♯11 Millonario

ー ツバメ商事会内ー





今日はとても朝日が強く、リビングのカーテンの隙間から明るい光のやいばが刺さる。サルは起きると、まず家の外にあるポストの中身を覗いた。中には、新聞紙が入っていた。サルは家の中に入るとリビングのソファー、1番右端に腰をおろし座った。そして、新聞紙を見開いた。そこには昨日の出来事を新聞紙1面に大きくピックアップされていた。その場面は、ヒメネスの霊園(ロクス・サクレ)でロナックたちが墓石の前で手を合わし黙祷をする記事だった。


〈サル〉なんだ? オロロゾの日?


それはサルが気になっていたオロロゾの事だった。


その記事には「今年のオロロゾの日は大物で有名な悪党たちが導かれ集結し、稀に見る特別な日となった」などと賞賛の言葉が多く書かれていた。


読んでいると、そこにロナックが階段を降りてくる。


〈サル〉ロナック、このオロロゾの日ってなんだ?


〈ロナック〉なんてことないさ、ただのイベント事だ、知る人ぞ知るイベントだ


〈サル〉へえ〜


ロナックは水をコップについで飲んだ。


そこにドアのほうからノック音が聴こえる。ある男が来たようだ。


〈ロナック〉サル、ニーノたちを起こしてきてくれ


〈サル〉わかった


サルは階段をのぼると丁度ラディが起きてきた。


〈ラディ〉サル、どうかしたのか?


〈サル〉やあ。仕事だよ、下にきてくれ、おれはニーノを起こす


〈ラディ〉ああ、わかった


そういうと、サルはニーノの部屋をノックした。出る気配がない。サルはドアを開けると、ニーノはベッドで気持ち良さそうにぐっすりと寝てらっしゃる。サルはニーノの身体を揺らし、起こした。


〈サル〉ニーノ! おい! 起きてくれ! 仕事だよ!


〈ニーノ〉…… ん、ん? だれだ?


〈サル〉グウェダオだよ、ほらあのマカオ系マフィアの


そういうと、窓の白いカーテンを上げた。


〈ニーノ〉ん〜! 明るい……


〈サル〉朝なんだから当たり前だろ


〈ニーノ〉グウェダオの兄貴か、久しいな


サルとニーノは少し落ち着いてから部屋を出て下のリビングに降りた。


ソファーとソファーの真ん中にはテーブルがある。

入口に近いほうにグウェダオさんがソファーに座っている。幹部のシンシンは、隣で静かに立っている。


〈グウェダオ〉やあ! ニーノ、久しぶりだな!元気か!?


グウェダオは白いコートに奇抜なサングラスに少しお調子者だが、マカオ系マフィア北斗七星(ベイドウチーシン)のボスでもある。銃の腕前はピカイチ。


〈ニーノ〉ああ、元気だよ。話終わったか?


〈グウェダオ〉これから話すところさ


〈ロナック〉それで、どんな要件だ?


〈グウェダオ〉まあ、まずは経緯から話をしよう。おれはある物を届けるように依頼されたのだが


〈ロナック〉まて、この話聴かれてないよな?


〈グウェダオ〉安心しろ、ここには裏ルートで来てる。このシンシンは俺の付き人で信用できる。誰も見つれられないさ


〈ロナック〉そうか、続けてくれ


〈グウェダオ〉では、バーカン・ヴィニャルを知ってるか?


〈ロナック〉世界大富豪、フランス人のバーカン・ヴィニャル。トレーダーで、珍しいものに目がない超老人だな


〈グウェダオ〉そう、実はそのバーカンの依頼だ。あの人から、これを届けるようにと言われてる。


グウェダオは小さな小包を見せる。


〈グウェダオ〉これは花の種だ、これをバーカンのいるモナコに届ける。それはいい、問題はこの先だ。万が一ということを考えて部下に偽の種を持たせ、モナコに船で向かった。すると、どう言うわけか船は破壊された。メキシコ近くでな。しかも俺の持ち船舶すべて壊された


〈ラディ〉なるほど、種を狙う連中がいるってことか


〈グウェダオ〉そう。この種は彼が高値で買い取った品だ。その価値にきづいたやつか、あるいはただの俺への客か、どっちかだろう


〈ロナック〉バーカンは、植物が好きで集めてるらしいからな


〈グウェダオ〉そこでだ、俺の依頼だからやり遂げたいところだが、なにせ俺のすべての足が木っ端微塵になっちまった。それで信用できて、有名で少人数で完璧に遂行するお前らにこの依頼を受けてほしい。報酬は支払おう。ていうか頼める所がここしかない


〈ロナック〉ほう、珍しいこともあるんだな


〈グウェダオ〉どうだ?


〈ロナック〉…… サル、コーヒーを入れてくれ。あのコロンビア産のな、旦那もいるか?


〈グウェダオ〉オーケー、交渉成立だな。恩に着るよ。なあ、新顔(ニューフェイス)俺のコーヒーにはミルクを入れてくれ猫舌なんだ


すると、サルはコーヒーを入れ、グウェダオに差し出した。


〈サル〉ところで、その種はなんの花の種なんだ?


〈グウェンオ〉この種は珍しい種さ。あるスウェーデンの研究所がペルーと連携し開発した。白いカンナという花だ。


〈サル〉白いカンナ? でもそんなに珍しくないだろ?


〈グウェダオ〉いや、ところがこの白いカンナは透明のような薄い色をしているそうだ。俺は1度、彼の部屋に邪魔した事あってな、まだマフィア当初資金が足りなくて借りに行ったのさ。その時、大きな植物園のような部屋があった。そこには珍しい植物があった。カンナが好きなようで色んな色のカンナがあったが、透明で透き通るような薄い色だけはなかった。だから今回、彼は研究所と交渉し半分買い取る事に成功した


〈ロナック〉バーカンは、表は株式トレーダーだがマフィアや闇金、クラブなどの資金借りをしている事で有名だ


〈サル〉でもなんでマフィアたちに貸すんだ?


〈ロナック〉あの人は元軍人でもある。お歳の方だ、そこから流れたんだろう、金持ちだしな


〈サル〉なるほど


〈グウェダオ〉変わり者だ


〈サル〉1つ、その高値っていくらなんだ?


〈グウェダオ〉さあな? 正確には知らん。だが、ある程度の価値はあると考えている。それを紐解くのはこのレターだ。あ、言うの忘れてた、このレターも届けることになってる。俺の所にきたが、一緒に届け戻してほしいそうだ


〈サル〉なるほど


〈グウェダオ〉ということで、この2つを宜しく頼むよ。あと、油断するなよ


〈ロナック〉ああ。よし、お前らベイジャ・フロー号に乗るぞ


そういうと、サルたちは準備をして車で船まで移動した。車を車庫に入れると、船に乗車した。


船に乗り、ロナックたちはメキシコ側ではなくカリブ海側から行くことにした。


船が海の波に揺られながら、サルは甲板で少し考え事をしていた。あのグウェダオさんが最後に言った事を気になり、その言葉をサルは揺られながら真剣に考える。

まだ、航海は始まったばかりだ、ここから先はモナコまで長い長い旅路になる。


そして、この先に待ち受ける野人達も目を光らせているようだ。


ー ♯11 Millonario. 大富豪 ー つづく

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