第65話 枢機卿ローディアス=リストリア

リストリア枢機卿の屋敷に入ってメルローさんに連れられてそのまま枢機卿の執務室へ向かった。

汚ねえままだけど大丈夫かと聞いたらそう言うのを気にしない方だと笑っている……うん、確かに変わり者だな……。


部屋の近くまで行くとロザリアが枢機卿に話をしているのだろう……エラい大声で話をしているよ。

メルローさんがドアをノックして


「旦那様、ブリジッタ様とデュラハンスレイヤーの御二方……アシュトレイ殿とラダル殿をお連れしました」


「おう!!入れ!!」


メルローさんが扉を開けるとロザリアが背の高いジェントルマンの膝の上で話をしている……アレが枢機卿なのか?


「お父様!!この二人がデュラハンスレイヤーの二人よ!!凄く強いんだからね!!」


何かロザリアにスゲェ自慢されてんだけど……何でや?


「ブリジッタ!ご苦労だったな!まさかポリュペーモスに出会すとはな!相変わらず引きが強えな!ガハハハ!!」


「閣下……笑い事じゃありませんよ……この二人が居なかったらとても間に合いませんでしたよ」


「おう!そん時は儀式を遅らせたらいいから気にしてなかったわ!!」


「少しは気にしましょうよ……強引な事をすると教皇様にご迷惑が掛かりますよ……」


「左様で……旦那様ももう少しお気を付けにならないと……」


「ああ〜!!分かった分かった!それよりも早く紹介せぬか?デュラハンスレイヤーの二人を!!」


「お初にお目にかかります。デュラハンスレイヤーのラダルと申します」


「オレはアシュトレイだ」


「変にかしこまる必要は無いぞ!我がローディアス=リストリアだ!何の因果か枢機卿等をやらされてるが、元は冒険者だからな!」


「ほ、冒険者?!!」


「ローディアスは昔、私と他三人と『不死鳥の翼』ってパーティーを組んでいたのよ」


「ま、マジっすか?……」


「まあ、そう言う事だ!我は貧乏貴族の末弟でな、聖魔法の使い手として銀級冒険者をやってたんだ。だから娘にも冒険者の事くらいは教えないととブリジッタに相談したのさ!」


「全く……立場が立場だから止めなさいと言ったのだけど……」


「何を言うのブリジッタ!私は冒険者の初歩を教えて貰って本当に感謝してるわ!」


「お嬢様も今後はお控え下さい……儀式の後はダンスや色々と……」


「そんなものはやりたくないわ!」


「おお!よく言ったぞ!ロザリア!」


ちょ……アンタが煽ってどーすんのよ……立場が立場でしょうに……なるほど、州王様が変わり者と言うだけあるわ。


「ところで枢機卿、州王様からご紹介を受けまして閣下にご相談があります。コチラをご覧下さい」


俺は州王様が持たしてくれた手紙を渡す。枢機卿はソレを読みながら思案顔をしている。そして考えがまとまったのか俺たちに話しかける。


「……うむ、州王からの依頼は判った。まあ、俺に頼れと言ったヤツの判断は概ね正しいな」


州王様をヤツ扱いするとは……メルローさん……物凄く目が怖いです……。


「確かに傭兵として行くのも悪くない。が、国境を渡るのが非常に難しいだろうな。ましてや相手と戦ってたりすればお尋ね者だ、直ぐに首を跳ねられてもおかしくないからな」


「なるほど……かなり厳しそうですね……」


「そこで他の手を使うのが良いだろう」


「他の手……ですか?」


「うむ、長い事戦争をしているかの地では商人達がキャラバンを組んで国を渡り歩きながら、ありとあらゆる物を運び商売をしている。それこそ武器の類いから食べ物や衣類とな。もちろん戦争中の国々を回るのだからな、それなり……いや軍隊以上の武装をしているそうだ。人呼んで“武装商団”と言う。ソコに傭兵として入り込めば国を渡り歩きながら目的地迄行く事が可能だろう。但し、真っ直ぐ目的地には行けないだろうから商人達の行き先について行く事になるがな」


「武装商団……そんなものが存在するのか……」


「そうだ、デュラハンスレイヤーならば傭兵として入り込むのは容易だろうよ。まあ、こんなトコだな、俺の出せる案は」


「充分です……ありがとうございます。その武装商団に潜り込んでみます」


「そいつが良いぞ。それと何か頼み事が有るって聞いたが?」


「ああ、実は……コレなのですが……」


俺は魔導鞄の中からポリュペーモスの魔石と呪いのマントとレブルの箱を取り出した。


「こりゃあデカいな!なるほど……流石にポリュペーモスの魔石は紫色も深いな!」


「すっごく大きかったんだからね!」


何故かエッヘンってロザリアが威張ってる……何でや?


