとした雰囲気は高い地位にあることを思わせる。厳しさの中に優しさを感じる視線が新入生全体を見渡した。


「新入生の皆さん。これまで人生の中で、楽しいことや嬉しいこと、時には悲しいと思ったことが沢山あったことでしょう。そして家族や友人を大切に思う気持ち、未来の自分を思い描き心を躍らせる気持ち。全てを大切にして、これからの三年間、何を学び、何を得て、何を行うか。じっくりと考えて、成長してください。貴方達の入学を祝福し、歓迎致します。これをって式辞と致します」


 女性はゆっくりとお辞儀をすると、静かに壇上を降りた。式場にサァァと波音のような拍手が響き渡る。


「学長、月島吉乃つきしまよしのからの式辞でございました」


 拍手が収まると場内には落ち着いた調子のアナウンスが流れた。


「新入生宣誓せんせい。新入生代表、中務なかつかさ真砂経まさつね君」

「はい!」


 司会の呼び出しに応えて、前列の方で手がぴっと挙がった。指の先端にまで力が入りまっすぐに立てられた手が下ろされると、代わりにガタリと音を立てて少年が立ちあがった。

 少年は緊張しているらしく、全身に力が入り歩き方がぎこちない。左右同じ側の手足を出してぎくしゃくと舞台へ向かう。


「あ! ねぇ、さっき門の前で鳥を撃ち落とした人じゃない!?」

「ほんとだ」


 壇上に続く階段を登る少年は、確かに先ほど門の前で出会った少年だった。琴葉は先の出来事を思い出して顔をしかめた。

 真砂経は固い表情で演台の前に立つと一礼し、ふところからたたんだ紙を取り出し開いて読みはじめた。


「宣誓! 私達、新入生一同は雲雀倭歌ひばりやまとうた学園の一員として、これからの世界をににゃうべく、べ、勉学に励み、ひ、日々精進することをここに誓いますっ!」


 真砂経は、途中噛みながらも何とか宣誓文を読み終えた。勢いよく一礼して上げた顔は、緊張のためか失敗のためか、朱に染まっていた。


「新入生代表、中務真砂経くんでした」


 アナウンスに合わせて場内に拍手が音が響き渡る。壇上を降りる真砂経まさつねの表情は悔しさを滲ませていた。


「真砂経、新入生代表なんてすげーな!」

「途中噛んでたけどね!」


 感心している蒼空を横目に、不満げな表情で琴葉は悪態をつく。


「次に、在校生による新入学生歓迎の儀、及び教材の授与じゅよを行います。準備のため、しばしお待ちください」


 アナウンスが終わると舞台上の明かりが消えて、式場は暗闇に包まれた。闇の中で全体がざわめき、舞台の上ではガタガタと何かを動かす音や、人の動く気配がしていたが、しばらくすると音が止み、静かになった。ざわめいていた式場も何かが始まる気配を感じて静まりかえる。


 しんとした暗闇の中に、一筋の高い笛の音が長く響き渡った。笛の音に誘われたように舞台の天井から小さな光が一つ降りてくる。それを追って二つ、三つと光が増えて、合計五つの光が舞い降りる。

 五つの光はゆっくりと舞台に降りてくると宙で止まり、静かに大きく広がりはじめた。するとそこに神楽鈴かぐらすずを捧げて座礼する五人の巫女が現れた。


 笛の音が止み、舞台に静寂が満ちる。


 寸陰すんいん、動きを止めた舞台に、しょうの音がゆったりと流れ出す。笙の音で目覚めたかのように巫女たちがゆっくりと立ちあがった。そこに篳篥ひちりき龍笛りゅうてき旋律せんりつが加わり、舞台にはおごそかな雰囲気が漂う。真っ白な千早ちはや緋袴ひばかま姿の巫女たちは音楽に合わせて悠然ゆうぜんと舞いはじめた。


 シャン!


 神楽鈴を高く響かせた巫女たちが声を揃えて唱歌する。


 『清明せいめいの教えの庭の栄典えいてんに亀とふ千羽鶴 巫女の神楽かぐら新玉あらたま学侶寿がくりょことぶく 堂如どうごとし』


 シャン!


