第67話 遺跡の隠し扉
ルーデム商会を出た俺とメルローさんは次に塩の買い付けにやって来た。ここでも枢機卿の名を出しただけで塩の仕入れ値がかなり安くなった……やっぱ枢機卿スゲェ……。
安かったので50樽位は予約したが武具の具合でもう少し買うかもしれないと話すと喜んでいたよ。まあ入り切らなきゃ俺の魔導鞄に突っ込んでも良いしな。
後は香辛料類をいくつか仕入れたが、コレは売り物よりも俺のストック分だな。
もうここに戻る事も恐らくは無いだろうし、ここでしか手に入らない物もあるかも知れないからね。
その日はそのまま枢機卿の屋敷に戻りアシュのおっちゃんと色々相談したが、枢機卿に何かを教えて貰ってる様で何日か枢機卿の屋敷を出れないという事だった。
そこで俺はブリジッタさんと遺跡に行く事にした。
まあ、さほど何かを取れると期待はしてないが『眼』の探索で隠し扉でも引っかかってくれれば位の軽い気持ちである。
ブリジッタさんは何度もこの遺跡に入ってる様で「何も無いと思うわよ……」と言っていた。
まあ、それほどに冒険者達が出入りする遺跡なのだろうね。
遺跡の入口に到着すると、まあ冒険者の多い事……まるで店にでも出入りしてる様に冒険者が行き来している……なるほど、こりゃあ確かに何もなさそうだな。
俺とブリジッタさんが向かうと冒険者達がブリジッタさんを見て「紫電の……」とか「あのブリジッタが何でこんな所に??」だのと話している。その内に後ろからついて来てる俺を見つけて「おい!あの小さいのデュラハンスレイヤーのガキじゃないか??」だの「デュラハンスレイヤーの片割れだ!」とか言われてる。俺も有名になったもんだ。
「ラダル君、ここがお目当ての遺跡よ。何も無いから散歩に行くつもりでね」
「とりあえず『眼』に調べさせるんで適当に魔物でもサクッと倒しますか!」
「ニャッ!!」
もちろんキラも同行している。キラには「遺跡の魔物は食えないぞ」と教えたのだが俺の眷属は一緒に行きたがったので連れて来た。とても可愛い。
と言っても中にも冒険者が大勢居るので魔物も狩れないわ……こりゃあダメだなと思ってたら『眼』から情報が入る。
《隠し扉を見つけたの》
(今行く。近くに冒険者は居るか?)
《一人もいないの》
(分かった。今行く)
「ブリジッタさん、行きましょう」
俺は『眼』の行き先をトレースしてそのまま向かった。『眼』は『隠密』を発動したまま隠し扉の周りを探っていた。
《扉を開けるの》
俺とブリジッタさんは武器を構えて扉が開くのを待つ……するとゆっくり扉が開いて下への階段が現れた。
俺は【エナジードレイン】を発動させて下にいる魔物を指定する。ソコソコ居るねえ……15……6か。
『眼』は階段をそのまま降りて行く。俺達も下へと降りると突然扉が閉まった。何かおかしいぞ……罠かな?すると指定した魔物全部がコチラに向かってくる。やはり罠だな
「ブリジッタさん、これ罠っぽいですね。魔物が16体やって来ます」
「みたいね……こんな罠があったなんて……知らなかったわ」
「恐らくはこれを発見した連中は帰って来れなかったんでしょうね……奥に何か居るかもなあ……」
とにかく俺とブリジッタさんは階段の下まで降りずにその場で魔物が来るのを待った。
そしてやって来た魔物達が階段を登って来たその時に『千仞』を発動して5体を底無し沼に沈める。そしてそのまま『溶岩砲(マグマキャノン)』を後ろの奴らに食らわせる。キラはそのまま右側の魔物達に突っ込んで行く。ブリジッタさんは左側の魔物達に目にも止まらぬスピードで飛び込んで行く。
俺がフォローに行く必要も無くキラとブリジッタさんは魔物達を倒していた。
そして倒された魔物は吸収されて魔石だけが残る。キラはとても残念そうだ……。
周りを少し探ると冒険者の物らしい装備品がいくつか見つかった。やはり罠にハマってそのまま魔物に殺られたんだろうな……死体だけは遺跡の外に排出されるから何故死んだかも分からないままって感じか。
俺達は『眼』が調査するのをその場で待っていた。
「やっぱり『眼』ちゃんは便利ねぇ〜」
「まあ、遺跡出身らしいので詳しいのだと思いますよ。その点が怪しいところなんですけどね」
《何か失礼な事を言われてるの》
「何か見つけたか?」
《また隠し扉を見つけたの》
『眼』の居場所をトレースしてたどり着くと中に魔物の気配がする。俺は早速【エナジードレイン】を発動した。
「扉開かないか?中で魔物がおまちかねみたいだが」
《今見てるの、もう少し待つの》
