第64話 商人の熱気とセリ
一服していた俺達はキラが蛇の口で投げて寄こした漬物石に最適じゃねーか?みたいな大きさの紫色の魔石を見ながら話していた。
「これはデカいな。サイクロプスの魔石は基本的にデカいがコレは二回り位デカいぞ」
「前に見たサイクロプスの魔石は土属性だったから黄色だったけど、闇属性は紫色が綺麗ねぇ〜」
「これだけデカいと結構な値段になるのかな……」
「そうねぇ……ギルドの相場としたら1大金貨は行くと思うわ。後はオークションって手もあるけど時間が掛かるわね」
「そうかぁ。時間は掛けたくないから即売り上等だなぁ〜」
「う、ウチで買い取るわ!!」
ロザリアが急に声を上げたのでビックリした。ウチで買い取るって……ああ、そう言えば枢機卿の娘だったな……。
「ん?ウチでって……枢機卿にこの魔石の使い道があるの?」
「ま、魔石は色々な儀式で使うから……大きいのは喜ばれるわよ!」
「ほう……なるほどな。浄化等の聖魔法では魔石を良く使うと聞いた事があるな……」
「そ、そうよ!だから大きい魔石を持って行けば父上も喜ぶわ!」
「そうかなるほど……んじゃあそうするか。ブリジッタさんもそれで良い?」
「そうだわ、すっかり忘れてた……その手があったわね。依頼主に喜ばれるならそれが良いわ」
「それじゃあロザリア、君のお父さんに売る事にするよ。宜しくな」
「任せて!」
ロザリアは何故か胸を張った。なんとも不思議な生き物だな……。
「じゃあ後は骨と皮を売るとしようか」
「結構な量だから……つか居たじゃないのよ!!沢山商人がさ!!」
「あっ……そうね。居たわねぇ〜」
それなら話は早い。そいつらに持ってかせよう。ついでに商人から依頼料もふんだくると……ヒヒヒ……。
「なら後は俺に任せてよ。悪い様にはしないからさ」
「……ラダル、悪い顔になってるぞ……」
俺達は商人達が来るのを待つ事にした。
その日の朝に商人達のキャラバンが大挙して現れた。渓谷の形が変わる程の激しい戦闘の痕が残っているので商人達は驚いた表情でコチラまでやって来た。
「こ、これは一体……」
俺はポリュペーモスの素材を並べてある真ん前に立ち、商人達に向かって大声で叫んだ!
「良く来た商人諸君!喜べ!サイクロプス改めポリュペーモスに進化したのを俺達デュラハンスレイヤーと紫電のブリジッタの3名で打ち倒したぞ!!」
「うおおおおぉ!!!!」
「流石はデュラハンスレイヤー!!」
「紫電のブリジッタならやってくれると思ってたぜ!!!」
「紫電のブリジッタ様あ〜!!結婚してくれぇ〜!!」
何かどさくさに紛れてブリジッタさんにプロポーズしてるのも居るけど……概ね良い反応だったね。
「そして諸君!!ココには我らが打ち倒したポリュペーモスの皮と骨があるぞ!!」
「「おおお!!!!」」
「そこでだ、俺達への礼金を払った商人がコレを競り落とす事が出来るぞ!!さあ!セリに参加したいか??!!!」
「「おおお!!!!」」
「ポリュペーモスの素材を競り落としたいか??!!!」
「「おおお!!!!」」
ヨシヨシ、このライブや昔の視聴者参加型のクイズ番組みたいな妙な熱気が必要よ。
俺は礼金を安めに設定して受付をすると俺も俺もと全員参加のセリになった。
ヨシヨシ……これも予想通り……。
このセリが値段のつり上がる事……結局全部で大金貨16枚分の儲けになった。ニコニコ顔のブリジッタさんの話ではギルド売りの8倍程の儲けだそうだ。ウヒヒヒ……やったね!
聖都までの道程でも俺達は商人を護衛するという名目でついて行った。何とコレも依頼料が発生しちまうんだな……ヒヒヒ。
「しかしラダル君のやり方は凄かったわね……あれ程値がつり上がるとは思わなかったわ」
「ああいうのは熱気とタイミングですよ。相手に考えさせたらコチラの負けです。良く分からんうちに勝負をつけるのが吉でしょう」
「ほとんど詐欺の手口だな……」
「チッチッチッ……アシュのおっちゃん、人聞きの悪い事言わないでくれる?彼等はアレをセリに出せばまだ儲けが出るはずさ。俺達は時間が無いからこういう手を使わないと損するの」
「まあ、私も儲かって良かったわよ。ラダル君、本当にありがとう良い稼ぎになったわ」
そうそう、こういうリアクションちょうだいよ!何その詐欺まがいみたいな反応は!!