 『宝亀ほうき 舞楽ぶがくたいとなり わたの底より舞い上がる群れゐるいおは水龍の神躰しんくとなりて わた中の』


長歌ながうた……?」


 舞台を見つめていた蒼空は、短歌とは違う節の歌を聞いて不思議そうに呟いた。

 舞台から強い詠力があふれ出て、離れた蒼空の席まで届く。その力強さ、重厚さに全身の毛が逆立った。


 『宝亀水龍ほうきすいりゅう 千羽鶴 輪舞りんぶに連ね銀鱗ぎんりんは底に舞い降る いななきに合わせ学侶の贈物たまものに形を変へる 神獣の』


 シャン!


 『海神舞わたつみまいのために祝の品を学侶に贈りて』


 長歌をうたい終えると巫女たちは神楽鈴をひと振り鳴らし頭上に掲げて動きを止めた。すると、舞台全体がまばゆく光を放ち、複雑な模様の詠力陣えいりょくじんが浮かびあがった。

 舞台はゴゴゴゴと低い地響きを鳴らし小刻みに揺れはじめる。振動は新入生たちの座席にまで伝わり、小さな悲鳴や驚きの声でにわかにざわめきたった。


 舞台をおおった詠力陣が一層強く光を放つと、巫女たちが立つ床が持ちあがり、大木のような太い足を持つ巨大な亀が現れた。

 長歌で現れた巨大な亀は五人の巫女達を広い背に乗せてふわりと浮かびあがる。そのまま、まるで泳ぐように天井近くまで舞いあがった。


 亀は長い尾をゆらゆらと揺らし、座席の上方を大海を泳ぐように飛び回る。尾は青く光り、軌跡に淡く光る水泡を残して天井を覆ってゆく。

 頭上に広がる幻想的な光景に客席からは感嘆かんたんの溜め息が漏れた。


 水泡に覆われて海面のような天井を亀は悠々ゆうゆうと泳ぎ回る。その背で巫女たちがシャラリと神楽鈴を鳴らす。するといくつかの水泡がパチンと弾けて小魚へと変わった。

 シャラリ、シャラリ。亀の背を舞台に巫女たちは舞いつづけ、次々に水泡を小魚へと変えていく。

 いつしか小魚たちは集まりはじめ、キラキラと白いうろこきらめかせて大きなうねりを作った。

 白く光るうねりは一塊いっかいになると大きく波打ち、ひと際強く光を放つと大きな龍へと姿を変えた。龍は長大なその身を重々しく波打たせると、ひと声うなりをあげた。

 突如現れた巨大な龍とその咆哮に、客席からは大きな歓声があがった。


 蒼空と琴葉も初めて見る壮観な景色にすっかり目を奪われていた。


「すげぇな! これが長歌かー!」


 蒼空は感嘆の声を出す。


「私もこんなに派手なのは初めて!」


 琴葉は小学生の時に行った社会科見学を思い出していた。工場では長歌が使われた工藝品こうげいひんが生産されていたが、あの時はまだ歌に興味がなく、淡々と繰り返される作業の流れを遠くからつまらなく眺めていただけだった。

 長歌を一般人が日常生活で詠うことはまれで、実際にウタわれている様を目にする機会も少ない。効果は強大だが、短歌に比べて手順が複雑で難しく、準備にも時間がかかる。そのため、一般的にはあらかじめ装具や工藝製品に埋めこまれたものを使うことがほとんどだった。


 新入生たちの頭上では巫女らを乗せた亀が巡り、龍の周りを泳ぎ回る。亀の尾の軌跡が残す水泡から生まれた小魚たちはいくつかに分かれて群れを作ると、今度はくるくると円を描いて泳いだ。巫女たちが神楽鈴を鳴らすと、回る群れは一瞬眩い光を放ち、今度は鶴が現れた。鈴の音に合わせて魚の群れは次々に鶴へと姿を変える。生まれた鶴たちは大きく羽を広げると天井付近を飛び回った。


 亀の背で、巫女の一人が神楽鈴から持ち替えた扇子を大きく仰いだ。すると、風が起きて水泡を乱し、龍の体から鱗が一つがれ落ちた。キラキラと光を反射しながら落ちる鱗をスイと横から飛んできた鶴のくちばしが捉えた。鶴は鱗を咥えたまま天井をぐるりとひと巡りすると、大きな円を描きながら降下し、一人の生徒の頭上に来ると、ぽとりと咥えていた鱗を落とした。