『眼』が一生懸命探してるので俺達は少し休憩する。キラがお腹減ってそうなのでストックのオーク肉を塊であげる。
「しかし驚いたわ……まさかこんなものが地下に有ったなんて……」
「余程罠などを見破る目を持った斥候タイプの冒険者しか見つけられなかったんでしょうね。やはり見つけた時はお宝を独占してやろうとなりますからね……タチの悪い罠ですよ」
「そうね。この遺跡じゃあせいぜい2、3人のパーティーで来るのが関の山……殆どはソロで来るから……あの初見殺しみたいな罠はソコソコ腕が立たないと突破出来ないだろうし、この遺跡じゃあせいぜい食料も2日分持ってたら良い方だからねぇ〜」
「まあ、俺達はここで住める位の食料は有りますからね。パンの箱と甘露の雫の壷が有りますから充分に行けます」
「あのパン美味しいからね。ラダル君と居れば食料には困らないわねぇ〜」
それから一時間ほど待ったのでサンドウィッチを作ってチャイティーを入れて軽食を取った。
「随分と苦戦してるなぁ……」
「『眼』ちゃんがこんなに苦戦するなんて……もしかして完全に閉じ込めるつもりなのかしら?」
「んー……それは無いと思うんだけどなぁ……それならもう少し分かりやすくして沢山引き込もうとするかと」
《やっと見つけたの……》
「おっ!見つけたか!」
《今から開けるの》
「準備は良いぞ!来い!」
扉が開くとデカい巨体……ミノタウロスか!?俺達に猛然と襲いかかって来る!!しかしキラが先制のブレスを吹いて顔面に当てた所に俺も『溶岩弾(マグマバレット)』を連射して目を潰してやる。そこにすかさずブリジッタさんがレイピアを突き立てた!
ミノタウロスはそのまま崩れ落ちる……そして遺跡に取り込まれた。
「何か呆気なかったわね……あんな物なの?」
「ああ……俺のスキルで弱らせてたからね。本来はあの二倍位は強いはずだよ」
「……扉の向こうの魔物を弱らせるスキルって……ラダル君は一体何者なの?」
「アッシはしがない魔法兵ですよ……」
ブリジッタさんは生温い目で俺を見る……そんな目で見ないで欲しい……。
「ニャッ!!」
キラはドロップ品を見つけた。偉いぞ。
魔石とコレは……綺麗な指輪だ。
そこに『眼』がようやく戻って来た。結構苦戦してたな。
《この遺跡は■✱△で○✱■△□だから我とは反発する遺跡なの》
「何言ってるか全然分からねぇんだけど……」
《主に解る発音が難しいの……》
「宇宙人かよ!……まぁええわ。とにかくお前とは相性が悪いって事か?」
《主は理解が早くて助かるの》
『雷擊の指輪』
クラス︰B 属性:雷
雷神の加護を持つ指輪。一定時間、雷魔法の威力を跳ね上げる。時間と威力は雷属性の深度に寄る。雷神の加護を持つ為、雷魔法を扱える者のみが使用出来る。
「おお!こりゃあ当たりのアイテムだなあ!雷属性ならブリジッタさんが持つと良いよ!」
「いや、コレは二人で取った物だし……」
「良いの良いの。俺は風属性無しだし、ブリジッタさんなら攻撃力が上がるから必要でしょ?使える人が使わないと」
「しかしなぁ……アシュトレイも使えるじゃないか?」
「アシュのおっちゃんはそもそもココに来てないし。ブリジッタさんが使えば良いよ」
《ブリジッタはそれを使いこなせば自然と雷の理を理解出来るの》
「雷の理……」
「ほら、『眼』もこう言ってる事だしブリジッタさんが持ち主ね!決定!!」
ブリジッタさんは諦めて指輪を嵌めた。するとブリジッタさんの雷の魔力の雰囲気がガラッと変わった……金髪になる戦闘民族の人かな?
「……何となくだけど雷属性の何かを掴めそうな気がしてきたわ…本当にありがとうラダル君。大事にするわ」
「良かった良かった。さて、じゃあ先に進みますか!」
そのまま部屋の奥に行くと下に行く階段があった。おいおい……まだ何かあるのか?
そのまま『眼』を先に行かせて偵察させる。すると降りた先は少し大きな部屋になっており、その部屋の真ん中には噴水が出るような感じの泉があった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お読み頂きありがとうございます。
今回はブリジッタと二人で遺跡の探検となりました。ブリジッタはあの指輪で覚醒するのでしょうか?
そして、この先に待つ者は一体……。
遂にPV7万超えました。
レビューの後、フォローと星の数が増えました。
やっぱりパンチ力凄いなぁ……
本当に感謝申し上げます。
これからも何卒応援宜しくお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます