第56話 冒険者ギルドよりの使者

俺達は風呂から上がって着替えをする。

その時にピンと思い出した……。


「あっ……そう言えば……」


俺は魔導鞄をゴソゴソ探して指輪を出した。確か……この指輪はデュラハンを倒した際にドロップした物だった…。


「あの遺跡でデュラハンがドロップしたコレを『眼』に鑑定させるのすっかり忘れてたよ……」


《主は忘れっぽいの》


「おっしゃる通りで……」


『俊足の指輪』

レベル:B 属性:なし

装備した者が魔力を入れると足が地面よりほんの少し浮いて、地表の影響を受けずに走れる様になり速度も上がる。また、頭の処理能力も少し上がる。


アシュのおっちゃんが何か「おおっ!!」と驚いている……アシュのおっちゃんにまで鑑定のイメージを頭の中で見せたな……。ちゃんと一言言ってからやりなさいよ。


「コレはアシュのおっちゃんが装備した方が良さそうだなぁ。接近戦専門でやってるからね」


「良いのか?ラダルにも使い勝手が良いんじゃないか?」


「恐らくあのデュラハンの動きはこの指輪の力が有ってこそだろうから、デュラハンの大剣を使っているアシュのおっちゃんが持った方が良いはずだよ。属性も無しだからね、丁度良いよ」


「分かった、それならばオレが装備しようか」


アシュのおっちゃんは俊足の指輪を装備した。


「少し魔力を入れてみると身体が軽くなった感じだな」


俺はアシュのおっちゃんの足元を見た。


「あー!、ホントに浮いてる!スゲー!!」


「本当か?浮いてるという実感が無いぞ……不思議だ」


こりゃあ当たりの道具でしょ??コレならば水の上も走れそうだぞ。

ついでだからデュラハンのドロップした大剣と盾も鑑定させた。


『首狩りの大剣』

レベル:A 属性:なし

魔力を入れると硬度と切れ味が上昇させる。また、魔法を剣に纏わせる魔法剣としても使用出来る。纏わせられる魔法は属性問わず2種類まで。効果は5分間。


『首狩りの盾』

レベル:A 属性:なし

魔力を入れると硬度と魔法防御が上昇する。また、盾に魔法をチャージして置くと相手が盾に攻撃を当てた際に、チャージしてある魔法が発動して相手を攻撃する。チャージ出来る魔法は属性問わず一つだけ。効果は15分間。


おいおい……結構な性能じゃないのよ!

アシュのおっちゃんなら合成魔法も有るし、あの大剣を使いこなせるぞ。俺の持ってる盾も使い方次第でかなり面白いぞ。


「コレは……思ってたよりも良い大剣だったな」


「ほら、ハルバートと取り替えて正解だったでしょ?」


「うーん……」


イヤイヤ、考えるまでも無いでしょうに!!何その「うーん」って?漏れそうなのか?


『ガントレット』

クラス︰D 属性︰無し

魔力を入れるとかなり 硬度が増す。外からの魔力を防ぎ易く、内からの魔力を通しやすい。


『剛柔のチェストアーマー』

クラス︰C 属性︰無し

魔力を入れるとかなり 硬度が増す。外からの魔力を防ぐ。動きを妨げない様に柔軟性も兼ね備えている。


ガントレットは俺のと変わらない物だった。チェストアーマーは中々の物だね、動きやすいのはアシュのおっちゃんには持って来いだな。


一通り鑑定を終えるとキラが「ニャッ!」と鳴いた。そだ、冒険者ギルドでコイツと俺の冒険者登録をしないとな……つか王宮にキラを入れても良かったのか??そんな事を考えてると部屋のドアがノックされた。


「ローレスです。宜しいでしょうか?」


「あ!ローレスさん!どうぞ!」


俺は丁度良いとばかりにローレスさんから冒険者ギルドに行く許可を貰おうとしてたのだが、入って来たのはローレスさんだけでは無く、妙な魔導具を持った連中とただ者では無い気配の男を連れて来ていた。


「アシュトレイ殿、ラダル殿、此方は冒険者ギルドのギルドマスターのハインディール殿です。ラダル殿とキラの登録をさせる為に来てもらいました」


マジか……ローレスさんの手回しの良さ半端ないな……どっかのオオサコさんかな?


