第58話 ロザリアとブリジッタ

王宮で歓待を受けて贅沢三昧と引替えに心労と暴飲暴食で心と身体がボロボロの二人です……。

州王様から随分と引き止められたのだが、故郷に帰る旅を続けると話すと泣く泣く折れてくれた……良かった……ホントに良かった……。


「山脈の向こう側に行くと申しておったな?……どの位まで話を聞いておる?」


「何でも六国で戦争が百年以上続いているとか……」


「うむ。こちらと違い国をまたいで移動をする事は容易ではないぞ」


「そうかも知れませんね……まあ、最悪は傭兵でもやりながら渡り歩くのも考えなければですね。幸いラダルは魔法兵出身ですし、冒険者のオレも何とか格好はつくかと」


「傭兵か……まあ、そんな手も使えなくも無いと思うが……」


「向こうに行って考えても良いですし……」


「ん……そうだ、アレに相談するのも手か……」


「アレに……とは?」


「聖都ギスダル……教皇様の居られる教会本部のある街だか、そこにな『教皇の知恵者』と言われてる男がいる。名はローディアス=リストリアという……今では枢機卿だったはずだが……その男ならば何か知恵を授けてくれるやも知れぬ。書状を渡す故会ってみると良いだろう」


「それは……色々とご配慮……有難うございます」


「大した事は無い。ただし変わり者故無礼な事を言うかもしれぬが許してやって欲しい。根は悪くは無いのだが……」


「……頭に入れておきますので御安心を」


「うむ、では名残惜しいがそなた達の旅が上手くゆくように祈っておるぞ。……キラよ……さらばじゃ……元気でな……」


「ニャッ!!」


やっぱりキラの事が気になってるのね……何か申し訳ないです……。

俺達は州王様にお礼を言って謁見の間を後にする。

そして王宮を出る際にローレスさんから州王様の書状が手渡された。本当にありがたい。


「ローレスさん本当にお世話になりました。ローレスさんの事は一生忘れないと思います」


「私もですぞ!ラダル殿!特に振舞ってもらった料理の数々は今でもハッキリとな!フハハハ!!」


「ローレス殿、色々世話をかけて申し訳無かった。感謝しております」


「何のこれしき!アシュトレイ殿も達者でな!旅の無事を祈っておるぞ!」


「それじゃあ、さようなら」


「さらばだ!!デュラハンスレイヤーズ!!」


いつもより少し元気なローレスさんに“明るく見送ろう”という意気が感じられて、あ〜ローレスさんらしいなぁって思ったよ。そう、この人はコレが最期だと分かっているのだ……ええ人やな。

ローレスさんは俺達が見えなくなるまで見送ってくれた。



王宮を出た俺達は冒険者ギルドに向かう。一体ハインディールさんは何の用なのだろう?

冒険者ギルドに到着すると早速ギルド職員にギルマスの部屋に連れて行かれる。


「良く来てくれた、まあ、座ってくれ」


ソファーに座るとハインディールさんはギルド職員にお茶を頼んでから俺達の前に座る。


「早速で悪いのだが、警護の依頼をしたいのだ」


「警護……ですか?」


「ああ、実は先方からのご指名でな……一度断ったのだが、是非にと言われてなあ……」


「俺達は旅の途中だからね。東の山脈に向かってるんだけど、そっち方面なら構わない……あっ、聖都には行きますけどね」


「何!聖都だって??そりゃあ好都合だ!その方は聖都に連れて行って欲しいんだよ」


「ほう……聖都か。しかし厄介な御仁ならお断りしますよ。此方にも仕事は選ぶ権利は有るからな」


アシュのおっちゃんは強気に言ってるね……まあ面倒なのは俺も関わりたくは無いからね。


「うむ……それは……大丈夫だ……」


どう見ても大丈夫そうじゃない顔ですよ!!俺は流石にハインディールさんにツッコミを入れる事にした。


「そんな顔色で言われても……」


「この話しは無しだ。断ってくれ」


アシュのおっちゃんは明らかにやる気が無い。警護の依頼で何かあったな……。


「そう言わずに頼む……」


「ならば隠し事をせずに話す事だ。気が変わるかもしれんぞ?」


「……隠し事などは……」


ハインディールさんはかなり無理をしてるみたいだ。よほど面倒臭い御仁とみえるね!

