第18話 地下都市とトロイの木馬

本隊は、ナノ光学迷彩対策と、通信網構築のためのBG(ブルーグリーン)と呼ばれる治安維持に関わる技術的職員の護衛の為に先行していた。


パワードスーツを同化させたコックピット、拡張現実ごしに視界を確保する職員が、人型の大型機械に搭乗し盾を構える。


『各員持ち場を崩すな、作業機械を前進させ周辺施設の解体を進めろ。』


散発的な攻撃に対し、指揮官である職員が支持を飛ばす。


『二時方向共有マップにポイント指定、敵性砲台確認。』


敵の存在を補足できず、一方的に攻撃される状況に駐屯部隊は疲弊していた。


『ペタン-B少佐、八時の方向から味方の反応接近、近距離通信繋ぎます。』


【桜】と呼ばれる航空人型兵器とSF的ドローンの様な見た目の航空機で構成された部隊がビル群の影から現れる。


『貴官の所属と目的を……、大佐でしたか。』


『職員ペタン-B少佐か、私はグレー-B大佐だ、高性能の情報収集装置・通信装置の輸送、配備の為機動力の高い部隊で先行した、市民の避難状況は?』


『通信妨害下の市民は避難させましたが、敵の補足が難しくどの程度浸透されているのかが不明です。』


『こちらでも確認した、市民の避難先を地下都市天井部と地下施設に変更、地下へのアクセツルート及び、天井部へのルートである柱、地上重要施設の防衛隊を行う。』


航空機のうちの一機とその護衛が陣形を離れ駐屯施設へと進路を変える。


『部下とBG(ブルーグリーン)職員を置いていく、!!諸君、良い報告だ、足止めに離れた職員ヨシヒロ-Bが、敵アンドロイドの鹵獲に成功、また空中戦艦が戦闘区域に侵入、支援砲撃と無人戦闘機と共に戦闘がおこなぇ……』



極大のビームが空中戦艦を貫いた。


『空中戦艦シールド消失、13号大破、16号反重力装置に深刻なダメージ航行不能、対象識別、トロイ級ステルス強襲揚陸宇宙戦艦オデュッセウス!?』


指令室にコンピュータの報告が飛び込む。


『コンピュータ、搭乗者の脱出を優先、さらに無人戦闘機を出せ、全兵装使用、かろうじて浮かぶ状態で構わない、最後まで敵の目を引き付けろ。』


職員アンハルト-B将軍の怒号、空中戦艦に搭載されていた無人戦闘機が逃げる様に飛び出し、対空ミサイルやビーム、レールガンの弾がばらまかれる。


『指令了承、対艦ミサイルに装備変更、宇宙戦艦の撃破を優先、空中戦艦艦載機、全機発艦、実弾兵器は敵の対空砲火と重力操作により届かず、ビーム兵器敵シールドにより減衰、効果なし。』


『もう少し火力を集中させるぞ、無人機が抱えた対艦ミサイルを使う。地上部隊も使うか?』


将軍はすぐに落ち着きを取り戻し、コンピュータに情報提供を求める。


『暴れさせなければ良いと言う考え方もあるのです。』


空中戦艦のシールが破られた、ミサイル類であれば迎撃できるが、宇宙戦艦オデュッセウスに主砲で攻撃攻撃されれば、地下都市にそれを防御する手段は無い、だからこそ無人機の迎撃のために対空用の散発的なビームになっている現状は悪くは無い。


『無人戦闘機の生産ラインを整備したので、無人戦闘機のAIの支援にコンピュータの計算リソースを2~3%つぎ込めば、生産速度が撃破速度を上回るのも時間の問題なのです。』


『しかし、六隻しかない空中戦艦を二隻も失ったのが痛いな。』


『まあ一時間ごとに四隻の空中戦艦がプリントされるので、それも戦力に回せそうなのです。』


職員アンハルト-B将軍は笑いとも取れるため息を漏らし、視点を戦場から生産状況にまで広げる。


『手元の戦力で対応することばかり考えていたが、ここは地下都市であったな、それなら戦力が揃うまでは地上部隊の撃破を優先させるか、被害を減らしたい、奴の兵装についてのデータはあるか?』


『過去に登録されたデータと、現在の観測情報から判断出来る情報のみのもの、そしてそれらから予想した物を送るのです。』


『盲信しすぎるなと、よろしい敵のシールド出力から現時点の地下都市のビーム兵器による撃破は不可能と判断、敵のデータ収集を妨害する事を目標に変更、カタログスペックより装甲が薄いようだが、対艦ミサイルで倒せるかどうか、まずは飽和攻撃でラッキーパンチを狙いつつ効果を見ていこう。』


何処か落ち着いて見える職員アンハルト-B将軍に、これまでの人材育成は間違って無かったと、そして適した人物を選べたと少し心強く感じた。

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