江藤亮平、配属部署にツッコミ入れる!

俺、江藤亮平は佐賀県庁に就職したばかりの男である。


年は22歳。身長は170センチそこそこで、顔は悪くはないと思っている。


東京の大学を卒業後地元に戻り、県職員として仕事をすることになったため、大学まで染めていた茶色の髪を地毛の色である黒に染め直して、ばっさりと切った。


慣れない背広に袖を通して、借りたばかりのアパートから出てきたわけだ。


ちなみに佐賀の物件は安い!


違うか。東京の家賃が高いんだよ。


四万円の家賃だと狭いアパートでしか暮らせなかった東京暮らしだった俺は、同じ値段でそこそこの部屋を借りれることに感動してしまっている。


佐賀にずっといたら当たり前に思えることも、東京でそれなりに都会にまぎれていると、新たな発見があったりするものだ。


そんなこと考えながら、アパートから自転車で15分ほどのところにある県庁へ向かい、これから俺の所属する部署のある部屋へと向かうところだ。


それにしても、この部署名って……


俺は改めて辞令の書かれた紙をみる。



『エルフがさが県民の願い叶えます課』


いったいどういう部署だ!?


何でも屋か?


いやいや、


その前にエルフってなんだよ!?



エルフって、あのエルフか?


よくファンタジーに出てくるエルフですかーー!?



そうツッコミたかったのだが、さすがに最初からそれをいうのは控えた。


俺は空気が読めるんだよ。

まだ、社会人になってそうたってないが、それなりに都会に揉まれているからな。


そして、県庁へと入り、そのへんてこりんな名前の付いた部署を案内図で探す。


あれ?


ない?


いくら探してもないのだ。


これってなにかのいたずらか!?


もう一度辞令をみる。


本物だ。


ちゃんと知事の印鑑も打たれてる。


なら、なぜないのだ?


もう一度県庁の案内図をみる。



「あれれ? 新人ですかーー?」


すると、後ろから声がした。子供の声だ。


なぜ、こんなところに子供の声がする?


この階は一般人が入れない場所じゃなかっただろうかと思いながら、俺は振り返った。


するとそこにはかわいらしい人形が目の前にあったのだ。


有明海の干潟に生息するムツゴロウをキャラクター化したゆるキャラだ。


そのキャラクターから声が聞こえてきた。


ってなんでゆるキャラがこんなところにいるんだ?


あっ県庁だからなのか!!?


いつもこんなかっこうしてきるのか?


「あんた、新人の江藤亮平くんなろう?」


俺が内心ツッコミを入れていると、ムツゴロウのゆるキャラが羽をバタつかせながら尋ねた。


「はい。えっと」


「どこにあるかわからんとやろう? 『エルサガ課』は地下ばい」


「エルサガ?」


「『エルフがサガ県民の願いを叶えます課』の略たい。その階段からいけるけん」


俺はムツゴロウのゆるキャラが示した方向をみる。たしかにそこには『地下』と書かれた階段があった。


「ありがとうございます」


「よかよか、はよういこんね。もう就業時間になるばい」


「はい」


ムツゴロウのゆるキャラのことはさておいて、とにかく行くとするか。


俺は階段を降りる。


つうか、佐賀県庁に地下なんてあったのか?


しかも地下一階じゃねえぞ?


B1


B2



B12


おーい


なんで地上よりも地下のほうが階数多いんだよ!?


やがてたどり着いたのが


『エルフがサガ県民の願いを叶えます課』だった。














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