「よし、20で買い取ろう。メルロー用意してくれ」


「かしこまりました……」


「20……ですか?」


「ああ、20大金貨なら問題あるまい?」


「いや〜そんなに高く買って貰えるとは……」


「いや、そうでも無いぞ。オークションで競られた物だと下手すりゃ倍はかかる。中に入るヤツが多い程な。だからコレでも安い方だ」


「ギルドだと1大金貨くらいと……」


「ヤツらはぼったくりだ。あんな所に売るのは素人かマヌケかどっちかだ」


「なるほどね……」


この人もギルドに対して手厳しいな……やっぱり冒険者ギルドはあまり良いイメージでは無いのかもな。


「それで……この禍々しいマントは何だ?」


《コレはバンパイアロードの呪いのマントなの》


と、いきなり『隠密』を解いて出て来た『眼』に枢機卿は驚いた。


「!!さっきから何かいるなと思ったが……ソイツか……フワフワ浮いてる四角い箱ってのは?」


《我は眼なの、今マントの鑑定を見せるの》


《始祖の【呪いの】月光マント》

レベル:S 属性:闇

バンパイアロードの魔力により生み出されたマント。物理耐性、魔法耐性、呪詛耐性を持つ。耐性のレベルは闇属性の深度により決まる。ボロボロになったとしても月の光を浴びせると元のマントに戻る。闇属性に親和性が高く、闇魔法の使い手以外は使用出来ない。【このマントには始祖の呪いが掛けられており、装備した者は呪いによりバンパイア化する】


「!!こりゃあすげぇ、バンパイアロードのマントだと?……とんでもない物だな」


「コレの呪いの解呪とか出来ますか?」


「そうだな……出来なくも無い。2週間程で可能だろう……何せ良い魔石も手に入ったしな」


「そうですか!ではお願い致します!」


「うむ、任せておけ!それでだな……後はこの箱だが……強力な古の封印で固められている。条件がある筈なのでそれを達成しないと開く事は無い」


「やはりそうですか……ありがとうございます」


「恐らく魔人の封印と見たが……どうだ?」


「はい、バンパイアロードのレブルが封印をした様です……」


「レ、レブル……サラっととんでもない大物の名前が出て来たなオイ……となると余計に難しいな」


「なるほど……まあ、そうですよね……」


「コレは今は諦めてくれ。マントは何とかしよう」


「ありがとうございます。宜しくお願い致します」


枢機卿はマントに何らかの魔法をかけて袋に入れる。そして、戻って来たメルローさんに袋を渡した。メルローさんは使用人にマントを渡すと、テーブルの上に大金貨の入った皮袋を置いた。


「ではコチラが20大金貨で御座います。ご確認を……」


俺は皮袋を開けて中のお金を確認した。


「確かに20大金貨です。ありがとうございます」


お金を受け取った俺は枢機卿にマントの解呪の礼をしたいと申し出たが、「娘を助けて貰った恩人に金まで貰うほど守銭奴じゃない。そこらの教会関係者と一緒にするな!」と笑われてしまった。ソレ言ってええんか?ええのんか?何かやっぱり型破りな枢機卿だな!


「さて、解呪の時間もかかるからウチに居ると良い。客間も沢山あるからな。宿屋に行くとか言うなよ。色々話も聞きたいんだ」


「ラダル、それでは世話になろう。オレも枢機卿に聞きたい事があるからな」


「うん、俺も問題無いよ。しばらくご厄介になります」


「よし、決まりだな!ブリジッタも泊まって行くだろ?」


「勝手知ったる何とかってね……もちろん泊まるわよ。しばらくぶりのベッドで寝れるんだから、良いベッドで寝たいじゃない?」


「ならいつもの部屋で。アシュトレイとラダルはメルローに案内させよう」


「かしこまりました。此方へどうぞ」


メルローさんに案内されて俺達は枢機卿の客間に通された。流石は貴族の客間だ……王宮程ではないにしろそれに匹敵するよ。

ちなみに依頼の完了は枢機卿がギルドに人を遣わして了承を貰い、依頼料もコチラまで持って来てくれた。スゲェ融通の利かせ方だよな。まあ、この聖都で枢機卿という存在がどれ程の権力を持つのが分かったよ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

枢機卿であるローディアスがまさかの冒険者出身と言う展開となりました。

ローディアスとブリジッタが冒険者『不死鳥の翼』で一緒だったという件ですが、このキャラクターも他の小説で出す予定だったのを使いました。

他の3名もいずれは何かしらの形で出る予定です。


レビューを書いて頂きまして本当に感謝申し上げます。

これからも何卒応援の方よろしくお願いいたします。

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