04話.街の実情

「なぁ、おっさん。

 この街になんかあったのか?」


「あぁ?」


「あーわりぃわりぃ、店員さん!

 この人に同じやつのおかわりを!」


 クラウスは、ギルドの片隅で酒を飲んでいた男に声をかけていた。

最初は怪訝そうけげんそうにしていた男であったが、クラウスが酒を奢ると態度を軟化させた。


「お、おう、ありがとな。

 で、何の用だ?」


「この街の異常なまでの静けさ、ギルドのこの状況……

 明らかに何かあったと思うんだが、何か知らないかって思ってさ」


「お前は……

 今日この街についたところか?

 また悪いタイミングに来たものだな……、実は……」


男はゆっくりと話し始めた。


「この街は元々とある大物商人が仕切っていて、それなりに賑わっている街だった。

 しかしつい先日、その商人の一人娘が誘拐される事件が起きた。

 当然そのことに怒った商人はギルドに解決を依頼して、ギルドはこの街にいた冒険者の中で最強である『疾風のジン』をはじめとする錚々たるそうそうたる冒険者を集めて事件を解決しようとした。

 のだが……

 作戦開始の直前に『疾風のジン』たちが姿をくらませた、依頼主の商人を誘拐したという置手紙だけ残してな……

 おかげで街もギルドも大混乱さ。

 そして、収拾に困ったギルドマスターが王都のギルドに助けを求めに出て行ったのが、昨日の朝って感じだな」


街の現状を教えてもらったクラウスたちは、一旦ギルドを後にした。

そして今後のことを話し合うためと旅の疲れをとるために宿へと向かった。


「クラウス、旅の資金が足りないと言っているときに勝手にあーいうことをしないでくれ」


「はぁ……

 じゃあアイオンに任せておいたらこの街の情報を聞き出せたのかい?」


「まったく……

 こんなときに喧嘩しないでくれよ。

 ここの宿代も含めて必要なお金は使うしかないんだからさ」


ファウストの言葉で少し冷静さを取り戻した二人は互いに謝罪した。

そして、今後どうするかという話に移る。


「このままここにいてもどうにもならない。

 俺はここで少し休んだら、次の街に向かうべきだと思う」


「はぁ!?

 ふざけているのか、アイオン!!

 どう考えてもその疾風のやつが怪しいだろ!」


「そうだろうな、でも俺たちには関係のない話だよな?

 俺たちは伝承について知るために急いで王都に向かわなければならない。

 そして、その旅のための資金を早く集めなくてはいけない。

 ならば早く次の街まで行き、そこで冒険者登録するべきだと思う」


「アイオン!!!」


クラウスはアイオンが言葉を最後まで言い切るか言い切らないかというタイミングで飛び掛かり、胸ぐらを掴んだ。

そして、殴りかかろうとするクラウスをファウストが止める。


「クラウス!!

 二人とも落ち着いて!!!」


「落ち着いていられるものか!

 目の前の事件を無視するなんて俺にはできない!!」


「ボクはどっちも間違ってはいないと思うよ。

 でも今回はクラウスに賛成かな」


「ファウストまでなぜ!!」


「色々と思うところはあるけど……

 ボクたちは『文明崩壊の伝承』という謎だらけのものを解決しようとしているよね?

 それなのに、こんなわかりやすい事件も解決できない人にそんなことできるの? って思うし、単純にイラっとしちゃったからってのもあるかな」


満面の笑みのファウスト。

アイオンたちは顔を引きつらせつつ、ファウストの意見に同意するのだった。

そして、3人は今から宿で休みをとって、深夜行動を開始することを決めたのであった。

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