第57話 州王様の宝物庫

俺とキラの冒険者登録を終えるとハインディールさんはアシュのおっちゃんに小声で何か話していた。一体なんだろう??

そして、そのまま冒険者ギルドの皆さんはローレスさんに連れられて部屋を後にした。


「アシュのおっちゃん、ハインディールさんは何て?」


「州王様との面会が終わったら一度顔を出してくれと……何か話があるらしい」


ギルドマスター直々の話って何だろうか?何か嫌な予感しかしないが……。



そして、その翌日に州王様との面会……謁見ってヤツか……となった。

何か豪華な衣装を着させられるのかと思いけや、何とそのままの装備で来てくれという……マジか?

流石に武器は預けるのだが、別室に置く訳でもなく謁見の間の前でローレスさんに渡すだけ……警備体制ガバガバじゃねーの?


《王様の目の前にはかなり強固な魔法障壁が張り巡らされているの》


『眼』とキラもこの謁見の間に呼ばれてるので『眼』は魔法障壁が張られているのが見えたらしい。


俺とアシュのおっちゃんはローレスさんに促され州王様の方に向かう。

州王様は……この人物凄く強いぞ……物凄いプレッシャーだな。隠し切れない魔力が噴き出している。ゴンザレス隊長以上の魔力は間違いなく有るね。驚いたわ……間違いなく人類最強クラスってヤツだ。

なるほどね、太陽国ギスダルの州王は実力が無いとなれない訳だな。警備体制ガバガバじゃなくてこの人に勝てる程の人間はそうは居ないという事か……何処かのケンオウ様かな?


「良く来た!デュラハンスレイヤーよ!私が州王のラフトラク=ザレンディスである。此度の活躍、誠に見事である!そなた達のおかげで我が村が救われた。よってデュラハンスレイヤーの称号とギスダル大金貨1000枚と我が州王宝物庫から好きな物を一品づつ与える事とする!!」


なんか凄い事言ってるんですけど……ギスダル大金貨って王国で言う白金貨の事だよね……まあ、くれるのなら貰うけどさ。



「有り難き幸せ……過分のご配慮誠に痛み入り奉りまする……州王様には此方のデュラハンより出ました魔石を献上致します。何卒お納め下さい」


とアシュのおっちゃんはローレスさんとの打ち合わせ通りにデュラハンの魔石を献上する事とする。コレで州王様の名誉が守られるって事らしい……。


「おお!!デュラハンの魔石とな!では有難く頂くとしよう!大儀であった!」


とまあ、ここまでがテンプレらしいわ。


「さて、直ぐに宝物庫に案内しよう。ついて参れ」


えぇぇ……州王様自ら案内するのかよ……何かこの人色々型破りで凄いな……。


州王様にゾロゾロとついて行く俺とアシュのおっちゃんと近衛兵の集団。

何か凄く大きい扉の前に来たけど……コレが宝物庫の扉なの?デカすぎだろ??


「今開けるから暫し待たれよ……フン!!」


扉を州王様自らが一人で開けるのか!?

つか、とてつもなく重そうな扉をゆっくりと州王様は開けて行く……イヤイヤ……人間技じゃねえぞ……。


「この扉は州王様以外は重すぎて開けられぬのですよ。逆に言うとこの扉を開けれないとこの地の州王に認定されませぬからな」


と、ローレスさんが豆知識を教えてくれた。何その何処かの暗殺一族の門扉みたいな話は……。


開けられた宝物庫の扉の先が広過ぎて全部見えねえ……まあ、扉がこんなにデカいんだから中が狭かったらコントだよな!


「さあ、ゆっくりと選ぶが良いぞ。私は執務が有るから選び終わってから来るが良かろう。まあ、早くとも3日ほどは掛かると思うぞ!フハハハ!!」


と言い残して州王様は立ち去ってしまった……お宝を何個も盗るとか考えないのだろうか?するとローレスさんが


「宝物庫の宝は部屋から持ち出すと直ぐに警備用の罠が発動するので、手前まで持って来てからその宝物の罠を解除します」


なるほど……ポッケに潜ませてると罠にやられる訳だな。

さて、この広大な宝物庫の中から良い物を選ぶのは難しい……そんな時は『眼』さんに相談だ!!


《主は都合がいいの》


「は?何か問題でも?」


『眼』はフワフワと上空に登りグルグルと目を凝らして見ている様だ。するとアシュのおっちゃんが何か手に取って持って来た。


「ラダル!このハルバートはカッコイイだろ??な?」


「……しまってきて。今『眼』に探させてるから!」


「お、おう……カッコイイのにな……ブツブツ……」


ソコの変な人はブツブツ言わないっ!

もういい加減ハルバートから離れなさいよ!!

俺は周りを見渡したがあまりの量に圧倒されるので魔力を調べる事にした。

ん?この魔力……俺は走って行ってその場所で粗探し……有った……あの時と同じ箱……。

俺はそれを持って行く。コレは貰っておかないとな……。


『眼』は俺の言う通りに中々凄い物を探して来ていた……優秀!!


