第17話 アンドロイドと職員ヨシヒロ-B

前方への花弁の高出力ビーム兵器による薙ぎ払い、勘に従ったその攻撃は、隠れたアンドロイドを発見するという成果を叩き出した。


領域外調査部隊配備型20メール級航空機重歩兵[桜]内、パワードスーツを同化させたコックピット、職員ヨシヒロ-Bは拡張現実ごしに視界を確保する。


『この距離まで近付けば見えるぜこの機体なら。』


対象はナノ光学迷彩により光学迷彩と高いステルス性をもつ女性型アンドロイド、敵の通信を含むセンサー類に対する妨害と合わせることで、地下都市の監視網を突破する恐るべき敵、即座に砲台やタレットを配置する機能があり、ゲリラ戦においては厄介な敵、それが彼の認識であった。


『投擲、いや磁力か何かで操ってんのか?』


迫る黒い刃を、トマホーク(斧)で受け流すも、アンドロイドの手の動きにあわせて軌道を変える。


それは四メートルほどの二本の黒い刃を操り、こちらが距離を取ろうとすると接近され、トマホーク(斧)が届かない嫌な位置を維持される。


『離れ過ぎたら見つけられ無いし、面倒な奴だな。』


メイド服と言う服装から、奉仕機械であることは予想がつくが、人間サイズのアンドロイドがどうして人形兵器である20メール級航空機重歩兵と渡り合えるのか、これがわからない。


『職員ヨシヒロ-Bなのですか?』


拮抗を崩す切っ掛けが現れた。


『おっ!!コンピュータ通じるのか、通じるなら支援を頼みたい。』


『わかったのです、20メール級航空機重歩兵[桜]とのデータリンク申請』


表示されたデータリンク申請の許可を選択しながら情報を噛み砕く、厄介なステルス機能はあらかじめわかっていたが、重力操作を行っている可能性があるらしい、人間サイズのアンドロイドがどのようにどのようにそれを行のかは不明、それを行うための設備を持ち込んでいる可能性があると記載されている。


『そうだ治安維持カメラのビームタレットは使えないのか?』


『旧式のセンサー類では対象を補足できないのですが、航空機重歩[桜]とのデータリンクが使えれば多少は使えるのです、それでも隠れられた状態では難しいですが。』



コンピュータと通信出来る位置までの撤退に成功した現状、そしてコンピュータによる戦闘支援の状態を切り札に使えないかと考える。


『コンピュータ、敵の情報って少なかったよな、綺麗に壊せば情報を引き出せないか?』


質問に対し、コンピュータは肯定の意を示す。


『よし、それでいこう。自前のセンサーとコンピュータで何とか出来るか?』


職員ヨシヒロ-Bは、少し考えた後にコンピュータに話しかける。


『よし、上手いこと敵に位置を補足されていると思わせつつ、こちらの戦闘力を低く見せたい、期待させてもらうぜコンピュータ。』


計算、脅威度から現場判断レベルに分類、低レベルの作戦として報告……


『了承、コンピュータに任せるのです。』


孤立した機体、彼は建物からの狙撃に対し、激情と共に突進する。


『わざと敵を逃がす、コンピュータ、狙撃支援頼むぞ。』


一度接近戦を行った後に距離を取り、レールガンに持ち替え弾丸をばらまにながら、敵の砲台を破壊する。


『敵の位置補足、逃げられないと教えてやるのです。』


花弁からの大出力ビームがアンドロイドの退路を破壊する。


『障害物から出ればどうなるか、わかるよな侵入者。』


見下ろす形で陣取り、花弁を全方位に構えた、破壊した場所、広場、道路、それぞれに狙いをつけてアピールする。これで、このセクター(自給自足可能な街のような物)からの脱出は困難なものになった。