 女子生徒が突然落ちてきた鱗を受けとめると鱗はぼわっと煙を出して、ひと抱えほどの風呂敷に変化した。驚いた少女が包みを開けると、中には本など教材一式が入っていた。


 少女の周りの生徒たちがそれを見てどよめき声をあげる。頭上では鶴たちが飛び交い、次々と剥がれ落ちた龍の鱗を咥えて、新入生の元へと運んだ。

 受けとった生徒たちは喜びの声をあげ、まだ受けとっていない者たちは立ちあがって、上へと手を伸ばした。

 琴葉も鶴が頭上に飛んでくると手を伸ばして鱗を受け取った。


「やった! 蒼空君、取ったよ!」

「おー! やったな!」


 無事受けとった風呂敷を抱えて隣を見ると、ちょうど蒼空も鶴が落としていった鱗を受け取ったところだった。二人で顔を見合わせて笑いあう。


 全ての学生の元へ荷物を運び終えると、飛び交っていた鶴たちは光の粒子になり消えた。ゆったりと波打っていた龍も惜しむように深くえると、サァァと音を立てて大量の光の粒となり生徒たちの上に降り注いだ。


 亀は巫女たちを舞台に送り届けると、光を放ち舞台に沈むように姿を消した。頭上を覆っていた水泡はいつしか消えて、元の木組みの天井へと戻っていた。

 舞台に立つ巫女たちの一人がついと一歩前に出ると、ゆっくり一礼して話しはじめる。


「皆さんはまだ小さな魚です。しかし、いずれは大きな龍となり、高く空へ昇っていくのだという想いを込めて長歌を詠みました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。 共にこの学園でウタを学んで行きましょう」


