杖探し

「お母さん、この巨木はなんですか!?」

「これは、杖選びの木よ。あなたの杖もこの木から決まるの。さ、並びましょ」

列に並んでいる途中に、先がどうなっているのか覗き見る。


「あなたが欲しい、あるいは光って見えた枝を取ってきなさい」

と店員さんが先頭の子に言う。

そして、私と同い年であろう、その男の子が杖選びの木に走って向かい、真っ先にあった、枝をむしりとる。あぁー、もったいない。慎重に選べばいいのに。まだ3歳だから、大事な杖選びとかわかってないんだろうな。と考える私も一応3歳なんだけどね。

そこから、その枝を持ち、男の子とそのお母さんは、店の外に出てしまう。

「お母さん、枝のままなのにいいの?」

「えぇ。今度は向かいにある、ラルゴンド加工屋に行くの」

「ラルゴンド加工屋?」

列から、ひょいと顔を出し、向かいの店を見るとそちらにも列ができていた。

「あそこで、さっきの枝を自分だけの杖にしてもらうの。杖の持ちやすさや、使いやすくする技術はココら辺で1番よ」

へー、つまりオーダメイドなんだ。既製品じゃなくて一つ一つ手作りなんて高そー。

って、さっきの男の子お金払ってないよね!

いや、まて、そもそもココにお金というものがあるのか?

伸ばし雲を買ってもらったときは………、

たしか、お母さんが何か渡していたような気がする。

「お母さん、払わなくていいの?」

主語を言わずにさりげなく聞く。あぁ、ありがとー、前世の義務教育!

「あぁ、お金?それなら最初の杖は国が払ってくれるからいいのよ」

ちゃんと誘導に乗ってくれた。

お金はあるのね。しかも、国が払ってくれるって、税金ぽいね。ココにも税金とかの制度があるのかな?

うーん、また聞くことが増えた。


「次の方どうそ」

と、もう私の番がきた。

「あなたが欲しい、あるいは光って見えた枝を取ってきなさい」

とさっき男の子に言っていたのと同じことを繰り返し言う店員さん。

はーい。マリン取ってきまーす。

と杖選びの木と向かいあう。

見た感じ、どれも同じに見える。光っているとかそんなのはない。

3歳で選ぶなんて無理があるんだろう。向かいあってすぐ近くの枝はなくなっていて、後ろに回り込むほど手付かずの枝が多くなる。

「お母さんは、どうやって杖を選んだの?」

「さぁ、覚えてないわね。たぶん、近くの枝を選んだんじゃないかしら」

やはり、光っているとかはデタラメなのか、ちょうど、半周回ってさっきの真後ろに来ても光って見える枝はなかった。

「お母さん、光ってる枝なんてないよ?」

「ふふふっ、マリンが見えている世界がすべてではないのよ?」

つまり、視野を広げろと。

そこで上を見ると、おお、光っている杖がちょうど真上にある!

たしかに、3歳の身長では見える枝の数が少ない。

だが、前世経験を持つ私でもお母さんのアドバイスがなければみつけられなかったのだ。他にみつけられる子がいるの?

という疑問はそっこーで捨てて、今は杖を取ることに集中!

「お母さん、手伝って」

「ダメなの」

「えっ、なんで?」

お母さんの成人女性の身長があれば、簡単なのに!

「杖選びにはね、口出ししたり、手伝ってはいけない決まりがあるの」

いやいや、じゃあ、さっきのアドバイスはアウトなんじゃないの?


うぅ、しょうがない。

1人で頑張るか!

改めて枝を見ると、足りない高さは1メートルほど。

登る?でも、この体で登れる自信ないよ。

魔法は?その杖を今から取るんだって。

あれっ?詰んでない?

うん、詰んだ。

どうしーよー。











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