第68話 もうひとつの『眼』現る

その泉の前に俺達が到着すると『眼』がその泉に向かって話し掛ける。


《もう隠れてないで出て来るの》


すると泉の中から水面を全く揺らさずに丸い球体が出て来た……真ん丸だ。外見は『眼』の感じに似てるが、何と言うか『眼』とは異質な何かを感じる。


《お久しぶり……良く無事で居たわね……バラバラにしてあげた筈なのにね》


《我はそう簡単に停止しないの》


するとその真ん丸から眼が出て来た!『眼』と同じ形である。


《どうやら完全には戻って無さそうね。其方が新しい主なの?……随分と気持ち悪いわね》


《主は歪なだけなの》


俺はちょっとムカついたので【エナジードレイン】を真ん丸に発動してやった。


《!?それは……何故生きてる貴様が使えるのよ?!》


「黙れ真ん丸……おめぇは喋り過ぎだ。『眼』の敵なら俺の敵だ。そこら辺分かってんだろうな?」


《ふーん……中々面白い主ね……ちょっと馬鹿っぽいけど》


《主は馬鹿じゃないの。頭は良い方なの》


《まあ、どっちでも良いわ。私は私の役目を果たすだけ。また邪魔するならその時は前と同じ事になるだけよ》


《お前は乱暴過ぎるの》


「なら次はお前がバラバラになれよ!!」


俺は金槌をフルスイングで真ん丸に叩き込んでやった!インパクトした瞬間バラバラ吹き飛んだ真ん丸!ざまぁみろと思ってたら直ぐにバラバラの破片がつむじ風の様に集まって元に戻った。マジか!


《……中々過激な主だわね。まあ今回は顔見せだけだしこの位にしておくわ》


《お前はあのようなくだらない事に拘るのは辞めるといいの》


《くだらない?……前も言ってたわね?でも今回は違うわよ……》


すると真ん丸はそのまま天井の所に止まったかと思うと高速回転しだした。


《次に会う時は妾の主を見せてあげる……》


そう言い残すとそのまま真ん丸は姿が段々と薄くなりそのまま消えてしまった。


「おい……あの真ん丸は一体何なんだ?」


《アレは我と同じ『眼』なの》


「お前はバラバラにされたって言ってたが?」


《あの時は不覚を取ったの》


「色々と詳しく話せよ」


《……まだ主は知るレベルに達していないの。これ以上は我の権限では話せないの》


むう……こうなるとコイツは絶対に話さないからな……チッ!

だがあの真ん丸は『眼』の敵なのだろう……そして真ん丸が仕えてる主が居る……そしてソイツに一体何をやらせるつもりなのか?


「ラダル君、何か面倒に巻き込まれたみたいね?」


「ん〜……巻き込まれたのかも分からないのよね……コイツ喋らねーし」


「『眼』ちゃん、ラダル君にはキチンと話さないと駄目よ。仲間なんだから」


《……いずれは話す事になるの》


「もう……頑なねぇ……」


「まあ、コイツは何時もこんな感じだから良いですよ。さて、先に進みますかね」


《その泉の水を持って行くの》


「ん?コレか?何なのこれ?」


《アレはこの泉の水を持ち帰ったの》


俺は泉を覗き込む……スゲェ匂いがするなおい!


「コレ何かスゲェ匂いしてるんだが……」


『眼』が泉にやって来た……クルクル回っている。


《……やられたの……水を汚染して帰ったの》


「はぁ?あの真ん丸がか??」


《あの態度……どうやら時間稼ぎをしてたの……》


「この泉の水がそれほど大切な物だって事か?」


《我には分からないの。でも理由がある筈なの》


「それにしてもクセェな……汚染ってどうやったんだ??」


《魔法を使った筈なの》


「魔法を?そうか……呪詛ね……それならローディアスに除染させれば良いと思うわよ」


「あっ、聖魔法か!」


「そういう事。水筒に入れて魔導鞄で持って行けばこれ以上汚染されないわよ」


俺は直ぐに香辛料を売る為の小瓶を何本か取り出して水を入れた。蓋をキチンと閉めて魔導鞄に放り込んだ。うおおおおぉ手がクセェぇぇぇ!!


「しかしこの泉は臭いままで大丈夫なのかな?」


《何年かすれば呪詛の効果が切れるから元に戻るの》


「なるほど。じゃあこのままでもいいかな」


俺達はそのまま先に進む事にした。

色々と思う事はあるが面倒なのは後回しだ。後でアシュのおっちゃんにでも相談してみよう。


『眼』を先頭にさせて奥を探らせながら先に進む。俺は【エナジードレイン】を発動させて魔物の位置を確認する。

進むと部屋がいくつかある。コレは遺跡のアイテム部屋だな。開けば中のアイテムが手に入るアレだ!

