第71話 光速の指輪とロザリアの才能

翌日に出発の予定だったのだけどローディアスさんがもう一日ロザリアと過ごしたいとワガママを言い出して、結局その次の日に出発となった。


「ロザリア……無事に帰って来るのだぞ……」


と大泣きしてやがる……だったら自分で煽るんじゃないよ!!

流石にロザリアも閉口した様で顔を真っ赤にしながら「パパはもう泣かないの!!恥ずかしいでしょ!」なんて怒ってるし……。


「じゃあ行くわよ。もういい加減になさい……」


冷ややかな目で兄を見据えるブリジッタさん……目が怖いです……。


「それじゃあ枢機卿、メルローさん、本当にお世話になりました」


「道中ご無事を……無理はなさいませぬ様に」


「ローディアス殿、色々と教えて頂き感謝する……ありがとう」


「うむ……お前達も無事に故郷に辿り着ける様に祈っておるぞ。太陽神の御加護があらんことを……」


最後の最後で枢機卿らしい感じを出して居るが既に時遅しって感じだね。全く残念な枢機卿だったよ!


屋敷の皆に見送られて俺達は出発した。料理長が弁当を差し入れしてくれたのが嬉しかったなあ……教えた薬草料理を広めて下さいね。


「もう……パパったらあんなに取り乱して……儀式の時なんかホントに酷かったわ!もう!」


ロザリアはカンカンに怒ってるし……まあ、アレは親バカ極まった感じだもんな。

ブリジッタさんも流石に頭に手を当てて一言も無い。


「まあ、そう言うな。一人娘の男親はあんなもんだぞ」


「それだけ愛されてるって事さ。まあ、ちょっと過激だけどね〜」


「でもでも!!」


「まあまあ……もうしばらく会わないのだから少し忘れて上げるといいよ」


「むう……」


ロザリアは膨れっ面だがまあそのうち機嫌も治るだろう。何せウチのファイナルウェポンのキラ様がロザリアの近くに居るからな。


さて、残念な枢機卿の事はさて置き、今後の道程の話をする事にした。


「ダイロンの州都カルトスには北東に向かった先にあるわ。2週間も有れば着くわよ」


「その間村とかは無いのですか?」


「うーん……二つあるのだけど道程が悪いからそのまま行った方が早いわよ」


「じゃあそうしましょう。食料も水も沢山ありますからね」


「ラダル君と一緒だし食事の事は全部お任せで!」


「了解です。任せて下さい」


「カルトス以降はどの様に?」


「最終的には千年洞窟の手前の村カンロンに向かう事になるけど、ちょっと道程は厳しいわね」


「厳しいとは?」


「カンロンに向かう途中にある“アリドー大森林”を抜けるのが先ずはひと苦労すると思うわ。その後に控えてるのは“ヅーラ渓谷”此処もかなり厳しいわね」


「魔物が多いとか?」


「もちろんそれもあるけど……この二つの場所には方向感覚をおかしくする結界が張られていて、通る者を惑わすのよ」


「ソレってまさかなんですけど……伝説の何某が居るとかそういう事です?」


「あら、良くお分かりで。アリドーには昔からエルフの伝説が有るのよね。ヅーラにはドワーフの伝説が有るのよ……まあ、誰も見た事は無いのだけどね」


ファンタジーキタコレ!!王道中の王道!エルフとドワーフかよ!!逢いてえなぁー!!


《両方共居るの》


「マジか!!」


《でも凶暴だから関わらない方が良いの》


「き、凶暴……だと……」


《エルフはテリトリーに踏み込んだ者を絶対に許さないの》


「じゃあドワーフは?」


《いつも酒を飲んでるから凶暴なの》


なるほど……酔って虎になるってアル中かよ!!まあ、話を聞くだけでろくでもない感じだな。まあ、触らぬ神に祟りなし……くわばらくわばら……。


「じゃあ関わらない方向で!!」


「本当に居るならちょっと見てみたいかもね〜」


「私は見たいわ!!」


「オレはドワーフの作ったハルバートが欲しいな……」


君たちは何かのチャレンジャーかな?これが出来たら100万円とかの?ってやかましいわ!!


《無謀な連中ばかりなの》


「何か明るい未来が見れる方法を考えて欲しいわ……マジで」


「まあ、行ってみてからのお楽しみね!大体が見た事無いんだから」


「夢があって良いわ!!」


「一体どんなハルバートだろうか……」


とりあえずアシュのおっちゃんはハルバートから離れねぇかな!!

とにかく『眼』には絶対にエルフやドワーフに近づいたりしない様にキツく言っとくぞ。お前が下手を打たなきゃ大丈夫だからな!!