『予測失敗、9時の方向から攻撃、さらにワンテンポ遅れて把握したように偽装。』


隠れた敵の砲撃をかわし、何処から来るのかわからない砲撃に神経をすり減らしながらもその時は来た。


『予測位置からの攻撃、機体操作一時掌握、AIサポートによる方向転換、瓦礫ごと吹き飛ばし敵の機動力を削ぐことを推奨します。』


「了解だコンピュータ、そしてなめるなよ侵略者!!」


左手でレールガンの弾をばらまきながら接近、棒の様な推進器の足とスカートの様な姿勢制御推進器、五機の複数の機能及びジェネレーターを集約搭載した姿勢制御用のパーツによる高速起動を可能にした人型機械が、メイド服を装備したアンドロイドに切りかかる。


『回避されたが、道路に追い出せた、交通監視用カメラのビームタレットとデータリンクだ。』


『了解なのです職員ヨシヒロ-B。』


ナノ光学迷彩とはいえ場所が場所、旧式のセンサーでも、自機のセンサーの補助で十分補足出来る。


『基本出力は、高出力の歩兵用パワードスーツ程度なのです。高速振動ナイフに警戒しつつ無力化する事を、回避を推奨するのです。』


対象を補足するために近寄りすぎていた、未知の遠距離攻撃に対し、彼は五枚の花弁の様な推進器を無理に起動し、回転するように距離を取り、地面がめくれ上がるのに巻き込まれないように距離を取る。


『万能セラミックの焼き直しなのです。』


歩道の万能セラミックをベースに、8メートル近くの巨大な大剣、いやカッターナイフの予備の様なむき出しの黒い刃物へと焼き直される。


『なるほど、砲台やタレットのカラクリはそれって事か、しかしコンピュータ、セラミックの焼き直しって言うのはデカい機械の中で行われる物じゃないのか?』


『ナノマシーンによる分解現象を確認したのですが手段は不明、未知の攻撃手段、職員ヨシヒロ-B、コンピュータは対象の鹵獲を中止する事を推奨、花弁による高出力ビーム兵器による撃破を推奨するのです。』


作った大剣を手を添える様に持ったアンドロイドは、その重量を感じさせない動きで街灯を切り裂き監視カメラを無色化し、ダンスの様な動きでビームタレットの攻撃を回避しつつ包囲を突破しようと走り出す。


『いやコンピュータによる支援下の今、鹵獲するべきだろう。』


『職員アンハルト-B将軍に申請、許可がおりました、任務を対象の足止めに変更、空中戦艦の進路を変更、情報収集能力を強化した艦載機を援軍として派遣するのです。』


武装をトマホーク(斧)から重火器へと武装を交換し、レールガンによる牽制を行う。


『了解だコンピュータ、だが別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?』


『戦闘支援を行うので、あとは警戒しつつ臨機応変にとしか言えないのです。』


選ぶのは接近戦、建物に逃げられては補足できないと言う判断か、レールガンの牽制の後に建物の影に隠れ先回りを行う。


『歩道から、さらに下の空中広場に叩き落とすぞ!!』


『広場の封鎖を完了、対象を輪郭既定で発光、同時に対象の感知能力の妨害の為にタレットの制御をコンピュータに変更するのです。』


障害物を無視して敵を補足した職員による悪質タックル。


肩の二枚の花弁の高出力ビーム兵器により、歩道を切り裂き、その足下ごと対象を広場へと叩き落す。


『アンチナノマシン散布』


『畳みかける。』


トマホークを右手に持ち、その刃を振動させ瓦礫に振り下ろす。


「腕を切り落とせば、何!?」


瓦礫で押しつぶしたと油断していた、瓦礫を切り裂き黒い刃が右肩を抉っていた。


「なめるな―!?」


パッとトマホーク(斧)を手放し、左手に持ち替えその黒い刃を叩き切り弾き飛ばし、瓦礫から飛び出そうとしたアンドロイドを、壊れた右手で捕まえる。


その手から逃れようとしていたアンドロイドだが、バチリと過剰な電流を流し込む事で動かなくなった。


『無力化に成功、指定エリアまで撤退するのです。鹵獲機械は、飛行機械で飛行戦艦に運び調査するのです。』


『ああ、了解だコンピュータ、指定エリアまで撤退する。そう言えば本体の状況はわかるか?』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る