そして、1週間後に俺達が聖都に到着すると聖都の門の前にずらーっと銀ピカの兵士達が並んでいる。
商人達のキャラバンはそこで止められて俺達の方に隊長と思しき人物がやって来た。
「ロザリア様、良くぞご無事で……ささ、此方へお越し下さい」
「ヒューゲル、大儀である。これら三名は私の護衛。“紫電のブリジッタ”は存じておるな?之はデュラハンスレイヤーの二人だ。丁重に案内せよ」
「おお!!噂に名高いデュラハンスレイヤーのお二人も御一緒とは!!此方へどうぞ!」
何か凄い事になってるんすけど……流石にアシュのおっちゃんも緊張してるみたいね。
ブリジッタさんはさも普通の事の様にしてるので、ロザリアの扱いは此処聖都では当たり前の事なのだろう。……ロザリアには最初に結構がっつり言っちまったからなぁ……面倒な事にならなきゃ良いけど。
でも何で俺達が来るのが分かったのか不思議に思ってたらロザリアが近くまで来ると反応する魔導具を持ってたらしい。双子石みたいなやつかな?
俺達が行こうとすると商人のキャラバンから「デュラハンスレイヤーありがとう!!」だの「ブリジッタ様!!ありがとう!!」だのと声援が送られたので俺やブリジッタさんが手を振ると大歓声で送ってくれた。
「コレは……ブリジッタ殿、一体何があったのですか?」
ヒューゲルさんがそう尋ねたのでブリジッタさんはサイクロプスの件を詳細に話していた。するとヒューゲルさんの顔色が変わって来たのが分かる。
まあそりゃあそうだろうね……これだけの護衛が付くロザリアが命の危険にあってた事を全く知らなかったのだから。
「ブリジッタ殿、そしてデュラハンスレイヤーのお二人……心より感謝申し上げます……知らぬ事とは言え我らがお守りせねばならなかった事態を解決して頂いたのですから……」
「たまたまですから気になさらず。俺達も州王様のご紹介でローディアス=リストリア枢機卿に会いに来たので丁度良かったのですから」
「何と!!それは太陽神のお導きかも知れませぬな!!」
「きっとそうよ!太陽神は見てくれているのよ!」
ヒューゲルさん始めとした兵士達がロザリアの言葉にウンウン頷いてる……何となく宗教っぽい決着の付け方だなぁ〜。俺は全く信じてないので生温い目でその光景を見ていたけどね。
「皆様はこのままリストリア枢機卿の御屋敷に御案内致します」
ヒューゲルさんに連れられて俺達はロザリアの実家であるリストリア枢機卿の屋敷へと向かったのである。
屋敷に到着すると執事っぽいおっちゃんとその補佐見たいのが2人、メイドが10人も門の前で待っていた。ヒューゲルさんが先触れを送っていたようだ。
「ロザリア様お帰りなさいませ……」
「只今帰りました。メルロー、迎えご苦労さま」
「何のなんの……ブリジッタ様、ご苦労をお掛けしました。そして、かのデュラハンスレイヤーの御二人……お会い出来て光栄です。私は当家の筆頭執事メルローと申します」
「メルローさん、俺はラダルです。宜しくお願い致します」
「オレはアシュトレイだ。宜しく頼む」
「では、早速ですが旦那様にご挨拶を願います。今か今かとお待ちですので……」
「直ぐ行くわ!!」
ロザリアはスタスタと早足で屋敷の方に向かっていく。メイドさん達が慌てて追っかけてるよ……お転婆娘だなぁ……。
「ヒューゲルさん、ありがとうございます」
「おお!コレはご丁寧に……流石はデュラハンスレイヤーですな!」
アシュのおっちゃんとブリジッタさんもヒューゲルさんと挨拶した後、メルローさんに連れられて屋敷の方に向かった。
それにしてもデカい屋敷だなぁ……掃除大変そうだ……などと呑気な事を考えていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもお読み頂きありがとうございます。
ラダルの機転によってポリュペーモスの素材は高値で捌くことが出来ました。
聖都では何が待っているのでしょうか?そして、枢機卿とは一体どの様な人物なのでしょうか?
いつも応援ありがとうございます。
フォロワーさんの数が増えるのはホントに嬉しいものですね。(しみじみと……)
引き続き更新頑張ります。
何卒よろしくお願いいたします。
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