第72話 エルフのテリトリー
「ウフフ……可愛い姪っ子ねぇ〜。ラダル君ありがとう……あの指輪は遺跡の?」
「流石だなぁ〜やっぱり気付いてました?アレは『光速の指輪』っていう速度を上昇させる指輪ですよ。それにしてもロザリアは凄いですよ、もう使える様になりましたからね!」
《ロザリアは天才なの。でも経験と光属性の深度がついて来てないの》
「へぇ〜天才ねぇ……確かに昔から覚えの良い子ではあるけど……しかし凄い物を見つけたわね!良いの?高かったでしょ?」
「いえいえ、しっかりマケさせたし枢機卿には良くして貰ったお礼とロザリアの“月と星の儀式”のお祝いも兼ねてですから」
「ありがとうラダル君。そう言う気持ちは嬉しいわ。ローディアスに変わってお礼を言うわね」
「いえいえ……それにしても良い指輪を手に入れましたよ。今のロザリアはブリジッタさん並に早く動けますよ!スタミナと魔力が持たないけど」
「えっ!そんなに??そっかぁ……あの子も凄いわね……流石はローディアスとキャンディーの娘ねぇ……血は争えないわ」
「キャンディー?ロザリアのお母さんですか?」
「ええ、私達と同じ『不死鳥の翼』のパーティーメンバーで“神速のキャンディー”と呼ばれた光属性の魔剣士だったのよ。ロザリアを産んで直ぐに流行病で呆気なく死んでしまったわ……キャンディーもロザリアの事は心残りだったでしょうね」
「神速……それじゃあロザリアは母親の血の影響を受けてるのでしょうね」
「きっとそうね。私よりも速かった彼女と私は『光と雷の瞬殺コンビ』なーんて言われてたからねぇ……」
何その凶悪な二つ名は……恐過ぎるんですけれど……。
「まあ、とにかくロザリアには攻撃をかわす訓練をして貰った方が良いかと……本人は避けるだけじゃつまらないとか言ってましたけど……」
「そうね……あの子の性格じゃあ避けるだけは嫌がるかもね……」
「そうかあ……困ったなぁ……」
するとアシュのおっちゃんが外から帰って来たので相談してみた。
「それならオレが光魔法を少し教えてやろう。攻撃魔法もいくつかあるしな」
「そうだった!アシュのおっちゃん光魔法使えたんだよね!」
「ええ??そうなの??」
「まあ、魔法はほとんど使わんしな。知らぬのは無理もない」
「アシュトレイは相当な魔導師なんでしょ?何で魔法を使わないかなぁ〜」
「ハイ、ブリジッタさん……それはアシュのおっちゃんには禁句ね。どうせ『ハルバートで戦う方がカッコイイだろ』って言うだけなんで」
「だってカッコイイだろう??」
「……ハァ……何か色々と気の毒な人ねぇ……」
ブリジッタさんは呆れた様に生温い目でアシュのおっちゃんを見ている。まあ、普通の人ならそう言う風に思うわな……。
「じゃあアシュのおっちゃんにロザリアの事頼んで良いかな?」
「うむ、任せておけ!」
「アシュトレイ……くれぐれも変な武器の事を教えないでね……分かった?」
「お、おう……任せておけ……」
ブリジッタさんの圧が凄い……確かにアシュのおっちゃんみたいになるとロザリアがとんでもない事になるかも知れん……コレ先生を間違えたかな?でも現状、光魔法はアシュのおっちゃんしか使えねぇからなぁ……。
若干の怖さはあるが信じてアシュのおっちゃんに任せるとしよう。
次の日早々に俺達は出発する。
理由は怖いもの知らずの三名が“アリドー大森林”と“ヅーラ渓谷”に早く行きたいと駄々をこねた為だ。全く……この人たちの気が知れない……。
昨日の内に『眼』には全力で阻止するように言ってある。余計な事は絶対にするなよとね。
旅すがらアシュのおっちゃんはワンツーマンでロザリアに光魔法を教えていた。傍目から見ててもロザリアの才能は良く分かる。とにかく覚えが良い……アシュのおっちゃんも教えるのは上手いと思うのだが、それ以上にロザリアの理解度の高さが際立っている。