結局、開いたのは十二部屋中二部屋だけだった……確率低くっ!!


『自在のブーツ』

クラス︰D 属性︰無し

魔力を入れると足の大きさに合わせて変化する。滑り止め機能(大)付きの靴底は減らない。ブーツ外側の硬度は増さない。


『チェーンメイル』

クラス︰D 属性︰無し

魔力を入れると硬度をを上げる。動きやすく軽いが薄手。インナーとしての使用が最適。


うむ、チェーンメイルはアシュのおっちゃんに使わせよう。この先戦地では露出度が高いのはダメだ。盾も持った方が良いし。

魔物を倒す事とはまた違うのだからね。


「ブリジッタさん、この自在のブーツ持ってる?」


「いいえ、持ってないわね。前に取った時に売っちゃったから……」


「じゃあ履いてみて下さい。コレ良いですから」


ブリジッタさんは恐る恐る履いてる。自在に合わせてくれるのに慣れてないのか?


「あっ、コレいいわね!」


「でしょ?、俺もアシュのおっちゃんも持ってるからブリジッタさん使ってよ。早く動くにはこのブーツは良いと思うよ」


ブリジッタさんは動きを確かめてから「ちょっと回って来る!」と言ってフッと消える様に動いた!全然見えなかったぞ……おいおいマジかよ!!

俺がロックオンしていた魔物がポツポツと消えている……ブリジッタさんが倒してるのか?と思ったらブリジッタさんがいきなり姿を現した!!


「凄いねこのブーツ!!」


「でしょ?このブーツ自体は硬くないから膝当てで、こんな感じにカバーする様にすると傷つかないよ」


と俺の膝当てを見せてあげた。


「なるほど!じゃあ戻ったら武具屋でやってもらうわ!」


ブリジッタさんはかなりテンション上がってた。動きが速くなったのが余程楽しかったのかな?


そして最後の部屋……前はレブルが居たような部屋だが全く魔物の存在を検知しなかったし扉はビクともしなかった……多分何も居ないね……気配が全くしないから。

ファブルはヤツは遺跡に取り込まれたとレブルの事を言っていた……ならば此処には捕らえられた魔人が居ないという事なのだろうか?


それからこの階をくまなく探したが、隠し扉も下の階に行く階段も見つからなかった。そして階段を登って出た部屋に魔物が……


「ニャッ!!」


キラに倒されていた……いつの間に先に行ってたのか……。

キラが倒したのは下の階でやっつけたミノタウロスだった。結構強い奴じゃ無かったのか?それともキラが強過ぎるのか……まあ、キラが強過ぎるのだろうな。ポリュペーモスを食ってから魔力大きくなったし。

ミノタウロスが遺跡に取り込まれると残ったのは魔石と柄の無い変わった形の斧?の先が落ちていた。蝙蝠みたいね……。


『バットアックス』

クラス︰B 属性︰闇

杖の柄に装着する事でバトルアックスとしても使えるが、飛ばすと相手を切り裂いて戻って来る飛び道具にもなる。飛び道具としてのチャージ時間が必要で、再チャージの時間は闇属性の深度による。闇属性と親和性があり、闇魔法の使い手のみ使用出来る。


こりゃあ大当たりの部類だな!しかも闇魔法オンリーは俺のモノって事か。杖の柄に装着……金槌でも大丈夫か?俺は金槌に『バットアックス』を装着してみる……するとカチッとハマった!いやいやマジかよ!!

すると『バットアックス』に『魔力玉』から魔力が吸い取られた……結構な量だぞ。

コレでチャージ完了って事か?でも何か飛びそうにないな……雰囲気で分かる。よーく見るとつり目の様な二つの石が入ってる……コレが光れば飛ばせるって事かな?

まあ、少し重くなったけど大した事は無い。いつも鍛えてるからね!!


そして俺達は遺跡の外に出る事となった。外には沢山の冒険者が居た為に大変な騒ぎとなってしまった。何せ入口じゃない場所が突然開いて中から俺達が出て来たのだから。

皆から根掘り葉掘り聞かれた挙句に、たまたま来ていたギルド職員にも捕まって話を聞かれ、結局、冒険者ギルドに顔を出す羽目になった……あ〜面倒クセーな!!





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





いつもお読み頂きありがとうございます。

今回はもうひとつの『眼』との遭遇を描きました。

やっと“もう一つの本編”をほんの少しだけ描く事が出来てほっとしています。

もうひとつの『眼』は球体で女性の声で、真四角で男の子の声の『眼』と真反対になっております。

今後、こちらの本編も徐々に動き出します。お楽しみに!


皆様の応援いつも感謝しております。

フォローがまた増えました。本当に嬉しいです。

これからも何卒よろしくお願いいたします。

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