 巫女たちが揃って頭を下げると、式場は大きな歓声と拍手で湧いた。鳴りやまない拍手の中で巫女たちは頭を上げると、一列に並んでしずしずと舞台そでへ去った。

 巫女たちが去ったあとも新入生たちの興奮は冷めやらず、ざわついている場内にアナウンスが流れた。


「在校生による新入学生歓迎の、及び教材の授与でした。それでは皆様ご起立きりつください」


 アナウンスを聞いて新入生と後ろに控える在校生、それに職員達全員が椅子から立ちあがった。


「以上をもちまして、雲雀倭歌学園入学式を閉式致します。一同礼」


 アナウンスに合わせて皆一斉に頭を下げた。礼を終えて身を起こすと、どこからともなく拍手が湧き起こり式場全体が温かい空気に包まれた。


「新入生は本日はこのまま解散となります。速やかに退場してください。学生寮に入る生徒はその場に待機し、教師の指示に従い各自移動してください」


 アナウンスが退場を促すと、半分程度の新入生たちがばらばらと立ちあがり出口へ向かう。

 移動する生徒たちで周りが騒がしい中、琴葉は隣に座っている蒼空に問いかけた。


「蒼空君は学生寮に入るの?」

「あぁ、そうだよ。家が遠いからな」

「そうなんだ、私も寮に入るよ。通えない距離じゃないんだけど、寮に入った方が楽しそうだしね!」


 琴葉達が話していると、教師が数人やってきて寮への誘導を始めた。

 入寮する生徒達に声をかけ仕切ろうとしているが、かなりの大人数のため苦戦しているようだ。誘導する教師の中に、見知った顔を見つけ琴葉が立ちあがった。


「あ! バネの人!」


 琴葉が人混みを掻きわけて近付くと、先ほど入学式場がわからず迷っていた時に出会った女性がばたばたと生徒達の誘導を行っていた。


「あの! さっきはありがとうございました!」

「あら、さっきの子たちですね! 無事辿り着けたみたいで安心しました」


 女性は琴葉とその後ろにいる蒼空に気付くと安堵した表情を向けた。


「秋村先生! 何やってるんですか! 早く寮生の誘導をお願いしますよ!」

「わわっ! すみません!」


 年配の男性教諭らしき人物に怒鳴られて秋村と呼ばれた女性は肩をすくめた。そんな女性を新入生二人は意外そうに見つめた。


「先生だったんですか!?」

「えへへ、一応そうなんです……」

「そーか、だからウタに詳しかったのか」


 蒼空が得心したように呟く。


「新任なので学園のことはあんまり詳しくないんですけどね」


 秋村は照れたように頭を掻いた。

 自宅通学の生徒達があらかた帰った式場で、年配の男性教師が残った生徒達に声をかけた。


「学生寮に入寮する生徒は一旦講堂外に集まり、班ごとに移動する! 式場外まで移動!」


 年輩教師の号令で生徒達がぞろぞろと出口に向かう。

 蒼空と琴葉も誘導する秋村の隣を歩く。


「教材もちゃんと受けとれたようですね。長歌は見られましたか?」


 秋村は歩きながら、蒼空達が抱えている包みに目を留めて問う。


「長歌って思ったよりすげぇなーって思いましたよ。初めて見たんで」

 

 長歌の光景を思い出すと蒼空は、自分もあんなふうに短歌が詠みたいと、心が震えるのを感じた。


「ね! ほんとすごかったよね! でも一枚の鱗が風呂敷包みになるなんて、ウタってすごすぎじゃない?」


 それに琴葉も続く。


「ふふ、そうでしょう。あれは生徒たちが一ヶ月かけて準備して作ってるそうですよ」


 女性は自分のことのように嬉しそうに微笑んだ。


「一ヶ月か。うーん、今の俺じゃちょっと厳しいか……」

「でも、龍の鱗が包みになるなんて、一体どうなってるの?」


 琴葉は抱えている風呂敷包みを不思議そうにペタペタと触った。


「えっと、それはですね! 恐らく用意した風呂敷包みの教材を、事前にウタで鱗に変えていたんだと思われます! それを長歌で元に戻したんですね!」

「なるほどなー」

「???」


 秋村の説明に蒼空は納得したように頷くが、琴葉にはまったく理解できなかった。


「あの、それって……」


 講堂外の大階段を降りながら琴葉が続けて質問しようとしたところに、前を歩く生徒たちが何かを避けるように横に逸れて列が割れるのが見えた。

 差しかかり下を見ると、階段の一番下で虹色のバネがもぞもぞと動いていた。


「見て! さっきのバネだ!」

「おー、まだいたのか」


 琴葉の声に秋村は驚き、蒼空も立ちどまって見る。

 小さな体を伸ばして懸命に階段を登ろうとするが、段差に引っかかり登れない様子。段差に頭を打ちつけては戻るを繰り返していた。


「あー! うちの子がとんだお見苦しいところを……」


 秋村は恥ずかしげに謝るが、気にせず琴葉は虹色のバネを優しく掬いあげた。


「ずっと頑張ってたんだね……」


 バネを見つめながら拳を握りしめると、琴葉は決意したように力強く宣言する。


「私、決めた! ウタはまだまだだけど、このバネみたいに一歩づつ頑張るよ!」


 蒼空と秋村は微笑んで頷いた。


「そうだな、俺も頑張るぜ! ……って、ん?」

「ん??」

「琴葉……頭のてっぺんから……それ何?」

「え?」


 琴葉の頭頂部の周りを五羽の小さな鳥が不器用にぱたぱたと円を描いて飛んでいた。


「ぇええっ!? やだ、何これっ!」


 琴葉は慌てて手で追い払うが、小さな歌儡かぐつ達はよろよろと手を避けるだけで逃げることなく飛び回っている。

 周囲の生徒たちも琴葉の頭上の鳥に気づいて笑い声をあげた。


「恥ずかしい……」


 琴葉は鳥を追い払うことを諦めて恥ずかしそうにうつむいた。

 蒼空は小鳥たちをじっと見つめると、もしかしてと呟いた。


「もしかして、ウタの練習をした時のか……」

「えぇ!? 何で今頃!?」


 ー沢山の小鳥が飛ぶよパタパタと 絶対飛ぶぞ! 私の決意


 蒼空は入学式の前に練習で琴葉が詠んだウタを思い出した。


「そうか。さっきの琴葉のウタは『決意の心』がトリガーになってたってことか……」

「蒼空君、冷静に分析してないで、これ消してー!」

「わわわ……。えーと……」


 二人でばたばたと鳥を追い払うが、鳥達は気にせずくるくると琴葉の頭上を飛び回りつづけた。


「なるほどぉ、琴葉さんの強い決意を示しているんですねぇ」


 秋村は感心した様子で新入生二人を眺めていた。


「早くこれ消してよぉーー!」

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