第11話 秘密結社突入作戦・下

足元が崩れる中で彼らは即座に対応した、落下する瓦礫を足場に散開し、壁に張り付くメンバーと、ボールドローンに捕まり空中にとどまるメンバー、そして真っ先に下へ降りるメンバーと別れて破壊をもたらした対象に射撃を始める。


彼等は鎮圧用の武装から殺傷力のあるものへと武装を変更していた、敵は機械だ。


崩れる瓦礫の向こうにいるのは五メートルほどの作業機械、正面から見ると丸っこい逆三角形の胴体に手足が付いているように見えるそれは、何処かずんぐりとしていた見た目の人型機械だ、頭部とうぶと言うべき部分が無いが、機械に必要は無いだろう。


敵対勢力により装甲や武装が追加された事もあり侮りがたい相手だ、現在の治安維持部隊の装備ではその装甲を貫けず、広くされたとは言え限定的なスペースでは敵の砲撃をかわす事は難しい。


『目標沈黙。』


銃撃がぴたりと止まる。


登場前に破壊された人型機械、大型の印刷機器を手に入れられなかったのだろう。装甲をと装甲のつなぎ目を的確に狙い、歪み生まれたスキマから内部の動力を破壊した。


『鹵獲機械再度接近、武装キャリアー戦及び闘用ドロイドとの合流を推奨するのです。』


その後も鹵獲された武装した機械との戦闘が発生したが、強化スーツとコンピューターの未来予測による作戦立案により、組織化したスーパーマンとでも言うべき戦闘が行われ、敵に連携させる暇すら与えず上手く各個撃破の形を取れていた。


『敵残存兵力の撃破を確認したのです。』


『B班、データの収集に移行します。』


作業中にコンピューターが異変に気が付く。


『敵歩兵を確認、マップデータの、ジャミング?部隊αへの撤退を推奨、ジャ……増大、短距離……部隊βを突入させたのです。』


治安維持部隊のメンバーがピタリと動きを止めた、彼らは自身が追従させていた兵器群に対し特殊な処理を行い、ぎこちない動きの戦闘機械を盾にしながら撤退を開始する。ぎこちないとは言えコンピューター支援化と比較しての話であり、訓練した者の動きだ。


『部隊α通信途絶、広範囲に対するジャミングを確認、部隊β突入するのです。』


都市防衛軍で構成された部隊βが突入する。


ここで少し話が変わるのだが、都市防衛軍と治安維持部隊ではどちらの方が強そうだろうか?


語感では都市防衛軍の方が強そうだろうが、治安維持部隊の方が強い、現在の地下都市の勢力圏が地下都市のみなので各組織ごとの装備事態には大きな差異はない。


では何が違うのかと言えば、コンピューターの補助に特化していると言う点だろう。


治安維持部隊はコンピューターの勢力圏内での運用を想定しているため、コンピューターの支援を受けて戦闘を行う事に特化している。


一方で都市防衛軍の方は、コンピューターの支援を受けて戦闘を行うが、コンピューターの支援が切れた環境でも戦闘を行えるように訓練されるため、コンピューターの支援を受けている同士の戦闘では治安維持部隊に軍配が上がるのだ。


彼らに配備される兵器群も、コンピューターから完全に孤立しても最低限の機能を発揮できるように自律機能を強化した物になる。コンピューターの支援下であったとしても、余分なモジュールの分だけ性能は変わるだろう。


『B-3か、何があった?』


『未知の空間からの敵攻撃を受けた、更新されたマップ情報を送る。』


治安維持部隊が、散開して高速で動きながら互いにカバーするデータリンク型機動的散兵戦術とでも言うべき代物であるのに対し、都市防衛軍の基本的な戦術は防御と火力を陣地構築により獲得すると言う物になる。


重装甲の戦闘機械や、設置型の盾、自律タロット等を配置しつつ、自身の持つ火力により敵を圧倒すると言う物になる。


今回の場合であれば、敵の鹵獲機械に対しては最大火力を発揮出来るが、武装した市民に対しては殺さないようにと言う制限を受ける。


『手足を狙え、D-4、D-6は俺に続け、残りは突入を支援、敵のバリケードを突破するぞ。』


『『了解』』


(秘密結社、正常回路の鎮圧が完了したのです。これで都市外に潜伏する全ての秘密結社が完了したのです。)


防犯カメラや警備機械の巡回スケジュールを管理しながらコンピューターは考えを巡らせる。


(都市内部が安定してきたのです。市民がある程度自立したら、外にも目を向ける必要があるかもしれないのです。)


外部との通信が途絶してから数百年が経過しているのが確認出来た、事件があり、その後穏やかに外部との繋がりは途絶えた、目を反らしていたものと向き合う日はそう遠く無いのかもしれない。

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