♯10 mori×risus

〈ファキレ〉すげえな、有名人が揃ってるな。こりゃ明日の新聞は大きく1面を飾るぞ




〈リガー〉はい!




記者のファキレと部下のリガーはこの一大イベントを写真に納めようと眼を凝らしてロナックたちを木の影からみていた。




ロナックたちは、どんどんと墓地に入っていく。




当たりはもう暗い。ロナックやホッショ、他の人たちはある墓地の目の前で止まり、見つめていた。






その灰色のよくある石の造りをした墓石には文字が彫ってあった。




『 A aventura faz bom sangue.




ー Requiescat in pace. Ororoso Nes Sandino ー 』




その文字をみて、ロナックはいつものように話した。




〈ロナック〉この言葉、久しぶりに聴いた




〈トスウ〉懐かしいな、オロロゾさんは素晴らしい人だった




〈マルディ〉冒険は良い血をつくる、あの言葉はあいつが口癖のように言っていた




〈ロナック〉マルさん




〈マルディ〉さっと済ませよう




あの鬼のようなガミガミうるさい整備士マルディさんもこの日だけはすごく優しい顔をしていた。まるで悲しそうなポーチュギースウォータードッグのような顔だ。




すると、他の人たちもオロロゾさんの墓石の前に集まり、静かに手を合わせ黙祷した。ロナックも黙祷をする。




木の影で観ている、ファキレとリガーはカメラの用意、ファキレは自ずとカメラのシャッターを切る。




〈ファキレ〉こりゃすげえ、こんなの滅多にみられない! リガー! 記事を書くからカメラ持っててくれ




〈リガー〉はい




ファキレはメモ帳に多くの単語や記事にする言葉を書いた。




ロナックは黙祷とともにあることがフラッシュバックする。昔の事だ。もう10年以上前、街で夕焼けで真っ赤に染まる中、ロナックは全身血だらけで固い地面に座りこんでいる。ビクついている。震えている。ロナックの前にはオロロゾが立っていた。銃で撃たれた、血を吐くオロロゾだった。オロロゾはロナックになにかを言った。笑顔で。そんな場面が頭を過ぎった。




悲しい事件だった。




暫くして、黙祷が終わり、ヒプノティック・シモセがロンサカパを墓の前にお供えをした。




〈シモセ〉このラム酒はオロロゾがすきだった




〈ロナック〉あぁ…… シモセさん……




〈シモセ 〉なんだ? なんか不安な事でもあるのか?


安心しろ、俺には良い後継者が付いてる、この仕事は終わらねぇ




〈ロナック〉ありがとうございます。頼みます




〈シモセ〉いいってことよ、あの子はいい子だな




〈ロナック〉恐縮です、そう言って貰えると




〈シモセ〉さてそろそろ帰るよ、あの子はいい子だが、まだ無茶をする、そのうちまた会おうロナック


そう言い、シモセは車に乗って、その場を後にした。




〈ラガルト〉ロナック、久しいな。あの時より勇ましくなったな。また会えるのを楽しみにしてるよ




ラガルトはロナックに一言言って墓地を後にした。




〈ロナック〉ああ




すると、今度はデメララが話しかけてきた。




〈デメララ〉ロナック、我々もそろそろおいとまさせて貰う。いい夜を




デメララはロナックに軽く会釈をした。すると、1人の女性がデメララに叫んだ。




〈ホーセズ〉デメララ! 俺はアンタをぶちのめすのを楽しみにしてる! この左眼の仇はまだ終わってない!




〈デメララ〉場所を考えろ、吠猫娘ワンワン・キャット・ガール。吠えると弱く見えるぞ、その眼帯もみすぼらしい




〈ホーセズ〉うるせえ! 覚えてろよ! 次会ったら……




〈デメララ〉ハイハイ! 次会ったらね! じゃあね皆の衆、ロナック




デメララは付き人のモルガンと共に帰って行った。


ホーセズは付き人のケツを蹴りあげて、帰った。イライラしていたのだろう。






〈トスウ〉ロナック、ホッショ、そろそろ俺達も




〈グウェダオ〉やあ、ロナック!久しぶりだ、また仕事を頼むからよろしく




〈ロナック〉ああ。さて帰るか




ロナックたちは帰り際、入口である男にあった。




ハイペリカム・アグラ、ラウルペリの隣のエレクタム都市警察署の警部だ。黒く重いスーツを着ている。いわばハードボイルド警部といったところだ。最近、警視に昇任した。




〈ロナック〉ハムさん




〈ハイペリカム〉やあ、ちょっと話せるか?