《褒められても何も出ないの》


「知ってます」


『眼』が探して来たのはこの四つ。


《奏でる波動のセイレーンリング》

レベル:SS 属性:風、音

セイレーンが奏でる【音魔法】を操る事が可能となる。【音魔法】は脳に直接波動を送るので様々な状態異常を引き起こす。基本的には睡眠であるが、深度が深くなれば色々な状態異常を操る事が可能となる。風属性と相性が良く風魔法を使える者以外は使用出来ない。


《幻惑する朧のディアボロスローブ》

レベル:SS 属性:闇、幻

このローブを纏う者はローブに封じられた【幻魔法】によって全ての物理攻撃が素通りしてしまう。深度が深くなれば魔法攻撃も素通りさせる事も可能となる。闇属性と相性が良く闇魔法を使える者以外は使用出来ない。


《静止する結氷のヨトゥンガントレット》

レベル:SS 属性:水、氷

【氷魔法】によりガントレットの表面が絶対零度の氷で覆われている。更にそれに触れた物は全て凍結する。深度が深くなればその絶対零度の冷気を自由に飛ばす事も出来る。水属性と相性が良く水魔法を使える者以外は使用出来ない。


《滅する爆炎のイフリートボウガン》

レベル:SS 属性:火、精霊(炎)

イフリートの炎を纏った精霊の矢を撃ち出す事が出来る。イフリートの炎は水では消えないので対象を焼き尽くすまで燃え続ける。矢は使用者の魔力で出す事が出来る。深度が深くなればイフリートの色々な精霊炎魔法を矢に込められる。火属性と相性が良く火魔法を使える者以外は使用出来ない。


す、スゲェ……正直言うと全部欲しい……つか俺にはセイレーンリングは使えないけどさ。

ディアボロスローブなら「ふっ……俺には全ての物理攻撃は通用しない……」なんてさ……それこそカッコイイだろ??

ヨトゥンガントレットなんてどっかの水瓶座のなんちゃら違うの!?

イフリートボウガンなんて完全に兵器だよな。「イフリート!!全てを焼き尽くせ!!」なんて言っちゃってさ!!


「アシュのおっちゃん!どれにする?」


「う〜ん……何かパッとしないな……」


「は?」


「もう少しな……カッコイイのが良いな!」


「イヤイヤイヤ!!何言ってんの??どれもスゲェ性能だよ?」


「それは分かるのだがな……オレの信念に合わんのだ」


「し、信念って……」


「オレにはやはりあのハルバートの方が似合うな!うん!」


そう言うと唖然としている俺を後目にハルバートをローレスさんの所に持って行ってしまった……オイオイ嘘だろ……。


「……本当にコレで宜しいので?」


「いやあ、流石は州王様の宝物庫。良いハルバートがありましたなあ!!」


「そ、そうですか……それは良かった……」


あ〜あ……アレにしちまったよ……最悪だ……。


《主はどうするの》


「……俺は……コレだ……」


俺は見つけた箱を『眼』に見せた。


《……鍵なの》


「そうだ、鍵が有ったからな」


《主は鍵で本当に良いの?我のおすすめはディアボロスローブなの》


「この鍵はお前にとって必要な物だろう?これを見つけた時点で俺の取り分は鍵で決定事項だから」


《……わかったの》


「ローレスさん、俺のはコレでお願いします」


「!!本当にコレで宜しいので??」


「ええ、前から探していた物なので」


「そ、そうでしたか!それならば良かった……アシュトレイ殿がアレだったので……では解除致しますね」


ローレスさんが宝物庫の罠を解除した。確かに魅力的な物が多かったなあ……流石は州王様のお宝ってとこかな。しかし、探していた鍵が有ったのは本当にラッキーだったな。


選んだお宝を持って州王様の所に行くと驚いた顔をしていたが、持って来た物を見て更に驚いていた……まあ、3日ほどは掛かると思ってたら2時間ほどで戻ったんだからね。


「……お前達は私に遠慮をしたのか?」


「いいえ、流石は州王様の宝物庫ですな!素晴らしい一振を選んだかと思います!」


「そ、そうか……ラダルは……コレで本当に良いのか?これは一体なんだ?」


「コレは俺達が前から探していた『眼』の鍵です。『眼』、鍵穴を出して」


すると『眼』は鑑定の眼の真ん中から鍵穴を出した。俺はその鍵穴に鍵を差した。鍵は眼の中に収まってしまった。『眼』はクルクルと高速回転した後でピタッと止まる。そして前から有る眼から新たな大きい眼となって出現した。


《上位鑑定眼なの。人間や魔物等、生物の鑑定が可能になったの》


よしっ!キタコレ!!遂に欲しかったヤツが手に入ったぞ!


「鑑定眼……それは鑑定スキルと同じ物なのか?」


《そうなの。今までは物を鑑定するだけだったの。コレで鑑定眼は完全復活したの》


「ほう……それは遺跡より発見されたものだが使い道が分からなかったのだ。なるほど……では、ソレはお前たちを待っていたのかも知れぬな」


「確かに……そんな気がします」


「まあ、私の予想とはかなり違う物を二人共選んだ様だが、満足しているならそれで良かろう。しかし遠慮深い者共よな!フハハハ!!」


まあ、そうだよね……アシュのおっちゃんの変態ぶりには呆れたけどさ……。

とにかく目的の物が手に入った事は喜ばしい事だ。


それからは3日ほど歓迎のパーティーで王宮に缶詰状態だった。州王様には色々な冒険の話などをしながらパーティーをすごした。キラの食いっぷりが気に入った州王様が宝物庫の宝をやるから譲ってくれと言われたのには参った……ローレスさんがとりなしてくれて何とか諦めさせたよ……トホホ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

今回は州王様の宝物庫で『眼』の鍵を発見するお話でした。

流石に州王様の宝物庫という事でかなりチートなアイテムがありましたが、どうやらラダルとアシュトレイには縁の無い物だった様ですね。

これで『眼』は鑑定眼の復活を果たしました。

更なる活躍が期待されますね。


皆様の応援感謝しております。

応援メッセージ等も引き続き募集しております。

何卒よろしくお願いいたします。

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