03話.前途多難な旅立ち

「だから勝手に行くのはマズいって言ったじゃん!!!」


 ファウストの声が響き渡る。

普段大人しい人ほど、怒ったときはコワイものである。


「ファウストよ、落ち着くのだ。

 いつ伝承の日が来るのかもわからない状況で、俺たちに無駄にできる時間はないのだから仕方あるまい」


「アイオンの言う通りだぜ!

 それにこれ以上あの村で修行することなんてないだろ??」


 ファウストを落ち着かせようとするアイオンとクラウスの言葉を聞いたファウストは、思わず苦笑いをしてしまった。


「二人の言いたいことはわかるよ。

 でも何の準備せずに、夜逃げみたいに出発することはなかったんじゃないかって話をしてるんだ!」


「村長たちが素直に旅立たせてくれるとは思えなかったし、仕方がないのではないか?」


「はぁ……

 じゃあ、この食料がない! お金がない!! の状況をアイオンがなんとかしてくれるってことだね??」


 ファウストの言葉を聞いた二人は絶句した。

なぜなら旅をするだけのお金も食料も持ち合わせていなかったから、気まずそうな表情で黙るしかなかった。


「と、とりあえず……

 動物を狩りながら、一番近い街に立ち寄るってことでどうだろう……」


バツの悪い表情を浮かべたアイオンは、これだけを言うので精一杯であった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 それから約2日、狩りで仕留めた獲物でなんとか飢えを凌いだ3人は、ついに目的の街を見つけた。


「やっとだ……

 あそこで数日仕事をこなしつつ、食料を手配しよう……」


疲労困憊のアイオンがそういうと二人は無言で頷き、そのまま街へと向かった。

3人は特に揉めたりすることもなく街へと入れたが、街中の雰囲気に妙な違和感を覚えた。

何故なら街全体があまりにも静かすぎるのであった。


「これは……、あまりにも静かすぎないか?」


「あぁ、何かあった……ってことだろうな」


「ここで話しててもわからないままだよ。

 どうせ仕事探しのために冒険者ギルドに行くんだ、そこで聞いてみようよ」


ファウストは、動揺している二人を宥めてなだめて冒険者ギルドに向かうことを提案するのだった。


 この世界には「冒険者ギルド」というものが点在している。

そこは様々な依頼の受付所であり、斡旋所でもあった。

村を出たことのない3人ではあったが、その存在は知っており今回の旅の路銀稼ぎろぎんかせぎをするためにこの街で冒険者登録をすることを考えていた。


冒険者ギルドについた3人は、今まで感じていた違和感が勘違いではなく、非常事態によるものだということを感じとっていた。


意を決して中に入ったギルドの壁にはずらりと掲示板が並んでおり、その奥には受付であろうと思われるカウンターがあった。

また、部屋の片隅で食堂も併設しているようで、そこで数人の男が静かに酒を飲んでいた。


「昼間っから辛気臭い場所だな……

 冒険者ギルドってこんなに活気のない場所なのか?」


クラウスがそんな失礼なことをこぼしたが、それに反応を示すものは誰一人としていなかった。


「クラウス、そんな失礼なことを言うものではない。

 とりあえず冒険者登録をしにいこう、おそらくあのカウンターであろう」


クラウスのことを窘めたたしなめたアイオンは、2人を連れてカウンターへと向かう。

そして、そこにいた無気力な表情をした女性に冒険者登録をしたいことを告げた。


「え? あ、あぁ……

 ごめんなさい、今は登録とか無理だから……」


それだけ言うと女性は口を閉ざしてしまった。

取り付く島もないといった感じの女性の対応にアイオンは言葉を失うしかなかった。

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