第30話 コンピューターの事前会議

『『25:30時、LT(陸運)05C(五番セクター)大型ミュータントとの交戦、』『地下都市、中央方面にて火災一』『01:40時、04荒廃区観測方面軍より、02・50・400にてミュータントの大規模な移動を確認』『地下都市、下階01南部方面にて交通違反……の結果、通信システムの不備と判明、コンピュウター案件として処理』『壁外、ビクトリア貯水層・中央方面、下水設備にミュータントの……』』


廃墟の壁に張り付くように偵察用5メール級高機動歩兵[足長]が待機し、それに乗るB(ブルー)クラス職員が更新される情報を確認する。


『やっぱり物理的な体があると疾走感が違うね。』


『僕は関節がなじまないかな、っと、それより報告しなきゃ。』


二体の自律戦闘支援ドロイ[白黒]が相互にレーザー通信を行いながら、[足長]に乗ったB(ブルー)クラス職員の元に走る。


「ん、ああタマ、ロク、どうした?」


「来たよサルートさん。」


「要塞が歩いてるみたいだった。」


二機の報告と同時に、振動計に反応が出る。


「僕、まだ見てない、見てきていい?」


「まだだ、動くなロク、来るぞ。」


「見えた!?」


地響きと共に職員の真下を巨大な人工物が真下を通る。


「ほぉ外周への遠征ですか、しかし我々市議会主導では世論が許さないでしょう、戦時下の記憶はまだ新しい。」


驚いたように独りの議員が言葉を漏らす、遠征自体は想定してたが、それが市議会の主導であることに驚いている。


「コンピューターの一声で解決する問題でしか無いが、我々では不可能でしょうな。」


自信の力不足を現実として理解する議員の声。


『新たにビクトリア貯水層・中央方面の代表に就任したバニヤンーV(バイオレット)に任せるのです。UV(ウルトラヴァイオレット)への道も考えているのですよ。』


「戦後初の、政治家上がりのUV(ウルトラヴァイオレット)だと!?」


コンピューターの言葉に、若い議員がその未熟さ故に声をあらげる。しかしそれも仕方の無いことだろう、彼は戦後の人間だUV(ウルトラヴァイオレット)に対し、戦前の英雄の称号であると言う偏見がある。


「形だけとなったクリアランスではあるが、それでもその権威は強い、しかし今頃になり何故?」


正しく現在のクリアランスの意味を把握している議員が疑問をのべる。


『無人探査部隊が大規模な移動中の人類を発見したのです。』


場が静まる、情報が共有されたのだ。


反重力とホバー、機械の足を併用する全高40m、蛇のように連なる八棟の要塞を繋げたような乗り物に、随伴する多数の多脚戦闘車、どの程度の人員がいるのか不明であるが、それなりの技術力はありそうだ。


『兵士らしき人間が確認出来たのです。少なくとも人類がいる事は確認出来たのです。彼等との良好な関係の構築のためにもバニヤンーVには地下都市の代表として接触してもらう事を推奨するのです。』


コンピューターが述べるべき事は述べた、ここからは市議会の時間だ。


「では五分後に臨時会議を行う。」


議員が一斉に動き出す。


『そうだ第7電脳公開会議室の中継準備を、ああ認証する。』


『情報部、コンピューター様のクリアランス事の情報公開の範囲を確認しまとめ各議員に配布してくれ。』


『市民への通知を……』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る