そんなこんなでマトモな俺と無謀な連中の一日目は無事に過ぎた。


キラは遺跡で魔物を捕食出来なかったのが不満だったらしく、旅の空では思い切り狩りと捕食を楽しんでいた。

良かったねキラ……でもさ、満足気に戻って来た血ダルマのお前を洗うのは俺の仕事なんだよ……もう少し自重して欲しい……。


それからの道のりは特に問題も無く、まるでキャンプでも楽しむ様に無事に州都まで進む事が出来た。


州都に着くとそのまま宿屋に向かい宿を取った後、俺は何か売れそうな物を探しに街に出た。何故かロザリアが俺に着いてきた。

武具屋を中心に回ったら、とある武具屋で遺跡のアイテムを見つける。


『光速の指輪』

クラス︰C 属性︰光

魔力を入れると使用者の速度を上げる。速度は使用者の光属性の深度と理の力の理解度による。光属性との親和性が高く、光魔法の使用者以外は装備出来ない。


「ロザリアは光魔法使えたっけ?」


「もちろんよ!私はローディアスの娘なのよ!」


「そうだったな。おっちゃん、この指輪いくら?」


「20大金貨……」


「おいおいデュラハンスレイヤーにぼったくるつもりか?」


「はぁ??デュラハンスレイヤーだと??」


「そうだよおっちゃん。何ならココの州王様に挨拶に行って『ぼったくられました』と話しをして来ようか?」


「ちょっとまて……確かにデュラハンスレイヤーの片割れは子供でデカい杖を……本物か??」


「だから言ってるでしょうに!」


「ス、スマンな……5大金貨で……」


「え〜ぼったくろうとしてダメだったからって定価で売るの?……2大金貨で」


「わ、分かりました……それで……」


俺は項垂れてるおっちゃんに3大金貨を渡す。おっちゃんは驚いた顔をする。


「あ、あの……2大金貨では……」


「そう言いたい所だけど、まあ出来心なんだろうしこの1大金貨は俺の気持ちだよ。受け取ってくれるよね?」


「さ、流石はデュラハンスレイヤーだ!さあ、持ってってくれ!!」


何かおっちゃんは感激してるみたいだけど、実は定価よりも2大金貨安く買ってんだよな……。まあ、こういうのもちょっとしたフェイクなんだけどね。


俺は店を出ると指輪をロザリアに渡した。


「コレはローディアス枢機卿に良くしてもらったお礼とロザリアの月と星の儀式が無事に終わったお祝いだよ」


「わ、わ、私に??」


「これから先も危険がいっぱいだからねぇ。こういうのは持ってた方が良いんだよ」


「そ、そう……あ、ありがとう……」


そう言って真っ赤な顔のロザリアが指輪をはめると魔力の雰囲気が少し変わった。


《ロザリアは理の力を理解しないとそれを使いこなせないの》


「理の力?魔力の事?」


「そう、ロザリアだと光魔法の魔力かな。光をイメージして魔力の事を考えると良いよ」


「光を……」


するとロザリアから金色の光が溢れてくる……おいおい……マジかよ?!


《ロザリアは天才なの……》


ロザリアは俺の目で追えないほど高速で走ったようだ。


こりゃあスゲェ!!

しかし、魔力を使い過ぎて直ぐに動きが止まった様だ。


「ハァハァ……コレ凄いけど……凄い疲れるわ……」


「最初から無理しちゃダメだよ。慣れるまでは少しづつ移動しないと。それに敵の攻撃を避けるならさほど動かなくても良いんだ」


「ハァハァ……避けるだけじゃ……つまらないじゃないの!」


「攻撃はまだ考えなくても良いよ。とにかく敵の攻撃を避ける事。それが出来る様なれば次が攻撃だからね」


頬を膨らませて不満タラタラのロザリアだったが、キラ様のフォローで何とか気を紛らわせる事に成功した。


少し食堂に立ち寄って休みがてら食事をしたりしてから宿屋に戻って来るとブリジッタさんが俺達にこう言った。


「あら、デートはもう終わりなの?」


「デ、デ、デートなんかして無いんだからね!!」


真っ赤な顔で全否定してるロザリア。何この可愛い生き物は。


「え〜、だって指輪まで買って貰ってソレは無いんじゃないの?」


おお、流石はブリジッタさんだ。指輪をしっかり発見してたのか。ロザリアは指輪を隠しながら更にアワアワしてる。


「ロザリアに似合うと思ってプレゼントしたんですよ。とっても似合ってるけどなぁ〜」


俺がダメ押しすると「もう!知らないっ!」って宿の部屋に逃げ込んてしまった。アララ……ちょっとからかい過ぎたかな……。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





いつもお読み頂きありがとうございます。

今回はロザリアとのデート?回でした。

どうやらロザリアは光魔法の天才だった様です。

この先の成長が楽しみです。


PV8万とフォロワーさんが700人を超えました!本当に嬉しいです!感謝申し上げます。

これからも何卒応援宜しくお願い致します。

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