俺達が断ろうとしたその時、突然ドアが開いて妙な格好の女の子が現れた。


「デュラハンスレイヤーが来てるんですって?!早く私の警護をさせて頂戴!」


「なっ!ロザリア様!」


コレはやばそうなのが来たな……面倒事になるの確定だ。


「その件ならお断りしました。我々はもう行きますね」


「なっ!何ですって!?この私の……ロザリア=リストリアの依頼を断るって言うの!?」


「ん?……今なんて言った?」


「私の事を知っているのね?!なら話は早いわ!!」


「今なんて言ったか聞いてんの!オタクの事は知らん!!」


「は、はあ?ロザリア=リストリアを知らないなんてアンタ達正気なの?何処の田舎者なのかしら!!」


「あんたなんちゃらリストリアと言ったな?ローディアス=リストリアって人を知ってるか?」


「な、なんちゃら……し、失礼ね!!ローディアスは私の父よ!!枢機卿なのだからね!!」


「おお、なるほど……こりゃあ変わり者だな……」


「そうか、家系なんだね……変人って遺伝するんだね……気の毒に……」


ロザリアとか言う娘は絶句していたが、俺達は構わすにこう言った。


「州王様からの紹介でアンタの親父さんに会いに行く事になってたんだ。まあ、仕方ないから連れてってやるけど舐めた真似したらジャングルに置いてくからそう思ってね」


「な……何ですって?……」


「ハッキリ言っとくぞ。俺達は別にこの国の人間じゃないの。だからアンタの父親が枢機卿だろうがホウホケキョだろうがどうでもいいの。足で纏いになるなら平気で魔物の森に置いてくから?分かりますぅ?」


「そ、そんな事して……タダで済むと思ってるの!?」


「別に……オレ達はこのまま連れて行かなくても構わんしな。面倒はゴメンだからな。これ以上ギャンギャン騒ぐなら依頼を断って最初から連れて行かないだけだ」


「俺達は断る権利があるからさ。無理に連れてくとは言わないよ。後はご勝手にどうぞ」


「……わ、分かったわよ……」


「ホントに分かったのかな?大人しくしてるの約束出来る?嘘ついたら針千本飲ますよ」


「は、は、針千本……」


「もう、その辺でご勘弁願えませんか?デュラハンスレイヤーの方たち」


ソコに現れたのは紫色の髪をした如何にも冒険者という女性だった。


「私は彼女の護衛役のブリジッタよ。この子の面倒は私が見るから安心して頂戴」


「なんだ、護衛役が居るなら俺達は要らなくね?」


「それがそうでも無いのよ……この先にあるルイード峡谷にはアレが居るから……」


「アレって?」


「あら、まさか知らなかったの?ちょっと!ギルマスはまだ教えて無いの??」


「いや、教えようとした矢先にロザリア様が……」


「一体何が居るんですか?その……何とか峡谷に……」


「ルイード峡谷には最近居着いた厄介な魔物がいるのよ……サイクロプスって言う厄介な巨人がね……」


「サ、サイクロプスだと??」


アシュのおっちゃんが珍しく驚いている。サイクロプスっていうとあの一つ目の巨人だよな。やっぱり強いのかな?


「サイクロプスって強いの?」


「ああ……強いしとにかくデカい。暴れるだけで地形が変わる」


「マジか……そんなの居るんだ。知らなかったぜ……」


《サイクロプスの弱点は眼なの》


突然『眼』が話に割り込んで来た。ブリジッタとロザリアはビックリした表情で浮いてる『眼』を見ていた。


「ああ、確かにサイクロプスの弱点は眼なのだが狙うのはかなり難しいぞ」


《そんな事ないの。我と主が居れば大丈夫なの》


「あー俺か『眼』を使ってサイクロプスの眼を潰すって感じ?」


「そう簡単には行かないぞ。意外と頭も良いしな」


《だから夜に倒すの》


「そうか!暗視モードか!なーるほど……」


「あんしもーど??」


「前に見つけた鍵で暗闇でも見える眼を手に入れたのさ。ほらゴブリンの……あっ……」


「あ、ああ……アレな……あの時な……」


「はて?ゴブリンとは?」


「い、いやいや……ゴブリンだったかな?違ったんじゃないか?」


「そ、そうだ……遺跡だったかな?アハハ……」


危うくゴブリンキングの話をするとこだった……危な過ぎる……。

まあ、とりあえずサイクロプスの件は夜中にやっつけるって事で何とかなりそうだな!


「とにかく夜中まで待って俺と『眼』でサイクロプスの眼を狙うよ」


「うむ……その手で上手く行けば良いが……」


「まあ、『隠密』使ってれば簡単に近寄れると思うしね」


「とにかくあらゆる状況を想定した上でしっかり対処しよう。何があっても良いようにな」




◇◇◇◇◇◇◇◇




いつもお読み頂きありがとうございます。

ローレスとはここでお別れしまして、新しいキャラが出てまいりました。

ロザリアはラダルと歳が近く、わがままお嬢様設定です。ブリジッタはソロ冒険者で凄腕設定です。


皆様の応援にいつも感謝しております。

フォロワーさんが増えてくれるのは本当に嬉しいものですね。

星も沢山の方に入れて頂いております。

これからも何卒よろしくお願いいたします。

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