〈ロナック〉トスウ、ホッショ車で待っててくれ




〈トスウ〉はいよ




〈ホッショ〉早くしろよ、この後行くんだから




ロナックとハイペリカムは墓地の奥で話していた。この場所は2人きりになれる。一角の場所だ。




〈ハム〉ロナック、久しいな、最近どうだ




〈ロナック〉毎年会ってるでしょ。最近は部下が増えて仕事も楽になった




〈ハム〉そうか。吸うか? HOPEだ




ロナックはHOPEを1本貰って火をつける。




〈ロナック〉HOPEとは、変わってないな




〈ハム〉おれは過激な変化を好まない。だが、あいつが死んで過激な変化が訪れた、おれはあれからどうしたらいいのか、いまだに分からずにいる




〈ロナック〉それでラウルペリを離れたのか? そういえばケラス署長は元気か?




〈ハム〉ああ、元気だ、この前ルンルンでゴルフやってたよ。それに嫌になって離れたわけじゃない、なにかを見つけたくてエレクタムに行った




〈ロナック〉そうか。俺はあの時からこの霊園ロクス・サクレの仕事をしようかまよってた。結局社会のガンとして生きることを選んだ


すると、ハイペリカムはタバコを落とし踏みつけて神妙な顔で言った。




〈ハム〉なあ、ロナック。おれと組まないか? あんたは腕がいいし、冷静沈着な男だ、強い相棒になる。あんな仕事いつまで続けるつもりなんだ? これでは他のやつらと一緒だぞ




〈ロナック〉ハムさん、おれはあんたとは組まない。あとハムさんなら大丈夫だ、変われるさ、そのHOPEのようにな。じゃあもう帰る。警視昇任おめでとう




そう言い、その場を離れ背を向け歩き始めた。




〈ロナック〉ハムさん! 最後におれはその辺にいるゴロツキと一緒だよ、またな




〈ハム〉ロナック! そのハムさんはよせ! そのあだ名嫌いだ!




〈ハム〉まったくHOPE希望か…… 俺も帰るか




その場面を、ファキレとリガーが見ていた。




〈リガー〉先輩、一応シャッター切りましたが、これも記事にするんですか?




〈ファキレ〉…… これはいい、その写真消しておけ




〈リガー〉あ、はい!




〈ファキレ〉帰るぞ




〈リガー〉はい!




その頃ロナックは車にもどった。




〈トスウ〉やあ、終わったか? 待ってくれてるから、早く行くぞ




〈マルディ〉ちょいまった!




〈トスウ〉マルさん!? 帰ったんじゃあ?




〈マルディ〉帰ろうとは思ったんだけどな、一緒に付き合っていいか? 今日はそういう気分なんだ




〈トスウ〉え




〈マルディ〉大丈夫だ、車は乗ってきてない。珍しくバスできた。だが、バスは苦手だ




〈ロナック〉では行こう




マルディは車に乗った。そのため、2人は後部座席に居たがホッショが前に乗った。4人はヒメネスを離れ、ラウルペリへと向かって行った。




その他の連中もおのおの帰っていく。










その頃のツバメ商会ではニーノが暇で飲みに行こうと言い出した。




〈ニーノ〉おい! ひまだ!! 酒が飲みてえ! サル、ラディ呼んでこい! コーナーショップ行くぞ




〈サル〉え? 今から? わかったよ。ラディ! コーナーショップ行くって




〈ラディ〉あー、いやわかったよ、下でまってる……




〈サル〉ん? なんか様子が変だな。ニーノもう行けるぞ




〈ニーノ〉はいよ




3人は、コーナーショップに行くため車に乗って向かった。運転はもちろんラディだ。




〈ラディ〉ほんとに行くのか?




〈ニーノ〉あ? なんでだよ




〈ラディ〉なんでもない、いこう




BARまでは遠くない。ラディはコーナーショップの前に車を停めた。


〈サル〉ん? なんだ? 暗いぞ?




3人は店に近づくとドアノブに掛けてある看板に「cerrado」と書いてある。スペイン語で閉店だ。




だが、中は薄らに明るい。ランプで照らしていたようだ。店の中をガラス越しに覗くとロナック、マルディ、トスウ、ホッショはカウンターでお酒を呑んでいた。そこにはロコさんもいる。5人はすごく楽しそうだった。あまり笑わないロナックでさて笑っていた。どうやらこの日は特別な日のようだ。これを察してサルたちは入らず帰る事になった。




だけど、本当に今のロナックは今までみたことない笑顔のあるロナックだった。




これは入る余地はない。あの男たちの交わす酒は特別そのものだ。




男達は言うだろう。「今日は素晴らしい日だった」と。



ー ♯10 mori×risus.モリ×リース ー 続く。









































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