初日に『光弾(ライトバレット)』を使える様になって、3日もしないうちにその上位の『光線(レーザービーム)』の魔法を会得した。
流石のアシュのおっちゃんも驚いていたからな……正に“天才現る”って奴だな。
1週間もしないうちにキラと魔物狩りに出掛けて倒しまくっていたからね。
まさかそれが仇になるとは思わなかったケドね……。
それから4日後にようやく“アリドー大森林”に到着した。そこでもキラとロザリアは魔物狩りを続けていた。『眼』と俺は方向感覚を狂わせられない様に慎重に歩を進めていたのだが、アリドー大森林に入って3日目に事件が起こった。
その日もキラとロザリアは魔物狩りを近くで行ってたのだが、逃げた魔物をロザリアが追いかけてしまったのだ。それを追いかけたキラと共に行方が分からなくなってしまった。
俺は【エナジードレイン】を使って魔物をまず追った……だがその魔物が姿を消してしまっていた。そして二人の魔力も全く感知出来ない。だが俺とキラとは眷属としての繋がりが有る……それを使って二人を探す事にした。
それは超感覚とも呼べるモノで正確に眷属の居場所を突き止める事が出来るのだ。
三人と『眼』は急いで超感覚を頼りに二人を捜索した。
《この先はエルフのテリトリーなの》
「仕方ない突破するよ」
《揉め事になるの》
「ロザリアとキラを助けるならエルフ上等だ」
俺は構わずにそのまま超感覚に従う。
すると周りに何かが集まって来た……これがエルフか?凄い魔力だな……こりゃあマズイか?俺は仕方ないので昔ウッドランドでゴンザレス隊長がやったヤツを使う事にした。
「おい!ソコでコソコソしてる奴ら!!ウチの仲間を返せばこのまま帰ってやる!!返さなきゃこのまま迎えに行くぞ!!すぐさま返答しろ!!」
俺の魔力で増幅した声を聞いた魔力持ち達が一瞬動きを止めた。
が、そのまま此方に向かって来た!しかも殺気を持ってだ。俺はその全てに【エナジードレイン】を発動した。そして『溶岩弾(マグマバレット)』を発射した。それと同時にアシュのおっちゃんとブリジッタさんが敵の方に飛び込んで行った。
俺の『溶岩弾(マグマバレット)』で倒れたのは二人。まだ生きている。
ブリジッタさんは物凄いスピードで駆け抜けてやって来たヤツらを次々と戦闘不能にしている。
アシュのおっちゃんも何人かは戦闘不能にしてる。
俺は近くまで来た奴らを『千仞』で動きを止めた!そして『溶岩弾(マグマバレット)』で武器を弾き飛ばしてバットアックスの刃じゃない方の金槌で手加減して殴る。
「お前らウチのモンどうしてくれたんだ?返答次第じゃお前らの仲間ごと潰すぞ?ああ??!!」
コイツら間違いなくエルフだ。例の耳の尖ってる奴らだからな。
「……我らの縄張りに入って来たのが悪い……」
「ほう、そうかい。間違って入った奴が悪いと言うんだな?ならばコッチもやりたい様にしよう。俺は故郷では魔法兵だったから村の一つや二つは全滅させて来た。俺は仲間を襲う奴らには誰でも容赦はしない……全滅だ。それを考えた上で返答をしろ……仲間を返せ。今ならまだ間に合うぞ?」
「俺達がそんな脅しに乗るとでも思ったか?」
「そうか……仕方ないな。後悔しても知らんぞ……」
俺はカバンからレブルのマントを取り出して装着した。そして、腕輪の赤く輝いているのを確認して静かに発動した……。
「『血魔法』!!」
その瞬間に俺の魔力が一気に上昇した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
エルフ戦の開幕です。
この土地のエルフは何故これ程凶暴なのでしょうか?
応援沢山頂いております。
本当に感謝申し上げます。
何卒よろしくお願いいたします。
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