#13 Operación Mónaco. Ⅱ

ある人は若者に問うた。


そして、私は言った。「ああ、富豪よ、主よ。ご覧のとおり、私はまだ若くて、どう語っていいかわかりません。」





エレミア記/第一章-6より。


─── 出港して11日目・スペイン・ビルバオ付近。




ひらすらベイジャ・フローの乗組員たちは海の波と併せて、暮らしていた。




〈ロナック〉ふぅ〜……




と、ロナックは操縦室でタバコに火を点ける。




そこにラディが操縦室にやって来る。




〈ラディ〉ロナック




〈ロナック〉ん? ラディか。どうだ? そっちは?




〈ラディ〉特に変わりはないよ。2人とも順調に仕事してるし、道も穏やかで変わったことはない




〈ロナック〉そうか。代わるか?




〈ラディ〉あぁ。そうだな




〈ロナック〉ラディ、いまはアイスランド抜けて、そろそろイギリス付近だ




〈ラディ〉わかった




〈ロナック〉予定としては、スペインのそのまま真っ直ぐ行かずイギリス回ってモナコに行く




〈ラディ〉わかってるよ、大丈夫だ




〈ロナック〉そうだな、天下無敵な頭脳を持ったラディだからな




〈ラディ〉ラディ様だ




〈ロナック〉そうか、じゃあなラディ様




ロナックは操縦のシートから立ち上がり、ラディに操縦を代わる。




〈ロナック〉頼んだ




〈ラディ〉ああ




ロナックはタバコを咥えながら、操縦室を抜けると、すぐ右にある階段を上り、甲板に出る。




すると、監視室には双眼鏡を持ったサルがいる。




〈ロナック〉大丈夫か? サル




〈サル〉ん? 俺は大丈夫。少し寒いな




監視室は小さな尖った穴の中にある。中はガラス張りになっていて辺りを見ることが出来る。上には何も無く、雨が降るとびしょ濡れになる。




〈ロナック〉まあ、アイスランドを抜けたところだからな。まだそんな近づいてないとはいえ、少し冷える




〈サル〉ああ。そうだな




〈ロナック〉サル、その服中々イケてるな


〈サル〉ん? これか? ラディになにか着るもの聞いたらこれ渡された




サルは寒くてラディに聞いたところ、今着ているなにやら赤い派手なモコモコの大きなクッション性のある厚着を着ている。




〈サル〉なあ、ロナック。少し話をしないか?




〈ロナック〉ああ




〈サル〉質問ゲームでどうだ? お互い質問し合って答える。もちろん言いたくないことは言わなくていい




〈ロナック〉なるほどね。いいぜ




〈サル〉じゃあ俺から。オロロゾの日ってなんだ?




〈ロナック〉昔グアテマラで活躍したオロロゾって人物の命日だ




〈サル〉なるほど、じゃあ……




〈ロナック〉まて次は俺だ。お前が国際的な仕事を目指した理由は?




〈サル〉昔、アンゴラの作家ペペテラのマヨンベを読んでからポルトガル語に興味を持った。そこから、南米やアフリカ大陸に関わりたいと以前の仕事に




〈ロナック〉ほう、なるほど。意外だな。もっとコエーリョとか読んでるのかと思った。


マヨンベも言い作品だ




〈サル〉コエーリョも読むぞ。でもアルケミストと不倫しか読んだことない




〈ロナック〉コエーリョはいいぞ、面白い




〈サル〉次の質問だ。そのオロロゾって誰だ? あの日の新聞もみた。君になにか関係があるんじゃないか?




〈ロナック〉…… ノーコメント




〈サル〉そうか、次はロナック




〈ロナック〉お前なぜ初日であのスケスケのシャツ着てきた?




〈サル〉なんでって倉庫作業って聞いてたし、汚れるかもって、それで着た




〈ロナック〉中々受けてたな、特にニーノに




〈サル〉たしかにな。くっそ笑ってた




〈ロナック〉さて、次だな




〈サル〉ああ。ロナック、君の家族は?




〈ロナック〉さあな? どこかに居るんじゃないか?




〈サル〉そうか、なあここからは俺が幾つか質問する。家族構成は?




〈ロナック〉さあ? 多分親と妹がいるかもな




〈サル〉そうか。次だ、あの2人とはどこで?




〈ロナック〉ニーノはジョージアで、ラディは教えられない




〈サル〉いまの仕事する前はなにを?




〈ロナック〉ただの無線士だ




〈サル〉え?




〈ロナック〉冗談だ。さて中で温かいコーヒーでも淹れてくる。質問ゲームはおしまいだ




〈サル 〉え、ああわかった


〈ロナック〉サル、いずれわかるさ




と、言いながら中へ戻った。




〈サル〉いずれね……




今、サルの頭の中は色々考えていた。「無線士なのは嘘ではない。なぜなら無線機の知識が半端ないから。だが、真実とも限らない」


サルはそう考えていた。




そこにニーノがやってくる。




〈ニーノ〉サル、お前ロナックに質問責めしたんだって?




〈サル〉ん? そんなだよ




〈ニーノ〉あのな、あいつはイカれた堅物人間だぜ? 話すわけなかろう




〈サル〉そうだな。生活してて思う




〈ニーノ〉ならやめとけ。それにしつこいやつは嫌われるぞ?




〈サル〉ああ




〈ニーノ〉もうすぐイギリスだって




〈サル〉そうか、もうそんなところか。暖かくなったな。服脱ぐよ




と、サルは今着ている厚着を脱いだ。




〈サル〉ニーノ、俺コーヒー飲んでくる




〈ニーノ〉はいよ




そう言うとサルは中に入った。




ニーノはタバコ吸いながら、甲板に座って海を観望している。




この日サルはもっとロナックの事を知ろうと質問ゲームをしたが、知り得たのはオロロゾの日がオロロゾの命日という事だけだった。他にもあったが、その答えは本人にだって答えられる。ロナック自身の事やそれ以外の事は何も教えてはくれなかった。




ロナックと言えば、このグアテマラでも口が固いでも有名だ。どんな石よりも固い。




サルは少し悲しくもあった。だが、いずれわかるという言葉に少し安心する部分も感情的にサルの中にはあった。




そして11日目が早くも過ぎていった。




予定では14日目に到着だ。このまま何も起こらずモナコに着くことができるのか。




ー #13 Operación Mónaco. Ⅱモナコ作戦2 ー つづく。

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