「それはわざわざお出で頂いてお手数お掛けします。俺はラダルと言います」


「いやいや……デュラハンスレイヤー殿に来て頂かなくとも此方が参れば済む事……州王様の客人ですからな。私はギルドマスターのハインディールと申します」


「ハインディール殿、私は冒険者のアシュトレイと言います。イーガルドでは冒険者登録はしているのだが、此方とは接点が有るのだろうか?」


「それならば問題はありません。向こうの登録は此方でも反映されますので御安心を」


「そうですか、良かった。ではこちらがギルド証です」


アシュのおっちゃんが差し出したのは青いカードである。ハインディールさんはそれを受け取り、持って来た魔導具に差し込んで確認をしていた。


「ランクが青銅ですか……それでデュラハンを?」


「ああ、実はこの大陸には転移の罠で飛ばされて来たのですよ。それで故郷に帰る為に旅をしていましてね……ランク上げはほとんどせずにここまでやって来たのでね」


「て、転移の……噂には聞いていますが、生き残る者は中々居ないと……良くご無事でしたね?」


「たまたま助けられたので、運が良かったです。ラダルは怪我をしなかったんだろ?」


「うん、俺は特製のリュックと盾を背負ってたからね。戦争の途中だったからさ」


「戦争?」


「俺はカルディナス侯爵領の魔法兵だったからね。コレでも伍長を務めてたんだよ」


「何と……歳はいくつで?」


「今は11歳……もうすぐ12歳か。軍にスカウトされたのは9歳の頃だよ」


「なるほど……向こうではその歳の子は全員兵士に?」


「まさか。俺は魔法が使えたのでそれでだよ。軍ではもちろん最年少だった」


「ほう……ではスカウトされた頃から相当な魔法の腕前だったという事ですな?」


「まあ、俺より速く魔法を撃てる奴は居なかったね。向こうでは教育係みたいにやり方を教えてたしね」


「では天才魔法兵という事だったのですな。なるほど……」


「ラダルの魔法の起動はとんでもなく速いですよ。無詠唱ですし……しかも合成魔法をです」


「なっ!無詠唱で合成魔法ですと??」


「上位魔法は操れないので色々と工夫しました」


「……何と言うか……では、取り敢えずこちらの水晶に手をかざして下さい」


俺は言われた通りに水晶に手をかざしてみる。


「ほほう……火、水、土……そして闇……4属性を操るのですな。大したものだ。しかも珍しい闇の魔法も使える様ですな」


「はい。低位魔法だけですけどね……」


次はアシュのおっちゃんが水晶に手をかざす。アシュのおっちゃんは火と風……上位魔法が操れるので炎と雷の魔法が使えるのだ。羨ましいよ……雷の魔法とかスゲェ憧れたもんな……つかこの人が雷魔法を使ったのを見た事が無いわ……いつも武器振り回してるからね!!


「アシュトレイ殿は大剣使いとお聞きしましたが?」


「ええ、この大剣はデュラハンが落としたモノです。ちなみにそのま……イテテテ」


「どうかされましたか??」


「あ、いえいえ何とも……アシュのおっちゃんは最初から大剣使いでしたよ!ね?」


「……あ、ああそうだとも。さ、最初から大剣使いさ!」


危なくハルバートの話をしそうになってたな……それ言うとゴブリンスレイヤーの件を蒸し返されるかも知れないでしょ!!


「しかし、これだけの魔法適正があって大剣使いとは……一体どういう事ですかな?」


「それは……カッコイイからですよ!!決まってるじゃないですか!ハッハッハ!!」


「……そ、そうですか……なるほど……」


ハインディールさんも困ってるわ……まあ、普通はその反応だよな。


「それで、その猫……の魔物がキマイラなのですな?」


「ニャッ!」


「ええ、俺のけ……使役してる魔物です。名前はキラと言います」


「ほほう……良く使役出来ましたな。我々の知る限りキマイラを使役出来た者は皆無なのですがね」


「へ?そうなんですか?」


「ええ、キマイラは合成獣ですからね。合成されてる細胞全てを使役出来ないと駄目なはずなのですが……随分と懐いてますね……」


「フハハハ!!ハインディール殿!!そこがデュラハンスレイヤー殿の成せる技という事ですぞ!!」


「ふむ……確かにデュラハンを倒すほどの者であればその位は出来て然るべきか……では、登録してしまいましょう」


ローレスさんのゴリ押しが効いたな……流石に眷属ですとか言うとマズいからな……。


魔導具から銀色のカードが出て来た……コレは……。


「では、お二人共に銀色のギルド証をお渡しします。これは銀級の証となりますので大事になさって下さい。ギスダルの国内ではこのギルド証は身分証となりますので村でも使えますよ。それとキラにはこの首輪を付けてください。コレは使役獣の証なので着けていれば攻撃はされませんので御安心下さい」


渡されたキラの首輪は銀色の太めのチェーンで五芒星が象られたペンダントがぶら下がっている。

俺がキラに首輪を掛けてやるとチェーンが自然と縮んで抜けない程度に調整される……スゲェな。


「ニャッ!」


「キラ、気に入ったみたいですよ」


「そうですか、それは良かった。ダメな子も居るからその場合はこの形の焼印を押す事になるんで……」


「あー、それだとキラには無理ですね。直ぐに再生してしまうので」


「なるほど……キマイラの超再生ですね?そうか……そういう子にも何か考えないとな」


ハインディールさんは色々と使役獣に関して熱心に対応する人の様だね。

ハインディールさんからはギルド証の等級について教えてもらった。等級は下から鉄、青銅、銅、銀、金、白金となる。白金級は名誉職の様なものであり今はその地位にいる者は存在しないと言う。つまりは実質金級が最高位となる。

なお、ギルド証は山脈を越えた向こう側でも認知されているらしい。冒険者ギルドも存在はするらしいが長い戦争の為に横との繋がりが絶たれていると言う。


「山脈の向こう側では六つの国が百年以上戦争をしていると言われております。国旗の色でその国は判断出来ますのでわかりやすいかと。ちなみに赤、青、黄、緑、茶、黒の六つです。山脈の向こう側に行くには、マカラック山の中腹にある『千年洞窟』を踏破しなければなりません。道を間違えると永久に迷い続ける……そんな伝説から『千年洞窟』と名付けられております」


山脈を越える手段が判明したのは良かったが……厄介そうだな……『千年洞窟』か……。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

冒険者ギルドの人間がやって来ました。

銀級冒険者は設定的にはかなりの上位クラスとなります。デュラハンスレイヤーの称号はそれ程のものという事になりますね。


毎日沢山の応援を頂いて感謝しております。

PV5万超えました、本当にありがたいです。

更新頑張りますので宜しくお願い致します。

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